東京新聞の社説はいい加減すぎる

 


小林よしのり氏が運営するゴー宣ネット道場で、

東京新聞の12月23日に掲載された社説が絶賛されていましたが、

その社説のいい加減さを指摘したいと思います。

 
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かつて宮内庁長官は陛下が体調を崩した際、

心労の背景に皇統問題があることを明かしました。

11月の18日間に及んだ長期入院に高齢や7週連続の被災地訪問に加えて、

皇統問題での心労があったに違いありません。

陛下は語るのを許されません。

その分、皇統問題は国民の側に投げられているのです。

とりわけ女性宮家問題は喫緊の課題です。

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陛下が体調を崩された際、羽毛田宮内庁が心労の背景に

皇統問題があると発言しましたが、

そのことを記者から質問を受けた秋篠宮殿下が、

あくまで羽毛田長官の私見であるということを繰り返し仰せになったことがあります。

(平成21年11月25日/お誕生日に際し)

 

羽毛田長官の発言を秋篠宮殿下があくまで私見であると打ち消されているのに、

東京新聞はそんなことも関係無しに、

今回のご不例について「皇統問題での心労があったに違いありません」と勝手に断定している。

しかも、羽毛田長官の私見のときは、陛下のご病気はストレス性胃腸炎などと公表されたが、

今回のご病気は、ウイルス性の気管支炎と公表されている。

これを勝手に皇統問題と断定している。

極めて不敬な記述であると考えます。

 

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初代の神武天皇から百二十五代の今上天皇に至るまで皇統は男系で連なっています。

しかし、それは皇后以外の側室を持つことでやっと維持されてきたシステムでした。

それでも歴代天皇の半数は皇后以外の庶子だそうです。

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「だそうです」とはどういうことでしょうか。

新聞社の社説で書くなら、それぐらい調べたらどうなのか。

 

しかも『正論』1月号で、私は歴代皇后の男子誕生数をまとめ、

異常な乳幼児死亡率の高さがなければ、

男系継承は側室なしでも十分に実現可能であることは証明しています。

 

西洋のキリスト教圏の王室は昔から一夫一婦制ですが、

庶子(正妻以外の子)継承ができないからといって、

男系継承が不可能だったなどという事実はありません。

フランス王室は、800年以上も一夫一婦で男系継承を続けたし、

断絶した理由は男子の不在ではなく、フランス革命でした。

ちなみに現在のフランスにはオルレアン家に男系子孫が存在しているし、

スペイン王室はブルボン王朝の末裔でもあります。

 

この程度の認識で書かれているのが、現在の東京新聞のレベルということでしょう。

 

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皇位は「国民の総意」に基づきます。

旧宮家の皇籍復帰案に国民の支持があるとも思えません。

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「国民の支持があるとは思えません」というのは、誰が思っているのでしょうか。

社説の書き手が勝手に思っているのか。

二千年以上、125代、一貫して父子一系で継承された、

世界でも類例のない皇統を国民が理解すれば、

できるかぎり男系継承を続けようという論調は当然に出てくるはずです。

今でもすでに少なくない声が存在している。

 

旧宮家の復活を否定する人間は、必ず勝手に「国民の支持を得られない」という論法を用いる。

これは典型的なプロパガンダ論法です。

 

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神武天皇実在説の“正統皇国史観”の田中卓皇学館大学名誉教授は

「皇室が尊いのは一系の天子が千数百年の一貫した統治者で

他系が帝位を簒奪(さんだつ)した例がない事実にある。

男系か女系かではない」と説きました。

女性・女系天皇反対論者への激しい批判です。

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血統原理でいう一系とは、父子一系か、母子一系のどちらかしかありません。

母の母を遡っていく継承はあり得ないので、

一系とは父子一系、つまり男系継承のことを意味します。

血統原理というのは、単系血統、非単系血統という二種類しかありません。

竹田恒泰氏は「女系というのは言葉のまやかしで、男系かそれ以外しかない」と述べておられます。

 

つまり、ここで田中卓氏が述べているように、

父か母のどちらかを受け継ぐ継承を一系というなら、

日本人全員が一系継承を続けていることになる。

日本人だけではない。

人類全員が一系継承を行っている。

まったく馬鹿げた話となります。

 

女系派はすぐに皇學館大学で学長まで務めた田中卓名誉教授が言っているのだからと

権威を振りかざそうとするのですが、田中卓氏は古代史の専門家でありながら、

皇位継承の歴史については、まったくの素人です。

「神皇正統記」もまともに読まずにコメントしている形跡すらあります。

 

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天皇の姿に見える無私や献身に男女の別はありません。

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よくありがちな男性・女性と、男系・女系を混同した議論です。

いつも説明していることですが、父子一系の皇統は、

女性を差別しているわけではありません。

一般人女性は皇族になって皇統に子孫を残すことができますが、

一般人男性は何があっても皇族になることができない。

男系の皇統とは、むしろ男性を排除したものです。

 

一系の皇統のなかで、男性も女性も区別しないというのが、皇室の歴史です。

一系で続ける以上、必然的に皇統の幹は、男性になるだけであって、

女性は誰でも皇族になれるのだから、一般的な男女同権論などとは何の関係もありません。

 

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皇祖神・天照大神が女神であるように

女性・女系天皇に違和感のない時代が来るのではないでしょうか。

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天上にいた天照大神が、孫であるニニギノミコトを地上にお使わしになる際に

与えられた神勅の定めを、現在まで一貫して守り通したのが一系の皇統です。

これが世界で唯一、神話と歴史がつながる国である証となります。

天照大神を讃えるなら、ニニギノミコトに下された

“天壌無窮の神勅”を何より重んじるべきではないでしょうか。

 

 

最後に、東京新聞というのは、東京裁判史観の論説を繰り返し主張してきた新聞です。

戦後体制を前提にするものは、旧宮家の復活を考えることは、

GHQの占領政策の見直し、

強いては東京裁判史観の見直すことにつながることから、絶対に否定する。

東京新聞とこの社説がまさにその典型ではないでしょうか。

 

この社説を絶賛する小林よしのり氏は、かつて『戦争論』で、

あれだけGHQの占領政策を批判していたにもかかわらず、

とうとう東京裁判史観、占領体制に身を置く姿勢を固めることになったということです。

皮肉なものです。

 

先ほど述べた皇學館大学の田中卓名誉教授は、

晩節を汚すことになったとよく評されることがありますが、

小林よしのり氏もまた、従軍慰安婦論争、『戦争論』などで築き上げた功績を、

この一件ですべてぶち壊す結果になったことは残念でなりません。





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