事例報告
あまけん:わがまちをオモシロがる方法
尼崎南部再生研究室、(株)地域環境計画研究所 若狭健作
図2 会議風景 |
「工業都市=大気汚染・公害」といったネガティブなイメージに隠れてしまった、地域の魅力を見直そうと、まちへの好奇心と遊び心を大切にしながら活動を展開している。
図3 運河クルージング2004年4月 |
クルージングでは、日本のチタン製造発祥の工場、明石海峡のハンガーケーブル、北海油田の掘削用パイプ、プラズマディスプレイ…、塀のなかに隠れた工業地帯の魅力を一つ一つ丁寧に説明する。運河沿いの工場群や、閘門、可動橋といったダイナミックな景観を観光として活用する実験は今年で6年目を迎える。2007年には国土交通省による運河の再生協議会が設立され、官民一体となった取り組みへと期待が高まる。
図4 半世紀ぶりに復活した尼いも(四十日藷) | 図5 絵本「僕はアマイモ」 |
2001年春には尼いもクラブを結成。毎年8月には試食会「イモコレ」を開き、尼いもを通じた人の輪は広がりつつある。昔ながらの栽培方法にこだわり、種芋の保存から育苗、栽培までに取り組んでいる。当面の課題は苗の増産と栽培地の拡大。市も尼いもブランドを生かした焼酎の開発に着手するなど、各方面での展開が広がってきた。
一般の希望者への苗を配布に加えて、小中学生へのPR活動にも取り組んでいる。歴史をまとめた小冊子「尼いもの本(全2巻)」や絵本「僕はアマイモ」といった発行物は市内の小中学校に配られ、総合学習の現場で、栽培学習のプログラムにも活用されている(図5)。
図6 尼崎南部地域の情報誌『南部再生』 | 図7 第1回コンペ応募チラシ |
「アマのウチナー(沖縄)」「オール阪神阪急」「尼崎的建築ガイド」といった尼崎ならではのトピックを特集企画に、「アート」「まつり」「町並み」「B級グルメ」などメンバーそれぞれの専門性や視点を活かした連載記事などを織り交ぜ、季刊発行を続けている。通巻第26号をかぞえ、400人を超える会員への定期購読をはじめ、取材協力店、地元信用金庫や郵便局、駅、公共施設といった市内各所で配布し、発行部数は1万部に達した。発行のための印刷資金は尼崎信用金庫や会員からの寄付でまかなう。
取材活動を通して見つけた地域情報を通して、市内の人的なネットワークも広がりつつある。A5判24ページの小冊子ながら、まちの人材をつなぐコミュニケーションツールとしての可能性も感じている。
図8 メイドイン尼崎本 |
コンペには庶民的な食べ物から最先端の工業製品まで、応募者の愛着や想いが込められた品々が集まった。商店主、製造業者、大学教授、作家、PRプロデューサーといった審査委員が選んだ二つのグランプリは、国内で高い生産シェアを誇り工都を感じさせる「金属製の湯たんぽ」と、尼崎が漁港だった歴史を物語る「天ぷら(揚げかまぼこ)」。どちらも地域性の強い逸品であるとともに、独特のノリと遊び心で注目を集めた。
商店街の空き店舗には「メイドインアマガサキショップ」がオープン。コンペに寄せられた品々を展示、販売する地元アンテナショップが誕生した。商店街を中心とした(株)TMO尼崎では「メイドインアマガサキ」をコンセプトに、ギフトセットやオリジナル商品の開発に取り組んでいる。
さらに、2006年には過去3回のコンペで選ばれた品々をまとめ「メイドイン尼崎本」として出版。地元愛の高まりか、1万5000部にまで増刷を重ねた。書店や出版関係者はご当地本としては異例のヒットだという(図8)。
若狭健作(わかさけんさく) 1977年大阪で生まれた男ながら尼崎に魅せられ、関西学院大学総合政策学部を卒業後、同研究室研究員に。超地域密着の情報誌や工場ツアー「運河クルージング」の企画をするかたわら、まちづくりコンサルタントとしても他都市で地元に愛される地域づくりを提案する。(株)地域環境計画研究所取締役、商店街事務局強化アドバイザー(中小企業基盤整備機構)、関西学院大学「地域・まち・環境総合政策研究センター」客員研究員など、履けるわらじは何足でも履く。 |