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もうひとつ、 生産の場が風景に読み換えられた、 現代的な例としてテクノスケープをご紹介します。 これは、 オランダの防風堤です。 これはただ単に風をよけるためにつくられた構造物ですが、 ミニマルアート的な美しさがあって、 様々な雑誌などで風景として取り上げられています。
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ピーター・ラッツのデザインしたエムシャーパークの広場です。 これは、 もともと風景としては捉えられていなかった工場を、 発想の転換によって「美しい」と捉えたものです。 土木的構造物である工場の跡地を公園にするとき、 全て取っ払うのではなく、 敢えて残して様々なプログラムが発生する場をつくっています。
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ロッテルダムのウエストエイトの広場です。 これももともと大きな港にあったクレーンを、 広場のライティングのエレメントとして取り入れています。 またオランダは人工地盤によって国土が形成されていますが、 そのプラットホームを象徴するようなカーテンフロアーによる人工床面がつくられています。 テクノスケープは、 どちらかというと醜悪なものと捉えられてきた工業地の風景などが最近になって見直され、 ランドスケープデザインに取り入れられるようになってきたものです。 テクノスケープはブラウンフィールド(産業廃棄地)の問題と結びついていることが多いのですが、 ブラウンフィールドとは、 第二次産業に供されていた工場跡地が汚染されたまま遊休地として残っている、 それをどうしようかという問題です。 こういった問題は、 汚染などマイナス面しか語られないことが多いのですが、 もともとそのような工場があったところは、 ある時代に産業を引っ張っていたスター的な地位にあったわけです。 地元の人の中には、 プライドを持って工場の生産活動に従事していたんだけれども、 後になって「なんだあれは、 つまらないものをつくって」といわれ、 差別を受けている方もおられます。 マイナスの側面だけではなく、 それが一時期地域を振興していたプラスの要因だったということを、 テクノスケープによって拾い出しポジティブな未来像を描いていける可能性があるのではないかと思います。 単なる保全や開発ではなく、 こういった現実的な解決と現状のとらえ直しといった試みから、 風土のいきている循環が保たれ、 生きている風景がうまれてくる可能性があるのではないかと思います。
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