都心のまちづくり その担い手
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アンケート調査の結果報告

久保都市計画事務所 久保光弘

 

アンケート調査の実施状況

 「中之島」と「御堂筋」でパネル展示会を開催し、来られた方にアンケート調査を実施しました。アンケートには都心でのまちづくりの進め方についての意見がいろいろと書かれていて、含蓄のあるものですが、このアンケートだけで一つの方向が出るというというものではありません。そこでアンケート結果報告とともにアンケートも踏まえた個人的見解も少し述べたいと思います。

 アンケート調査の結果は、お配りしたペーパーにあるとおりです。

 全部で149票集まりました。中之島が62%、御堂筋5%、WEB 33%という内容です。回答者の職業は、会社員36%と主婦16%が比較的多い内訳になりました。回答者のまちづくりの経験については、NPOや市民活動、あるいは仕事でまちづくりに関わったことがある人が46%、関わったことがない方が48%です。関わった人もかなりの割合でおられますので、具体的記述は面白いと思います。


都心でのまちづくりの進め方

 「都心でのまちづくりの進め方」は、アンケート調査のポイントであったわけですが、大きく五つに分けて選択していただきました。回答を見ると、「行政主導型」とするのは1割に過ぎませんでした。やはりまちづくりは基本的に市民、企業、NPOなどが主体となって進めるべきとの考えが大勢です。選択された組織形態は多様ではありますが「多核連携型」を選択する人が多くおられました。

行政主導型
 「行政主導型」を選んだ理由では、専門家をしっかり活用していく、その中でも行政内のプランナーをきっちりと置くということがあげられていました。

 また市民・企業の意識が未熟なので行政が先導し市民・企業が参加していく方が良いといった意見も目立ちます。それから行政の性格・役割については、パブリックという面は当然ありますが、その役割が何かということについては、これから議論する必要があることが読み取れます。

 また中之島で、ブルーテントをなんとかしてほしいとの意見がありましたが、こういう公共施設の管理についても、これからはまちづくりの課題になっていくと思います。

企業主導型
 この「企業主導型」から最後までは、基本的には企業ないしは地域のニーズやナレッジが重要であるということは共通しています。ただ「企業主導型」では、これまで行政や企業が実際に形をつくってきているということから、その実行力・民間活力が特徴として挙げられています。ただ「行政主導型」「企業主導型」の両方で、それぞれの問題点もあることが書かれています。

市民活動型
 さらに「市民活動型」の意見としては、市民のニーズやナレッジの反映が重要だということが書かれています。またこれと関連して、NPOの性格・役割が今後議論の対象になるだろうということでした。

多核連携型
 一つのエリアのなかで多くの組織ができてきて、多様な智恵が出てくるわけですが、そこから創発をしていこうというのが多核連携型です。

 こういう「多核連携型」では組織のあり方が問題になってきます。したがってこれからのまちづくりにおいて組織論が重要になってくるのではないかと思います。この場合であってもやはり行政の役割はあるわけで、多核連携型と言えどもまちづくりの中で行政の役割をどう考えていくのかも議論の対象になるのではないかと思います。

多核放任型
 「多核放任型」については、まちの複雑性、自発的なエネルギーを活かすという内容で、これはまちづくりの原点ではないかと思います。


アンケートを踏まえての意見として

 結果としては「多核連携型」が一番多いのですが、それ以外の「企業主導型」「市民活動型」「多核放任型」も含め、それぞれの現実やそれぞれのまちづくりプロセスでのある断面ともみれるわけで、きちんと分けられる話ではない、と思います。

 したがってここから浮かび上がってくる内容は、まちづくりとは何かということ、まちづくりにおける行政の役割とは何か、それから我々は計画論や景観環境論を中心に動いているわけですが、これから組織論のような話も出てくるだろうし、企業や民活といった話が出てくれば、ファイナンスも含めた事業論も出てくるのではないかと思います。そういうことを踏まえて、一つの見方を述べてみたいと思います。

