都心のまちづくり その担い手
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主題解説を受けて

 

千葉

 基調講演に移りたいと思います。本日は、蓑原計画事務所長・都市プランナーの蓑原敬先生にご講演いただきます。蓑原先生は旧建設省出身で、様々な都市政策や住宅政策に実際の現場で携わってこられました。特に茨城県ではこれまでの公営住宅のイメージを打ち破る住宅地デザインをプロデュースされたり、千葉県幕張では全く新しい都心型住宅地をプロデュースされたりと活躍されています。また最近では、銀座や下北沢でのまちづくりなど、様々な場所のまちづくりに関わっておられます。

 それでは、「都心のまちづくり、その担い手」というテーマで、基調講演をお願いしたいと思います。


主題解説に抜けていた視点

蓑原

 先ほどの主題解説を聞いて、都心をつくっていくということは、そんなに簡単な話だろうかという疑問があります。現在、特に東京では、様々なものが急速に動いています。その中での担い手は誰なのでしょうか。主題解説では、都心のまちづくりの担い手として多くの人や団体が列挙されていました。たくさんの人が主体的にまちづくりに参加することは大切です。しかし、それでは、彼らは何を担い、デザインにどのような影響を与え、結果として何を生み出しているのでしょうか。

 主題解説で都心の定義がされていました。都心はあのような形で定義されていて、本当に都心として成立するのでしょうか。船場地域には、1940年には約6万人が住んでいました。しかし、1960年には約3万人、現在は約4000人しか住んでいません。このことは、その中で動いて、投資活動をして、デザインをして、ものをつくっていく人が入れ替わっていることを意味しています。その最大の主役は企業です。先ほどの担い手の分類では企業が重視されていませんでしたが、企業をどのように考えるかが大切だと思います。


都市デザインの敵

 現在のデザインには、三つの敵があります。

 一つ目は、公共の問題です。日本では、未だに競争入札という非文化的手法でのデザイナー選出が行われています。これでは文明国とは言えません。

 二つ目は、前面に出てくる資本の意識に対して、我々がデザインという行為の中でどのように対決していくべきかという問題です。現在は、企業の力がものごとの骨格を決めデザインの所要条件を決めるため、いくらデザイナーが頑張っても無駄という状況です。公共と企業の合作の事例が汐留です。外国の人を連れてくると、日本のように多くの優れた人達がいるところで、なぜこのようなものができてしまうのかと驚いています。

 三つ目は、参加さえすれば良いという参加至上主義の問題です。「参加なきところに計画なし」というように、まちづくりの議論には必然的に参加が入っています。しかし「都市計画には参加がないが、まちづくりには参加がある。したがって、まちづくりと都市計画は異なっており、まちづくりの方が偉いのだ」と主張する人もいます。こういった思考では、参加した結果、どのようなデザインのどのようなまちが生まれたかは問われていないのです。

 これらの三つのデザインの敵を、我々がいかに社会的システムとして直していくかが今日のテーマだと思います。

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