広域計画と地域の持続可能性〜地域活性化の視点から〜
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全国での県境を越えた連携の実際

 

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 市町村で県境に接しているところは多いのですが、実際に県境を越えた地域づくりも進んでいます。

 図のように結構あります。

 青森と岩手県境の南部地域ではドクターヘリで連携しています。これは多いパターンです。

 福井と滋賀県境では、直流と交流の違いのためJRの相互乗り入れができなかったのですが、「琵琶湖一周ネックレス構想」を掲げて運動し、乗り入れを実現しました。

 福井と大分県境ではNPOが活動されていて、防災についての連携を実現しています。FMで防災情報を県境を越えて流せるようにもしています。

 面白いものには県境の食で連携をつくろうとしている例が複数あります。

 また重要なことは、全国の県境地域が連携することです。県境の障害をつくっているのは制度ですが、制度を変えるには一地域だけでは力不足です。どの程度のボリュームがあって、どういう可能性があるのかを示しながら制度改革を働きかけるために、全国県境地域シンポジウムを開き、ネットワーク作りをやっています。

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EUのホームページより作成
 
 EUでは国境を越えた地域づくりが盛んです。インターレグという国境地区に着目した制度もあります。

 もちろん国境と県境は違うのですが、より大きな単位のなかで現在の行政単位を組み合わせていくとき、必ずしも全体を一体化しない、あるいは中心だけを結び合わせるというやり方ではなくて、縁辺部から紡ぎ上げていく手法があるのではないかと思います。

 EUの政策は県境を越えた地域づくりをすすめるうえで、精神的な助けになりました。

 国土計画の議論ですが、広域地方計画ということで中部とか近畿といった単位での計画をつくったわけですが、だれがそれをやるのか。その政策主体がないということがあります。そういうことで、国土計画のなかで主体を探しているのですが、その一つの議論で、官民で広域連携を行う主体に準行政組織のような意味合いを持たせていってはどうかという議論があります。官民連携による内発的地域戦略という主旨ですが、そういう政策主体化を図っていこうとされています。

 これが一番やりやすいのは、現在では地域づくりが進めにくい県境地域ではないかと私は思っています。

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 最後ですが、さきほど申し上げた「変化は端から」ということです。

 ここでは県と書いておりますが、広域的なブロックと考えても良いかもしれませんし、国と考えていただいても良いかもしれません。

 点と点を結ぶ、ヒエラルキーで落とし込んでゆく地域形成ではなく、縁辺部から紡ぎ上げていくというやり方があるのではないか。そこには空間の実感がありますし、縁辺部であるがゆえの柔軟な対応をとっていくことができるのではないかと考えているところです。

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(C) by 瀬田史彦・戸田敏行・福島茂 & 学芸出版社

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