古倉 宗治 1974年東京大学卒業。建設省、東京工業大学助教授、民間都市開発推進機構都市研究センター、土地総合研究所等を経て、2008年から住信基礎研究所研究理事。京都大学大学院客員教授(公共政策大学院及び同法科大学院)。麗澤大学経済学部その他の講師。過去9年間で21本の自転車関係の調査を実施。
 

『成功する自転車まちづくり』出版まぢか!

世界の最新政策や科学的データにもとづき、自転車のあり方をもう一度基本から見直し、効果的な政策と計画のあり方、成功の秘策をにまとめられた古倉さんに、お話をお聞きしました。
聞き手:前田裕資(編集部)
 

 

○誰に読んでいただきたいですか?

前田:
 このたび『成功する自転車まちづくり』をお書き頂き、この秋の出版に向けていま校正中です。
 この本では誰に何を一番伝えたかったのでしょうか?。
古倉:
 私が考えていますのは、今まで自転車にあまり親しみがなかった方、そういう方に自転車のメリット、良さを理解して頂く、そして自転車にもっと乗っていただくというのが、一番大きな目的です。
 ただ、そのために個人に訴えかけてもなかなかうまくいかないと思いますので、それをバックアップする地方公共団体の方々にも読んで頂きたいと思います。その方々に自転車のメリットを正確に理解していただいて、その結果として、自転車施策をもっと重要視してもらう、そういうことをやってもらいたいということが一番大きな目的です。

○政策のポイントは?

前田:
 (エッ!もう終わりですか?)
 あの〜、役立つ自転車施策のポイントを、もっと具体的にお願いします。
古倉:
 そうですね。一番大事なことは、繰り返しになりますが、自転車がなぜこんなに良い物かということを、まず共通認識として持ってもらうということです。
 それを元にして、ほかのいろいろな交通手段があるわけですが、自転車は相当優遇しないと利用が長続きしないという側面がありますので、息の長い、持続的な自転車利用を支えてもらうということを、一番大切な目的にしたいと、考えています。

○自転車は嫌われ者なんですが?

前田:
 自転車については、歩道を猛スピードで走ったりするものも多くて、困ったもんだという意見も多いのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
古倉:
 この本でも繰り返し述べていますが、歩道を通るのはとても危険です。車道を通る方が安全だと言うことを科学的な根拠に基づいてご説明しておりますので、是非、理解いただきたいと思います。
 もちろん、安全な車道の走り方を前提にして、車道を皆さんに走ってもらう、それによってスピードも出ますし、歩行者に迷惑をかけることもありません。他の交通手段に対する優位と言いますか、早く着けるということになります。
 そういう利用の仕方をして頂きたいな、と思っております。
前田:
 放置自転車についても、いろいろ言う人がおられますよね。推進すると放置が増えてしまって困るんじゃないかということですが。
古倉:
 むしろ自転車利用を促進し、目的地に直接行く人が増える、増えていただきたいと考えています。
 たとえば駅前にいったん止めて、それから電車に乗るということが放置に繋がるわけです。そうじゃなくて、自転車で直接目的地に行ってもらうということです。
 そのためには自転車利用を促進して、町じゅうの基盤を整備する。
 そうすれば直接行く方が増えて放置が少なくなるということを提案させて頂いています。
前田:
 どうも有り難うございました。
 


装丁 上野 かおる
古倉宗治 著
A5判・256頁・定価2800円+税
2010-10-15 初版発行

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『成功する自転車まちづくり』


●主要目次●
○序章 あのアメリカが自転車利用促進に500億円もつぎ込む理由
・急激に拡大する自転車政策
・石油輸入医療費削減をめざす
・連邦主導でガソリン税を投入
 
○第1章 自転車利用のメリット
1 環境にも家計にもやさしい
・自家用車よりも便利で安い
・自転車は、移動手段中、車体重量が一番軽い
・自家用車は環境負荷が大きい
・他の交通手段との比較
2 公共交通との役割分担もできる
・ヨーロッパにみる自転車と公共交通との関係
・自転車との競合ではなく自家用車との競合を問題視すべし
・自転車のメリットを発揮できる距離
・徒歩自転車の分担のあり方
・近距離での自転車と他の交通手段との分担
・自転車との連携で公共交通の客を増やせる
3 自転車は生活習慣病の予防につながる
・生活習慣病の医療費と死亡原因
・生活習慣病に対する自転車活用の効果
・他の運動と比べた場合の自転車こぎのメリット
4 ライフスタイルも豊かにでき、子供の発達にもよい
5 主体別にみた自転車利用のメリットとその訴え方
・主体別項目別にみた自転車利用のメリット
・自転車計画等でのメリットの位置付け方
 
