かたちと関係の風景デザイン
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はじめに
「生きている風土」と「死んでいる風土」

 

 小冊子に記載させていただいた小論で、 「風景は風土の一時の絵姿である」というようなことを書きました。

 風土は、 地域の自然が人に与えた結果、 あるいは人がどのように自然に働きかけ、 どのように対峙してきたかというなかで形成されていくものだと考えています。 ですから、 「これが定まった風土だ」というものではなく、 自然と人がお互いに働きかけをしていく過程で、 その状況のなかで刻々と変化していくものと捉えています。

 風景は、 風土が変化しているなかで、 その時々に、 風土の姿をあらわすものとして発見されていくものです。 つまり、 風景は風土の関係性の中から生まれてくる、 あるいは風景そのものに風土の一過程としての関係性が埋め込まれていると考えています。

 風土が人と自然の関係性の循環そのものであるとすると、 循環が正しく機能している状態、 私たちがご飯を食べて排泄をして生きているように、 風土の循環が保たれている状態を「生きている風土」と定義します。 そうすると、 「死んでいる風土」とは、 その循環が何らかの故障によって断ち切られている状態といえます。

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ふるさと村
 これは、 ある地域の「ふるさと村」の建物です。 これが日本のどのような地域だとしても「ふるさと」を代表するような建物ではない、 ということはみなさんお分かりでしょう。

 このようなものを地域振興の一助として建てても、 一時期は話題になったり物珍しさからよく利用されると思いますが、 地域との関係性が薄いため、 長い時間の間に段々廃れてしまう運命にあると思います。 バブル期はこのような開発が多かったのではないかと思います。 このような、 いままでの地域と関係性のうすい開発は、 風土の関係連鎖を断ちきることになり、 「死んだ風土」を招く、 死んだ風景といえるのではないでしょうか。

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