都市観光の新しい形
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

都市観光の新しい形〜「まち」を育てる

空堀:路地と長屋と現代アート

大阪産業大学 金澤成保

 

 

空堀地区とまちづくり団体の発足

 空堀地区は、上町台地の西側、古くは大阪城外堀のあった一角にあり、松屋町筋、長堀通に接して都心にも近い。幹線道路沿いは、マンションなどに建て替わってきたが、その内側は、戦災を受けなかったことから、江戸時代から受け継いできた坂道と、路地と長屋の街の風情を残していた。夜店や縁日でも賑わった商店街が東西に延び、路地のそこここには祠が祀られる、下町情緒豊かな地区であった。

 しかし、大阪市でも開発がすすむ中で、この地区は道路条件が不十分なため、建替えや住み替えができないまま長屋など多くの家屋が老朽化のまま朽ちるか、空地になるかの状況がすすんだ。地区のコミュニティも人口減と高齢化の波にさらされてきた。

 こうした中で、この界隈の魅力と環境を活かしたまちづくりをすすめるため、地元の建築家・六波羅雅一氏が中心となって、建築家、地域の会社、住民、商店街関係者などを組織し、2001年、「からほり倶楽部」を立ちあげた。

 

「からほり倶楽部」の活動

画像5401
からほり倶楽部
 
 この団体は、つぎの3点を柱として活動している。

 ・長屋を核とした美しく歴史のあるまちの保存、再生
 ・外との交流をすすめイキイキした活力あるまちづくり
 ・新しさと古さ、世代と文化の共生
 具体的には、地区の長屋を残し活用を促すため「長屋すとっくばんくねっとわーく」をつくり、広く長屋物件を紹介し地域とテナントの仲介役もつとめている。また、地区のガイドパンフレット「からほり絵図」や情報誌の発行、地域イベントへの協力等がある。さらに、この団体自身が事業主体となって長屋を再生し、テナントにリースする「萌(ほう)」、「練(れん)」、「惣(そう)」のプロジェクトがある。

 そして、ここに紹介する「からほりまちアート」は、2001年に始まり、毎年開催されている。

 

「からほりまちアート」の開催

画像5402
からほりまちアート
 
 外から人を呼び込んで商店街とまちを活性化する。その試みとして、公募に応じたアーティストの作品を、地区内に残る長屋や路地、石の階段など、まちのさまざまなスペースに展示するものである。現代アートと古くからの街並みの対比と意外な「マッチング」が魅力である。毎年秋に土日の2日間開催し、約1万人の来場者がある。2007年は10月27日、28日に開催された。

 

まちづくりのひろがり

 からほり倶楽部の活動が契機となって、地区外の専門家、アーティスト、学生、大学、ショップ経営者などと地区の商店主、家主、住民との交流が深まり、まちづくりの機運も高まりつつある。また、地区内の長屋を再生・利用するプロジェクトも、近年増えてきている。HOPE計画の地区への導入によって、長屋や町屋の再生が行政の補助金でもすすめられている。

(写真出典:http://karahori-machi-art.com/index.html)。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