フィンランド湾の最奥部にあることから、過去より何度となく大洪水に遭い、毎年1〜2回の水害がある町でもある。写真は、そのようなことは全く感じさせない、親水性の高い大きな水辺の風景を創り出している。堤防は大理石製で、人間が手を置いたり、水面に身体をもたれさせて風景を眺めることを強烈に意識した、大きなアールでデザインされている。石張りの路面では人々がそぞろ歩き、時に絵筆を持つ人も佇むにふさわしい幅であり、歩行路の側にはさりげない芝生のグリーンベルトを配して車道がある。
川幅300mもある河岸には見事に高さの揃えられたバロックやロシアクラシックの建物が並び、世界でも第一級の都市型沿川景観を現出させている。洪水を毎年経験しながらもこの水辺風景の美しさを最優先に、高い防潮堤などで整備しないサンクトペテルブルグの土木技術者は第一級の環境デザイナーでもあると思う。
歴史を紡ぐ
洪水があっても水辺風景のデザインにこだわる
サンクトペテルブルグはネヴァ川の河口部の湿地帯を埋立てて造成された人工の大都市であり、大阪に似た条件の水都である。DAN計画研究所 吉野国夫
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