20世紀は都市の時代だった。人類の進歩は都市のもつ可能性に委ねられていた。しかし都市が万能でなかったことはご存知の通り。都市の美術に賭けていた美術も、都市が病み、痛むにつれて、都市の病のカルテを発行するようになり、民衆の支持を失った。
都市はITやインターネットが加担したグローバリゼーションとフラット化の中で固有の時間を砦に戦う資格を自ら放棄したかに見える。ミースが掲げた理想は坪いくらという効率化のなかに解消され、あらゆる作品が同じように見えるというホワイト・キューブの夢は指定管理者制度の荒波に飲まれてしまった。
都市環境は大切だ。だがそこでの誠意あふれるフィールドワークとデザインは、同時に過疎地を含めた国土、地域のデザインをともに受け持つというこころざしの中で行ないたい。都市のツケを田舎で、過疎地のツケを都市で払うという孤立した作業を止揚しなくてはならない。人間の生理に拠るデザインを。
田舎からのメッセージを送りたい。
基調講演
生理としての都市デザイン
ヒルサイドと越後妻有の経験からアートディレクター・アートフロントギャラリー代表 北川フラム
北川フラム(きたがわ ふらむ)
1946年新潟県高田市生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。出版から音楽、企画展のプロデュース、都市・建築・まちづくりにおけるアート計画など活動は多岐にわたり、自ら美術・文化評論の執筆活動も行う。代表的なプロジェクトとして「ファーレ立川アート計画」など。1997年より十日町地域ニューにいがた里創プラン事業総合コーディネーターとして、越後妻有アートネックレス整備構想に携わり、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2000、2003」では総合ディレクターをつとめる
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