季刊まちづくり号外(WEB版)
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仮設じゃない「復興住宅」プロジェクト

奥田裕之(天然住宅バンク、NPOまちぽっと)

 

 

 天然住宅バンクは、健康に生きること、森林を中心に環境を守ること、いまの住宅産業の抱える理不尽な状況を変えることを目指し、市民から非営利の出資を受けて融資事業を行っているNPOバンク(非営利で貸金業を行う市民組織)である。これまで、国産材と自然素材を使って日本の居住問題を解決する試みを行っている非営利の住宅会社、一般社団天然住宅や、宮城県栗原市の良心的な林業者、栗駒木材 などと一緒に活動してきた。
 震災に対して天然住宅バンクは、仮設ではない、住み続けることのできる「復興住宅」を民-民の取り組みで提供することによる、アセットベースの再生プロジェクトを立ち上げた。
 このプロジェクトの目的と特徴は以下の通りである。

ハウジング・ファースト(居住優先)
 支援の最初に住居を用意した上で、一定のあいだ家賃支払いを支援しつつ、生活の安定に必要な課題解決に取り組んでいくハウジング・ファーストの考え方を取り入れた。居住や財産を失ってしまって自身では生活の再建が困難な方が、しっかりした住居を確保した上で、今後の生活の復興ができるための支援を行う。
雇用と産業の創出
 中央のゼネコン等ではなく、地域の産業に多くの復興資金が回るようにし、同時に被災地の雇用を創出すること、つまり大企業が大儲けするのではなく、出来るだけ多くの地域の産業や人によって復興資金がシェアできる仕組みを作る。
被災者による「まちづくり」の後方支援
 復興のためには、被災地域の市民自身が「復興のための新しいまちづくり」を作ることが大切な要素だと考え、それをアセットベースで行うための支援をする。
非営利金融の仕組みで、お金の流れを作る
 NPOバンクを活用して、被災地外の市民へ寄付ではない「社会的出資」を広く呼びかけ、その資金をもとに被災地の住宅問題を長期間にわたって支援する仕組みを作る。同時に、NPOバンクの融資行為を通して被災地で都市部の資金を循環させる。
 
 このように、都市部と被災地の役割を明確に分け、しかし全体は都市部と被災地の様々なメンバーが共同して行っていくことを目指している。
 『仮設じゃない「復興住宅」』とは、以下のような住宅である。

 このPJの基本スキームは、以下の図のようになっている。これは英米で貧困地域を支援するために用いられるCDFI(コミュニティ開発金融機関)、CDC(コミュニティ開発法人)、ディベロップメント・トラスト(まちづくり事業体)などの取組みを参考にしながら、日本の現状と被災復興という目的に合わせて作られている。

 まちづくりNPO(仮)は、地域の被災者の皆さんが中心になった、コミュニティを基盤にした非営利団体を想定している。天然住宅バンクから融資を受けて、地域の林業者・工務店・大工等と『仮設じゃない「復興住宅」』の建設を行い、それを所有し、被災者に賃貸または販売する。このNPOが、市民の手でアセットベースでの地域再生を行うためのポイントとなり、「住人」参加の新たなまちづくりの場になることを期待している。
 社会的投資減税制度は、配当を行なわない非営利の出資を集め、それを社会的事業等に融資する場合に、出資金に対して税制優遇を与えるという仕組みである。このPJでは、税金ではなく「志ある市民のお金」を地域復興のために活用する形で資金調達を行うため、社会的な出資に税メリットを与える社会的投資減税制度は、被災地外の市民が継続して被災地を支援する際に非常に有効な手段になると考えられる。この提案は、2010年度に国土交通省より提案されているが、まだ実現していない。
 仮設じゃない「復興住宅」プロジェクトは、これまでのNPOバンクの実践の上にある非営利事業型のプロジェクトである。これまでにない試みであるが、成功させるべく準備を進めている。ぜひ、多くの皆さまからご支援をいただきたいと考えている。

参考HP:
天然住宅バンク


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2011.05〜