○第2章 自転車の用途別施策
1 促進方策は利用目的別に考えること
・自転車の利用目的
・利用目的別の施策が必要
・自転車の用途別の有効な利用促進施策
・まず促進したい利用目的と、それに即した方策を考えよ
2 自転車による通勤〜企業と従業員の経費節減〜
・自転車通勤のメリット
・就業者の通勤の実態
・企業の自転車通勤に対する態度
・自転車通勤の有効な促進策
・自転車通勤の推進に対する具体的な取り組み
3 自転車による買物〜自転車客こそ良いお客〜
・買物に行くのは車、自転車、徒歩?
・自転車による買物のメリット
・「車で来る客こそ良客」ではない
・自転車による買物の有効な奨励策
・自転車による買物の奨励策の実例
4 自転車による通学〜健康と環境教育の切り札〜
・自転車通学の状況
・自転車通学のメリット
・自転車通学の有効な推進策
・自転車通学等の推進による子供の環境教育の意義
5 自転車による回遊レクレーション〜地域活性化〜
・4275kmに及ぶわが国の大規模自転車道
・自転車による回遊レクレーションのメリット
・回遊レクレーション利用の有効な推進策
・自転車利用の奨励方策の実例
6 その他の自転車利用用途
・日常利用
・業務利用
 
○第3章 自転車の空間別施策
1 専用空間の確保のみにこだわっている日本の取り組み
・自転車専用空間の確保がベター
・歩行者にも自転車にも危ない歩道通行
・世界の自転車先進国は車と自転車の共用空間が主流
・ネットワークの重要性
2 自転車と車の共用空間への施策
・車との共用空間はそれほど危険か
・車道に自転車の走行空間は十分にある
3 自転車専用走行空間確保の施策
・専用空間を確保する方策
・自転車専用レーン(自転車専用通行帯)が切り札
4 自転車の駐輪空間
・自転車利用を促進する駐輪場
・駅前の需要と供給の総合バランスのとり方
・駐輪空間の提供責任は誰にあるか
・総合的な駐輪空間の需給の取り方〜自治体の負担軽減〜
5 所有自転車およびレンタサイクル
・日本は自転車使い捨ての時代
・レンタサイクルの導入は利用者の意向をよく把握して
・大きなメリットを持つコミュニティサイクル〜利用用途と利用範囲のコンセプトを明確に
・企業向けのレンタサイクルの可能性〜茅ケ崎方式レンタサイクル
6 自転車の走行空間の情報提供の方法
・自転車地図の現状
・地図による安全性の情報提供
・地図とセットでの自転車マニュアルの提供
・安全性の自己チェックの方法
 
○第4章 自転車の課題別施策
1 自転車の放置の課題〜駅前駐輪需要の軽減施策〜
・自転車放置とその対策の状況
・自転車利用促進を柱とした駅前自転車放置対策
2 自転車の安全の課題〜安全性の向上施策〜
・自転車利用が増えたら事故率は減る
・自転車利用促進に参入後は事故が減っている
3 ルールマナーの課題〜レベルアップのための施策〜
・自転車利用促進とルール、マナー
・自転車がルール、マナーを守れるような環境整備
・原則の車道通行によるルール、マナーの実際的な体得
・即効性のある対策
4 その他の課題
・雨に弱いという課題〜雨に強くなる対策〜
・自転車の盗難に関する課題〜盗難防止の対策〜
 
○第5章 わが国の自転車政策および自転車計画とその策定の方法
1 進んでいる世界の自転車政策と日本への応用の可能性〜アメリカ、オランダ、ドイツなど〜
・先進国の自転車政策の推移
・国が策定を進めている自転車計画
・先進国の自転車政策や自転車計画から学ぶ三つの重要な点
2 わが国のこれまでの自転車政策
・わが国のまちづくりの変遷と自転車
・まだまだ拡大の余地があるわが国の自転車利用
・わが国の自転車政策の推移
・自転車専用空間の整備を進める通行環境整備モデル地区(2008)
3 自治体の自転車施策の状況と自転車計画の課題
・アンケートにみる自治体の施策の状況
・国の自転車政策自転車計画の課題〜「自転車先進都市」(2001〜2004)〜
・わが国の自転車計画の問題点のまとめ
4 自転車計画のあるべき姿
・わが国の取り組むべき項目
・目標設定
・目標達成のための計画施策の組み立て方
・国と地方との役割分担
・交通基本法のあり方
 
○終章 今後の自転車政策の方向
・自転車活用型まちづくりの意味
・わが国の自転車政策のあるべき方向性
・コペンハーゲンの自転車政策のスタンス〜自転車道の雪かきを優先〜
 


自転車施策も紹介している本


自転車とまちづくり ☆ まちづくりのための交通戦略 ☆ 人と街を大切にするドイツのまちづくり

学芸トップ ☆ 著者からのメッセージ・トップ


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