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都市環境デザインの潮流をつくった背景

 

 戦後の環境デザインを考える上で、 大別して、 背景となった4つの時代潮流が見えてくる(次ページ年表参照)。

 まずはじめに、 戦後復興期といわれる時代(1950〜60年代初頭)がある。 国際的な先進国水準に追いつくため、 とにかく都市機能を一定水準に達することを目標とした時代、 いわば「大衆化・標準化の時代」である。

 1949年に工業標準化法が制定され、 後のJIS規格などの祖となる標準化事業の幕開けとなった。 1950年代中期には大量生産大量消費の時代に入り、 当時の経済白書「もはや戦後ではない」に象徴されるように、 国民のライフスタイルは大きな変化を遂げた。

 各地の高速道の開通や都市基幹道路などが急速に整備され、 照明灯や防護柵などの基幹的道路施設が整備され、 様々な施設の標準規格が設定された。

 また、 当期末にはマイカー時代が始まり、 三種の神器といわれる白黒テレビ、 洗濯機、 冷蔵庫をはじめとして、 様々なモノの大衆化が始まった。

 次に、 高度経済成長期〜安定期といわれる時代(1960年代中期から80年代初頭)があり、 様々な基本的仕様が定着し、 これをより高機能化高水準化させる時代となった。 まさに「発展と成熟の時代」である。

 東京オリンピックや新幹線の開業を経て、 日本経済は大きな成長期を迎えた。 3C時代といわれる、 カラーテレビ・クーラー・カーの普及にも当時の変化がうかがえる。 1970年日本初の国際博EXPO70はそのピークとなった。 1970年代中期に入り、 戦後初の経済マイナス成長となり、 安定成長期を迎える。

 また、 全国総合開発計画(拠点開発方式)の策定が始まったのもこの時期であり、 振り返ってみると、 10年を切るスパンで、 新全総(大規模プロジェクト構想)、 三全総(定住構想)と、 その後の総合開発計画が策定されたことも、 当時が如何に躍動的な時代であったかということを物語っている。

 さらに、 時代は成熟し、 いわゆるバブル期といわれる時代(1980年代初頭から1990年代中期)が到来する。 「個性化と多様化の時代」ともいえる時代である。

 環境デザインにおいても、 地域固有の景観形成や個性化が求められ、 ストリートファニチュア(SF)デザインや都市デザインも標準化・高水準化の時代から多様化の時代にはいる。

 欧米の社会資本整備水準を追いかけ、 後進国として闇雲に都市機能の充足を図ってきた我が国においては、 均質化・標準化された都市環境の貧困さに改めて反省し、 欧米において先行的に課題視されてきたポストモダニズムの風潮を実感的に認識させられた時代ともいえる。

 地域性や個性の表現手法も試行錯誤の時代であり、 経済的な豊かさのあおりも受け、 高品位化(成功)と陳腐化(失敗)の絶頂期となった。

 最後の時代は、 バブル崩壊後から現在までの時代であり、 「地球環境と情報化の時代」と名付けてみる。

 経済的には戦後未曾有の不況期ともいわれる中、 情報化時代という視点では産業革命以来の社会構造の変化を見る時代でもある。

 希望的に観測すると、 都市環境デザインも成長期から成熟期を終え、 何が必要で何が陳腐かを判断できる経験を備え、 財政的制約の中、 必要不可欠な都市環境のあるべき姿を模索する時代と見ることもできよう。

 高度情報化社会・ユニバーサルデザイン・超高齢化社会・資源循環型社会など、 新たな時代対応への要請を受け、 次世代のプロトタイプを残してゆくべき時代でもある。

 

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