 学芸出版社から『エリアマネージメント』というタイトルの本が出ていますが、まちづくりの概念が曖昧な中で、これはまちづくりの本質を理解しやすい言葉ではないかと思っています。アンケートにもありましたが、コミュニティニーズの反映、コミュニティナレッジがまちづくりの基盤になるものです。まちづくりにおいて、建設だけではなくて、これから維持管理運営ということが重要になってきて、その主体として地域にいろんな人が関わってくるわけです。そういうものがエリアマネージメントの中に含まれる、それをまちづくりと言ってもよいのではないかと思います。

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まちづくりとは
 
 アンケートの意見の中に「連携型」になった時にどうまとめていくのかという話があるのですが、これに対しては、ジェネラルに対応できるマネージャーが必要になるのではないかと思います。昔はプランナーと言われて、それからコーディネーターと言われたのですが、これからはエリアマネージャーと言う方が的確かもしれません。

 地区まちづくりが充実してくれば、おのずと行政の役割が一つの形として出てくるのではないか。地区のまちづくりが一つの軸として出てくれば、一方で都市レベルの視点、都市のビジョンが重要になってきます。このような都市の枠組みをきっちりつくっていかねばならないのではないか。そういうなかで、行政の役割が明確になってきます。都市レベルの枠組みと地区レベルの知恵がフィードバックして、一つの仕組みをつくれていけばと思います。

 アンケートでは、連携型というのが出てきているのですが、まちづくり組織の構成として大きく分けて、地区全体のマネジメント組織(プラットフォーム)と多様な部分組織があるのではないでしょうか。震災復興のときも、部分組織から地区全体の組織ができていったプロセスが多かったのですが、そういう整理の仕方があるのではないか、と思います(『まちづくり協議会とまちづくり協定』)。

 この地区マネジメント組織についても、地区関係者総てが参加する協議会などのような形があれば、部分組織をネットワークする形もある。部分組織についてですが、住民組織といっても自治会になると不在地主などを含んでいないので部分組織ということになります。それからNPO、さらに公益性を持つ企業もあります。

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まちづくり組織の類型化
 
 それぞれ振り分けると図の形になります。御堂筋と中之島で色分けしております。

 こういう組織とともにまちづくりで重要になってくるのは、財源の問題であろうと思います。財源がないと活動しにくくなるということです。

 御堂筋まちづくりネットワークの場合は30社が各10万で300万円集めているようですが、BIDのような負担者自治へのプロセスとして、会員からお金を集めるということは大切であると思います。

 それから中之島はコンサルタントや造園コンサルタントの方からすると、これからどういう形で関わっていくかというところですが、例えば中之島公園の維持管理運営をマネジメント組織でやっていくとすれば青テントの問題等も含めてきめ細かい動きが出てくるのではないか。いずれにせよ、コンサルタントがまちづくりに関わっていくとすれば、お金と仕組みの問題がしっかり出てこないとだめだろうと感じております。

 最近は不動産投資ファンドがかなり売れているようですが、先ほど蓑原先生のお話にあった問題も含めて考えなければならない注意すべき点があると思います。

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まちづくり組織の運営(左図出典:中廣穣「民間都市開発の動向」『新都市』2005年10月号、右図出典:井庭、福原『複雑系入門』)
 
 最後に連携型の話を私なりに解釈しますと、基本的には創発型ということではないかと思います。自律した一つの個(部分)が連携ないしは作用しあって一段階上の組織なり計画をつくっていく、そういう一段階上の組織や計画がそれぞれの部分なり個に影響を与えるという、複雑系でいう創発の考え方になるのではないかと思います。こういう動きは継続的ではないのですが、震災復興のまちづくりの中では現実に見られました。ただこれはずっと続くということではなくて、参加が少なくなったり、だんだん組織が固くなってくるということも往々にしてあります。この点から先のヒアリング報告にあった中之島まつり実行委員会の事例は、興味深いものでした。

 こういうまちづくりの組織論もこれからは重要になってくるのではないかと思います。

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