かつて商都としてにぎわいを見せた大阪も、産業の空洞化、企業の本社機能の東京への移転、依然として高い水準を示す失業率などその低迷ぶりは深刻であり、地盤沈下が言われて久しい状況が続いている。このような中で、大阪を快適で経済活力に満ちあふれた都市に再生するべく、関係各者により様々な取り組みが行われている。東京に次ぐ第2の都市である大阪の再生は、我が国経済の活性化の観点からも強く求められているところである。
 そのような中、大阪都心部に位置し、堂島川・土佐堀川に囲まれた中之島地域を東西に縦貫する中之島新線の建設が、平成20年度の完成に向けて進められている。
 この中之島新線は豊かな歴史や水辺を有し、美術館などの文化施設や大規模なオフィスビルなどが立地する既成市街地に新たに建設される鉄道であることから、鉄道や駅が果たすべき役割もこれまでの鉄道建設とは違った側面も求められるものと考えられ、新線の駅を核としつつ周辺のまちづくりを進めることにより、大阪を元気づける役割を担うことが求められている。
 こうしたことから近畿運輸局が事務局となって、「中之島新線駅を核とした活性化協議会」を設けて、関係者間で議論を重ね、短期的、中期的な様々なアイデアが提案された。
 舟運の活用、各種イベントの実施などのソフト施策を中心とした短期的に実施しうる施策については、単にアイデアの提案で終わらせるのではなく、一定時期に集中的に実施することにより、その効果を検証し、中之島新線開業に向けた中之島地域の賑わいの創出につなげていこうとの姿勢から実行委員会へと移行し、2005年10月8日から11月6日の間、「中之島物語、その未力と魅力」と題した実験的イベントを実施する。
 具体的には、中之島公園のバラ園に桟橋一体型の「舟屋」(中之島ローズポート)を設置し、水都大阪の歴史等をテーマにした交流プログラムを週替わりで実施、また
中之島ローズポートを中心として水上バスや水上タクシー等の舟運が中之島周辺を往来することで川の賑わいを創出するとともに、中之島1dayチケット、多言語(日・英・韓)表記による中之島マップの発行など様々なイベント・PRを行うことにより、中之島の魅力を発信、体感してもらうものである。
 これらの実験イベントは中之島の歴史を様々な角度から遡りながら、「歴史と先進性を兼ね備えた大阪の顔」「人にやさしい、水と自然にあふれた交流の場」等をコンセプトに、水辺空間の整備、中之島公園の整備、環境にやさしい島内交通システムの構築、中之島新線のデザインなどソフトとハードが効果的に連携する必要のある中期的施策の実現可能性について検討し、将来の中之島のあるべき姿を多角的に描こうとするものである。
 フォーラムの折にはこの実験イベントも終了している。成果の分析には今しばらくの時間が必要だが、この実験イベントを通じ感じた課題やあるべき姿について、議論したいと思う。



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パネルディスカッション
実験的イベントを通じた、駅づくりや公共空間の整備を考える試み
国土交通省自動車交通局貨物課長(前近畿運輸局企画振興部長) 奈良平博史
奈良平博史(ならひら ひろし)
昭和33年大阪府生まれ。昭和57年東京大学法学部卒業。同年運輸省入省。航空局、地域交通局、運輸政策局、鉄道局、行政改革委員会事務局、大臣官房などを経て、平成15年7月より近畿運輸局企画振興部長。平成17年8月より国土交通省自動車交通局貨物課長。昭和63年〜平成 2年、人事院長期在外研究員としてハーバード大学行政大学院、スタンフォード経営大学院に留学。平成10年〜平成13年には在英国日本国大使館に勤務。

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