都市観光の新しい形
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都市観光の新しい形〜「まち」を訪ねる

もうひとつの旅クラブ

まち案内人のコミュニティづくり

環境開発研究所 岸田文夫

 

 

「旅のカードブック」による魅力発掘

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旅カードを綴って作る「旅のカードブック」
 
 もうひとつの旅クラブ(以下、旅クラブと省略)は大阪の文化や歴史の価値を旅人の視線で見つめなおし、まちに学び、都市を楽しむ「観光化されていない旅=もうひとつの旅」を提案し、実践することで、まちづくりに貢献することを目的としているNPO法人である。

 この旅クラブが自主制作している魅力情報の発信ツールが「旅のカードブック」である。それぞれの旅カードは、旅クラブのメンバーが自ら見つけ出したスポットを取材・編集し、1枚のカードにまとめたものだ。ポストカードとしても使えるし、ストックしていくと本になるようにデザインされている。季節や気分に合わせてお気に入りの旅カードを選び綴ると、自分ならではの大阪ガイドブックにすることができる。

 旅カードは現在20枚。東大阪で実際にものづくりの現場が見学できる鋳物工場、上町台地をのんびり散策してもらいたくて始めた貸自転車店、見学もできるなにわ伝統野菜の手づくり飴工場など、人々の日常の営みが感じられる場所や人を“とっておきの大阪”として紹介し、訪れた人が旅人気分で“まちを実体験”できることをねらいとしている。

 

「旅の夜店」で発信するも…

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天神祭に露店を出店し、旅カードを展示・販売 「大阪まち遊学」のまち歩きマップ(部分)
 
 旅のカードブックは新聞やテレビで紹介されたこともあって若干売れたが、多くはNPOが主催するイベント等の参加者への販売が中心であった。そこで、もっと一般への周知を高めようと天神祭に露店を出してみた。

 2004年、2005年の2回、天満天神繁昌亭の建設予定地の向かい側にNPOの手づくりによる夜店を出し、参拝者に旅カードをアピールした。立ち止まってじっくりと1枚1枚を見てくれる人もちらほら。年配の人だけでなく、最近大阪に引越してきた人なども興味を持ってくれたが、購入する人は限られる。そこに情報があっても、それだけでは活用されにくいことを思い知った。

 

まち歩きと連携することに可能性を探る

 このツールをもっと活用して魅力を発信していくためには、旅カードという実体ある“もの”に加えて、案内する“ひと”がいることで大きな効果が期待できる。

 そんな想いから旅クラブでは、「大阪まち遊学」と銘打って、まち歩きと連携した魅力発信を模索している。

 メンバーが地元の人と協力して案内人を担い、第一弾として「台地のてっぺん・法円坂」「長屋と路地の迷宮・野田」「水に浮かぶ最後の楽園・大正」の3つのコースを設定した。案内人は自らが発掘した魅力を旅カードにしながら、次なる案内人を増やし交流していく。この連鎖によって案内人と旅カードを増やしながら、コース設定のバラエティもどんどん膨らませていく計画だ。遠い道のりだが、挑戦はすでに始められている。

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