校庭を見ると農園を囲むパーゴラの一角に石造の基壇が残されていた。かつて校舎前にあった記念碑の基壇である。上部の像が何であったかは、今や判らないが戦時中に軍事物資として提供され戦場に消えた。
場所の新陳代謝は必要だが、先人の思いや場の歴史を伝え・残すことで、その空間に新しい歴史を紡ぐことができる。記念碑は像本体を失ったが、その基壇が発する存在感は今なお大きい。学校にいくつか残された記念碑の基壇から、子供たちが何かを感じていることが期待できる。
歴史を紡ぐ
歴史を紡ぐ
神戸市立魚崎小学校が創設されたのは、1873(明治6)年1月。その後1929(昭和4)年、旧校舎が建設され、阪神淡路大震災にも耐え抜いてきたが72年を経て、老朽化のため、2001(平成13)年12月に建替えられた。学校の存在は、地域住民の誇りや卒業生の想い出そのものであった。校舎は新築されたが、幸いかつての面影を持った建物としてよみがえった。ランドスケープデザイン・アトリエ風 河合嗣生
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