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デザインの力で『まち』を育む

大阪府 北野幹夫

 

 私が行政で携わった経験から、京町堀のような魅力的なまちをさらにデザインの力でどう磨きをかけれるかについて、以下の三つを重視して考えたい。


バリアフリーやユニバーサルデザインへの対処

 バリアフリーに関する法や条例の整備が進み、公共施設にとどまらず、日常よく利用される物販店・飲食店等の民間施設に対し、円滑な移動(アクセス)と利用ができるよう段差解消や有効寸法等のバリアフリー化の整備基準がある。

 これは、先進国で同時に起きている動きであり、障害者・高齢者など全ての人が、まちに出て自らの意思で自由に歩き、乗物にのり、買物・通勤等さまざまの社会活動ができることを保証するためである。現在の法は、対象施設を限定した規定であるが、ユニバーサルデザインへ向かっており、将来は規定の対象が拡大し、既存・新規施設ともにファサード等での配慮はより重要になる。


住民・企業等の協働による公益的まちづくり

 各地では、住民・企業等による地域の活性化等の活動が盛んであり、特に地域がまち自体をデザインする取組みは行政による今までの公共と違い、地域特性を活かした『新しい公共』を創るものである。

 景観法等活用の道は将来あるが、まず、まちづくり活動とローカルルールによるデザインから、身近なコミュニティ再生に繋がると考えられる。すでに京町堀では多くの活動があり、有効な取組みとして既存建物のリノベーション、魅力施設の誘致、緑の街角への取りこみ、路地づくり、史跡活用等がある。

 さらにファサードデザインの向上は、まちの回遊性や街の改善に重要であり、写真を撮りたくなる気の利いた建物、整った看板・ネオンサイン、敷地の歩道との一体感ある整備、夜のライトアップなどは住民の方に限らず全ての人のために寄与する。


まちの記憶を蘇らせ、まちを育むデザインの力

 大阪のテーマパークUSJに行くと、1950年代以前の古いニューヨーク等を再現したファサードやショーウィンドーがあり、現代より人の温もりがする都市文化を体験できる。米国USJでは、ファサード等が若者の歴史教材に使われたり、癒しをもたらすため精神障害等の治療プログラムの一部に活用されていると聞く。

 一方、京町堀を訪れると懐かしい気がするのも、身近に感じられる物事があるからである。例えば、かつての大阪で元気だった製造・運輸等の産業の記憶を呼び起こすものや、ヒューマンスケールの近代建築等を見ることができる。

 いま残っているものをさらに磨き、活用し、語りかけるファサードデザインとなって、人々へのもてなしがあるまちは、京町堀という気品のある名前にふさわしいと考える。

 以上の視点で、『まち』を育むデザインの可能性をフォーラムでは探りたい。

     
     北野幹夫(きたの みきお)。
     1957年大阪市生まれ。82年関西大学大学院修士課程修了後、大阪市役所入庁。本年より出向し、大阪府住宅まちづくり部建築企画課参事。大阪市計画調整局等にて地区計画・要綱による土地利用・景観の規制誘導や、住民主体のまちづくり活動を支援する企画・実務に携わる。またテーマパークUSJにて施設の計画・建設にも従事。技術士(都市及び地方計画)、一級建築士(専攻建築士)。
 
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