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分科会B
歩けば見えるファサードデザイン

HATデザイン事務所 高原浩之

   

街を活かすも殺すもファサードデザイン次第

 活気のある街、楽しい街、大人の雰囲気が漂う街、そこには、必ず街の顔となるファサードがある。

 建築の壁面だけがファサードなのではなく、そこでの人のアクティビティーや建築主の思い、まちの歴史、制度やシステムなど空間を構成する全てがファサードになって現れてくる。その意味で床の舗装、緑化、隣地との隙間、サイン、照明、駐車されている車や自転車までも含めた街を作るもの全てがファサードであり、それらを歩く人の視点でデザインすることでまちの活気は継続して行く。

 分科会Bでは、「街を活かすも殺すもファサードデザイン次第」という若手デザイナー2人の話題提供を基に、京町堀をケーススタディーとして「歩けば見えるファサードデザイン」について熱く議論していきたい。


「歩く」ことで街の楽しさが見える

 街は歩くことで見えてくる。超高層の高層部のファサードは、街を歩く人にはほとんど意識されない。しかし、通りに面した低層部はそうはいかない。

 また「行ってみたい街」「住みたくなる街」になるためのデザインが望まれる。人気のない公開空地、附置義務駐車場、囲われた豪華なエントランス。折角の心地よい街並みに異物が座ったように感じる。人は歩くことでその街を印象付けている。歩くことでコミュニケーションが生まれる。ちょっとしたサインやアートが気になって入ってみたいお店に出会う。ちょっとした壁の色やテクスチャーから気に入った建物になる。

 この「ちょっとした」とは、何なのか?車では見過ごしてしまう「ちょっとした」の連続が居心地の良い、楽しい街をつくるのではないだろうか。


京町堀キーワード

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(1)うつぼ公園
 京町掘はどこですか?と聞かれると、大抵の人はうつぼ公園の北側、と答える。うつぼ公園は京町掘にとって最大の財産であることは間違いない。公園はリニューアルを終え、ブルーテントも撤去され、今まで以上に市民が利用する公園になった。ただ、京町掘との境界には、いまだ管理上の規制という目に見えないフェンスが張られているようである。京町掘の建物のファサードがうつぼ公園側に今以上に向くこと、京町堀からうつぼ公園がもっと身近に見えるようになるなど、まちの財産価値を上げる方法としてさらなる活用が期待される。

(2)超高層住宅
 京町掘も例外にもれず、超高層集合住宅が建つ。また、この一年だけでも数区画でマンションが建設中である。街に住民が増えること自体はまちづくりにとって非常に歓迎すべきことである。ただ、マンションの場合、低層部の用途、デザインが問題となる。街の一員として、高層住宅の低層部ファサードデザインの作り方こそ、私たち専門家が誘導できる一番近いポジションにいると考えている。

(3)オーナービルが多い
 京町堀は誰に聞いても評判が良い。それはなぜなのだろうか?京町堀には、オーナービルが多いが、それぞれのビルが、何らかのちょっとした個性を表現して、その個性の連続が街並みを形成している。オーナー自らが所有することで、そこで営まれる生活感や歴史が加わり、京町堀全体のファサードデザインとなって現れている。

(4)目立つサインがない
 京町掘のファサード連続写真を撮ってみた。際立つ建物、サインがない。確かに、お店やレストランをよく尋ねられるが目印がなく目立つサインも少ないので案内しにくい。その一方で、隠れ家的なショップやレストランを求めて、人が集まってくる。お店の方に聞くと「お客さんとのトラブルが一度もない」「客層が良い」との声だ。大人の街には際立つファサードデザインは不要なのだろうか。

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(5)車両一方通行の京町堀通
 京町掘は西から東への車両一方通行で、日中の車両の通行量は少なくないが、四ツ橋筋の信号待ち渋滞のおかげで、歩行者は案外通りを横断しやすい。また歩道が両側にあることも通りを歩きやすくしている。道路の両側のパーキングレーン、歩道のごみ置き場、歩道と車道の間の柵、その柵に寄りかかって停められた自転車、車道側に並べられた鉢植えの緑など…歩いて楽しい通りのファサードは、建物側と道路側の両方の要素によって印象付けられている。

(6)コンビニがない
 京町堀のなにわ筋と四ツ橋筋の間には、コンビニがない。京町堀アンケートによると、予想に反してコンビニはあったほうが良いとのコメントが多い。


京町堀アンケート

 京町堀に住んでいる、もしくは働いている人を対象にアンケート調査を行った。街並みに関する38個のキーワードに対して○×をつける質問と、回答者の基本的な属性で構成した。性別を問わず各世代で、○をつける割合が高かったのは、

 ×をつける割合が最も高かったものとしては、

 が挙がった。


コンビニがまちに投げかける課題

 コンビニは、とかく都市景観上は悪者扱いを受けがちであるが、今や子供から大人まで、住む人、働く人、通りがかりの人、全ての人が利用すると言っても過言ではない。コンビニが受け入れられる理由として、便利である、匿名性が高い、24時間営業、品揃えが豊富である…などが挙げられるだろう。逆に批判としては、治安が悪くなる、個性がない、コミュニケーションが生まれない…などが上げられるのではないだろうか。これは、現代の都市が抱える課題とオーバーラップする点が多い。

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京町堀あったらいいな〈コンビニ〉とは

 京町堀に相応しいコンビニのデザインを提案することは、街に求められているものに対するデザイナー側からのレスポンスであり、街並みを読み解くケーススタディーとしてもユーザーの声を反映している点で、非常に有効であると考える。

 そこで今回は京町堀に実在するテナントを対象にコンビニをデザインすることで、「ファサードデザインの力」について議論してみたいと考えている。 今やコンビニは誰でも、何を売っているのか、どのようなものなのかは知っている。あえて目立つサインや煌々と照らされた店内が見える必要はない。

 そこで京町掘に相応しいコンビニとは、

 このようなコンビニがこれからの京町掘の元気を育む力になると信じている。


歩いて見つけた Jazzy な「コンビニ」−ファサードデザイン 4つの力−

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「ここに来ると元気が生まれます。その元気はまちへ広がって行きます。」
 
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うつぼ公園から京町堀へ連続するアクティビティーも京町堀の新たなファサード うつぼ公園側の緑も人も京町堀の新たなファサード 既存のファサードに新たな京町堀らしさを持ったファサードを重ねてゆく
 
     
     高原 浩之(たかはら ひろゆき)。
     (株)HTAデザイン事務所代表 1961年大阪府生まれ。大阪工業技術専門学校建築学科卒業。
     1992年〜2004年 シーザーペリ&アソシエーツジャパン執行パートナー兼大阪事務所所長として、国立国際美術館、中之島三井ビルディング、九州大学新キャンパスマスタープランなどを担当。2004年(株)HTAデザイン事務所設立。「人と建築をつなぐ」をコンセプトに街づくり、公共施設から住宅・家具まで幅広くデザイン活動に携わっている。
 
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