都心のまちづくり その担い手
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まとめ

大阪ガス・フォーラム委員長 篠原祥

 

はじめに

千葉

 長時間ありがとうございました。それでは先ほど小浦先生がおっしゃったように大変難しいまとめを、最後にフォーラム委員長の篠原にやっていただきます。よろしくおねがいします。

篠原

 パネリストの皆様ご議論ありがとうございました。また、会場の皆様も今日は長時間お付き合い下さりありがとうございます。

 最初に岸田さんから課題の設定がありました。今回は都心部の様々な担い手にスポットを当てて、多様な担い手のかかわり方、意見のくみ上げ方、意思決定のあり方、および専門家の役割について明らかにしていきたいという事で議論をスタートしました。

 私も色んな形でまちづくりに関わっておりますので、私自身の経験からいくつか今回のフォーラムをするにあたって考えたことがあります。

 まずは、今日の議論の中でも同じ様なご意見がありましたが、議論だけでは駄目で、「まず動くこと」が必要ではないかということです。またその動き方としては、中身優先の活動を行って枠組みは後から考えるべきであり、そういった様々な活動が重なりあって大きな動きへ繋がっていくのではないでしょうか。

 ただ、それらの活動をその後のまちづくりへと繋いでいくためにはどうしたらいいかということが、私としてもわかりませんでした。

 実際の活動では仕事として関わっているものもありますが、それ以外のアフターファイブに参加している自主的な活動もあります。ですから、やりたいことを同じ思いの仲間とマイペースでやっていく活動の心地よさを日頃実感していましたし、またそういった動きが共感者を増やして活動の幅を拡大しているということも感じていました。しかし、それが本当に街を動かすことに繋がるのかという疑問もありました。

 また、活動している中で、多様な分野の担い手の方と活動することが大事なのですが、そこではそれぞれの得意分野で役割分担をすることによって、より大きな活動に繋げていけると感じました。ただ、それが実際には難しく、仕組みと呼べるものもあるとは思えません。

 今回のフォーラムでは、この辺りのことを明らかにしたいと思ったわけです。


担い手に求められるものは?

 さて今日のフォーラムのまとめですが、まずは中之島・御堂筋でのヒアリング結果について「担い手に求められるものは何か」という説明をいたしました。

 様々な担い手のうち「企業・店舗」については、企業も企業市民であり積極的に関わるべきである、またその役割としては、行動力・スピードといったものを活かすべきである、ただしその中で長期的な視点を持って欲しい、というのがヒアリングで得られた事でした。

 また「ワーカー・住民」という立場では、ワーカーも市民であり、彼らも主体的に積極的に参加するべきである、そのためにまずは自分たちの場所、都市の魅力を認知することから始めるべきではないかと思いました。

 さらに「応援団」について、今回のヒアリングでは経済団体が該当するわけですが、皆代表として企業と行政の橋渡し役、またそれぞれへの意識付けという役割があるということがわかりました。

 最後に「行政」の役割ですが、何通りかあったように思います。イニシアティブを持って欲しいという意見もありましたし、少し主体性が弱いかもしれませんが利害関係調整の役割、あるいは仕組みづくり・意見交換の場づくりが役割であるという意見もありました。さらに、もう少し主体性が弱まって民のサポート役をしてほしいという意見もありました。

 行政については幅広い意見があったように思います。それは、行政と言ってもその関わる行政の種類も沢山ありますし、それぞれの行政によって果たすべき役割が変わってくるのかもしれません。

 次に会員の皆さんから投稿いただいた事例をご紹介しました。その中で新しい担い手に私が共通して感じたのはそれぞれ自主性・内発性があるということでした。

 旧来の仕組みでは対応できなくなって新しい仕組みに変化してきた、新しい担い手。あるいは旧来の担い手では担いきれなくなって新しい担い手が出現したというものが35の事例全てであったように感じました。

 さらにアンケート結果を久保さんがまとめてくださいましたが、期待される新しい担い手のタイプとしては多い順に多核連携>市民活動>企業主導・行政主導>多核放任型となっていました。多核放任型については多核連携型と同じぐらいそれがふさわしいという人がいるかと思って選択肢の一つに入れたのですが、期待が小さいことがアンケート調査からわかりました。

 また多核連携型の良さについて意見を聞きますと、参加する事の重要性・多様性、多面的な視点の重要性、多核連携の中で自分の責任を認識できるという利点などが挙げられました。また、その中でも独自性自主性を守るべきであること、それから相互に補完しあうことの重要性についても意見がありました。

 しかしその反面、迅速な意思決定ができるのかといった疑問や、多核連携型と言っても中立的なコーディネーター役が必要であり、このリーダー役、コーディネーター役というのが重要なポイントであるといった事も感じました。

 また、久保さんからは創発についても説明がありました。


真の「担い手」の糾合〜基調講演より

 次に蓑原先生のご講演では、真の担い手の糾合が大切であるということで、大規模開発については資本に対抗するチェック機能やしくみが、また小規模開発においては文脈主義の導入が必要であり、そこには行政の果たす役割が大きいと仰っていました。

 また、パブリックな人達が中立的な立場を担うべきであって、それは専門家であり大学の先生であるという話もありました。このパブリックの役割が、この辺りが後ほど出てくる担い手の動きを繋いでいくうえで大事な点かと思います。


パネルディスカッションより

 パネルディスカッションでの「担い手」に関する議論では、まず「場所の力」をいかにして創り出すか、維持するかが重要であり、またそれは「場所の力」を作り続ける人によって持続することができる、だから担い手が重要であるということでした。

 最後の小浦先生のまとめでもこの話が出てきましたが、「場所の力」を生み出すディベロッパーやプロデューサーが担い手として重要であって、また「場所の力」を認知して発信する「まちの情報発信装置」役が必要であること、そしてその「場所の力」を維持するには、街の変化の調整システムが大事であると学びました。

 またパネリストの方々から街の文化を育てる事の大切さ、事実の積み重ねが有効な手法であるとのお話がありました。また、まちづくりの担い手は市民であり、市民とはまちを自分の街だと思い、その街に対して責任があると自覚している人だということでした。そこから「新しい公」という概念が出てきたかと思います。

 それから蓑原先生から高い文化性およびその継続性を追求する大阪の手法は先進的であり21世紀型であるというご指摘があり、それをいかに積み重ね続けるかが一番大事であると学びました。

 またその中にもビジネスとして成立するものと持ち寄りの精神で続けていくものの両方があるわけですが、そのどちらが良いという話ではなくて、そういった持続させるための手法を考えて行くことが大切であろうと思います。

 そして一番最後に鳴海先生からのご指摘がありましたが、私も御堂筋に本社を構える企業に勤めているわけですが、大企業もローカルアイデンティティに責任を持たなければならないということです。

 こういったことを都心のまちづくりの中でどう具体化していくかが一番大事だと思いますし、今日は結論付けることができませんでしたが沢山学ぶべき点もございましたので、これらを頭の中にたたき込んだ上で、今後の活動に役立てて行きたいと思います。

千葉

 本当に長時間ありがとうございました。新しい時代、21世紀の都心まちづくりの新しいスタイルが生まれてくるということを期待致しまして、今日の都市環境デザインフォーラムを終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

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