ここで使用されたすべての木材は、今後30年あまりこの地で利用された後に、チップ加工され生まれ故郷の富山の杉林に戻される予定である。そして再び30年生林から新たな木材を供給する。ここでは木材を「朽ちた後も、それは廃棄物ではなく資源であり、森林から借りてきた素材である」と定義づけている。そのためには将来、生産地と生産者が確認できるようにすべての部材に焼き印で記し、塗装剤も環境負荷のないものを選んでいる。また、メンテナンス・取換え時にも簡単に対応できるように、木と鋼材のハイブリッド構造とした。
地元の木材で、このような供給・循環システムが確立されればいいのだが。
歴史を紡ぐ
朽ちても資源
三十数年前、草刈り十字軍が守った杉林が材木として伐採できるまでに育った。東京の台東区にある興禅寺に建設された木塀は、この杉材を利用している。本計画では、木材の循環型資源として新しい試みを行なっている。
草刈十字軍とは……
1973(昭和48)年に植林地への除草剤空中散布に反対した足立原貢氏が全国の学生に呼びかけ、富山で植林地の下草刈りを行ったのが原点。後に活動を全国展開しようと参加者が出身地に戻り東京・関西・四国で活動を継続する。
ランドスケープデザイン・アトリエ風 河合嗣生
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