小浦:
それでは後半を始めさせて頂きたいと思います。
まずは前半の最後にいくつかの質問が出ておりましたので、その辺から議論していきたいと思います。
澤田さんへの質問で、街に出てきた新しい動きが変に使われてしまったり、経済性・収益性といった視点だけで街に入ってくる人がたくさん出てくるのでは、というお話が出ていましたが、これについてはいかがでしょうか。
澤田:
ご指摘のように、新しい街の動きを利用・便乗して「作法」抜きでまちづくりが進められる危険性には常にさらされています。ただ、さらされるにとどまっているのには理由があると思います。
まだ大阪の経済がそこまで来ていないということもありますし、淀屋橋WESTのエリアのオーナー会があるのですが、そこに参加しているオーナーの意識の中にはこのエリアに対する熱い思いがあり、少し排他的な所がありながらも、それが幸いしている側面もあると思っています。
ところで私達がやっている「街をブランディングする」という仕事は、面倒な作業です。
私はブランディングというのはエンドユーザーに安心して使ってもらえる事だと思っています。例えば、淀屋橋WESTに入ると間違いない、色んな要素はあるけれども一定のクオリティを保証してもらえるという安心感がブランドなのです。
たとえば、皆さんがエルメスの店舗で知らないバッグを見たときも、エルメスの商品だったら間違いないと選ぶことだってあるでしょう。そういった意味でブランディングは必要ですし、そのためにも一つ一つ手間をかけつつ、活動の詳細や経過をあえて開示しプレゼンテーションしていくことで、逆に簡単には参入できないようにしたいと考えています。
それから、街は消費されるものだと思うんですね。メディアにも同じ事が言えますが、今何がトレンドであるかが重要で、新しいトレンド・スターを見つけると同時にこっちはもう古いとなる。そしてまたすぐに新しいスターが求められる。しかし、そういったトレンドの中で生きていく街というのは危険だと思います。
そうはいっても、淀屋橋WESTの辺りはオフィスワーカーはいるけれども夜間人口はほとんどいませんから、わざわざ来てもらえるだけの魅力が必要ですので、その分家賃が今ちょっと安くなっています。
これが例えば梅田や難波のターミナルなど人が沢山集まる所では、ディベロッパーも高家賃を取ります。それはどういうことかというと、一見客をどんどん入れていくようなビジネス形態に繋がるわけです。
一方、淀屋橋WESTのレストランやショップでは家賃が安いかわりに何をするかというと、お客様へのサービスや食材にお金をかけたりするわけです。ですから、おのずと違う業態であると言えるかもしれません。
流行を追いつつ全国的なチェーンオペレーションで経営しているような、原価率がギリギリまで抑えられている企業が淀屋橋WESTで戦えるかどうか、そういったところまで踏まえてつきつめながら、街をマネージメントしていく覚悟がないと、なかなか維持できない。そのように考えてはいますが、今後どうなるかは予測できません。経済環境が変われば、ご心配されていたような事態にならないとも限りません。そうならないために、我々ができることは何なのでしょうか。これについては皆様のサポートも頂だきたいと思います。
作法抜きのまちづくりの危険性
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