事例報告
岸和田・城下町、歴史と暮らし
わが町への誇りと愛着
本町のまちづくりを考える会会長 小泉修一
本町地区を通るだんじり |
城下の道は、所々でカギ状に屈折して敵の侵入を防ぐように作られています。現在、各町だんじりの腕の見せ所の一つとなっている屈折した道も、城下町ならではといえます。
岸和田本町地区には、城下町の雰囲気とともに、当時の町割、遺構がよく留められています。特に紀州街道の道筋には、その歴史を語る建築物などが数多く遺されている中で、江戸時代の中心街であった本町地区の、本瓦葺き、中二階、出格子の立面で構成されるまちなみは、城下町の商業の中心地としての地位にふさわしい重厚さを保っています。
平成6〜15年までは、国の街なみ環境整備事業を活用し、岸和田市と連携しながら町家の修景等のハード整備を実施しました。
また、地区内の所有者個人も、現存する蔵・町家等の歴史的景観建築物の保全や、面影が失われつつある町家の再生に取り組んでいます。加えて、新築の際や、町家ではない一般建築物等の修景も行っています。
保全・再生した町家については、手づくりイベント開催に合わせて一般に公開もしています。
町家ギャラリー |
町家コンサート |
このような継続的な活動をきっかけとして、現在では多くの方が訪れてくださるようになり、岸和田ボランティアガイドの申込みが増加したり、電鉄会社主催のウォーキングイベント等の基本ルートに設定されるようになりました。
これからも、美しく落ち着きのあるまちなみに磨きをかけていきたいと考えています。
さらには、城周辺や商店街ともつながりを持って、訪れる人に感動を与え、若い世代も住み、子どもが健やかに育つような元気あるまちづくりをめざしています。
紀州街道にぎわい市 | 前夜祭「夢灯路」 |
まちなみ形成・板塀プロジェクト(左;作業前、中;作業後、右;完了) |
手づくり案内板 |
まちなみの連続性を高めていくためにはこれらの阻害要因に手を加えて修景を行う必要があります。しかし現段階で充分な機能を有している物件について、その所有者が改修等の必要性を感じていないことから、老朽化等を契機とした所有者個人の修景意志を待っていては、まちなみとしての連続性を高めていくことが、遅々として進みません。
そこで本町のまちづくりを考える会の専門チームの一つとして「まちなみ景観研究チーム」を立ち上げ、ブロック塀やトタンの所有者と交渉し、会員自らが板塀を設置していく「まちなみ形成・板塀プロジェクト」を平成19年度より実施しています。
また、本町地区への散策者の増加が見受けられる一方で、当地区を含む岸和田城周辺に幾つかの観光文化資源が点在しているにもかかわらず、その回遊性に乏しい状況で、しばしば道に迷っている散策者を見かけます。
そこで、地域住民としてのホスピタリティー(おもてなしの心)を発揮するために、当協議会の「町家活用・商業活動推進チーム」が企画して、「手づくり案内板プロジェクト」を実施しています。
手づくり案内板については、地域資源であるだんじりのコマや梃子(てこ)を用いて、近隣住民と交渉し民地内に設置する、地域住民主体のサイン事業です。
最近、「懐かしい風景が残る町BEST77」(TV東京選定:07/7/7放送)で、岸和田市本町地区が68位に選定されました。全国各地の重要伝統的建造物群保存地区や日本都市景観百選(国土交通省選定)の錚々たる地区が名を連ねる中で、大阪府では唯一の地区選定です。
私たちのまちづくりは、わが町の誇りと愛着を礎とした、暮らしそのものです。
つまり、背伸びをして華やかな事業を推進するのではなく、無理なく、肩肘張らず、楽しみながら、できるところからの取組みを実施しています。
このように地道にワイワイガヤガヤと取組んだ結果、上述のように評価されたのだと思っております。決して「観光」を第1目的にしてきたわけではありませんが、現在では散策者が増加している状況です。
当地を散策してくださる方には、是非、暮らしが息づくまちなみを味わっていただき、ホッとしていただければと思っております。
小泉修一(こいずみしゅういち) 1936年岸和田生まれ岸和田育ち。本町のまちづくりを考える会会長(平成6年度初代会長、平成12年から現在まで会長を歴任)。岸和田市観光振興計画策定検討委員会委員。 |