・「朋(とも)」になること…ビジターとホストが問題意識を共有する。そのために、「ガイドブック」による事前のコミュニケーションを行なう。
・「遠方」であること…異文化と出会い、自らの地域文化を確認する。違いが大きいほどお互いに興味が持てる。またホストがビジターから学ぶことは、その逆よりもはるかに大きい。
・「楽しい」こと…現場での実感や発見、知的な冒険がある。そのための道具や仕掛けを工夫し、ハプニングも柔軟に取り込む。
私たちからは、自分たちの地域を語り紹介するガイドブック(事前学習資料)を送り、その中で、
・あなたの心に残る地域の風景を教えて下さい
・心に残る風景について…「山に沈んでゆく大きな夕日、夕日が映える棚田」「空が大きく見える」「牧場」「闘牛」「錦鯉」「季節ごとの自然」
・好きな人々について…「やさしい」「挨拶をする」「家族のよう」「子どもを大切にする」「話が面白い」「お年寄りが元気」
・守り育てるには…「僕らの世代が伝統を守り抜く」「地域交流の場を増やす」「無駄な(復興)工事をしない」「地元の人が時間をかけて田んぼを直してゆく」「環境について考え、のんびり農業をしながら暮す」
震災を乗り越える中で、大人たちの中でもまれ成長したことがうかがえる。自ら考えきっちり自己表現できる中学生が日本にいることが、私たちには衝撃的な異文化体験であった。
・明治西洋建築の保存活用の手法を見て、本物の素材とその模造品の違いを触って確かめる。
・明治・大正期の町並み写真と現況を見比べる。どの方向を撮影したか?今も残っているものは何か?などを観察する。
・マンションを見ながら、景観規制がどのように町並みに反映されているかを観察する。
・祭の痕跡や緑の街角など、お気に入りの場所やその記憶を紹介する。
まち歩きのあとは、各コースが感想を発表し、地域の古老を交えて意見交換を行った。
このような出会いがあるから、私たちはまちづくり観光を続けてゆくことができるのである。
パネルディスカッション
朋(とも)遠方より来る
まちづくり観光の楽しみ
(有)ランドデザイン 中村伸之
まちづくり観光のあり様を探る
私も参加している「歩いて暮らせるまちづくり推進会議」は、修学旅行プログラムなどを実施し、地域住民が自立的、持続的に運営できるまちづくり観光のモデルを模索している。それは、「朋(とも)遠方より来る有り、亦楽しからずや」に集約されると考える。事前のコミュニケーション
07年3月に受入れたY中学校(2年生18名)は、新潟県中越地震の被災地であり、「ふるさとはどのような姿に復興を遂げたらよいか、景観と地域づくりの面から、中学生として提言してゆくために、京都のまちづくりに学ぶ」という、明快なテーマを持っていた。既にワークショップを重ね、「観光地として栄えるか、自然や文化を守るか、あるいは自然や文化を生かした観光を立ち上げるか」などと地域の将来像を話し合っていた。
・あなたが好きな地域の人々のことを教えてください
・風景や人情を、どうすれば守り育てられると思いますか?と、問いかけた。異文化との出会い
数日後、丁寧な返事をいただいた。自分たちの地域の魅力を、私たちに伝えるために、今一度地域を振り返る時間を割いてくれたのである。現場での実感や発見
当日は自己紹介とオリエンテーションの後、まち歩きを行った。
中村伸之(なかむらのぶゆき)
1958年生まれ。(有)ランドデザイン代表。技術士(都市及び地方計画)。登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。宝塚造形芸術大学講師。ニュータウンのランドスケープ計画設計、里山再生ワークショップ、商店街の街路景観設計、団地再生プロジェクトなどの実務、まちなか緑化や路地コモンズの研究を行なう。京都市都心部をフィールドにまちづくり観光の企画運営も担当する。
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