都市観光の新しい形〜「まち」をデザインする
夕陽丘地域をアーバン・ツーリズムの拠点に
大阪芸術大学 田端修
人形芝居フェス案内図(同運営委HPによる) |
「上町台地マイルドHOPEゾーン協議会」は、在来の大阪市HOPEゾーン事業を合わせて、都市居住のリーディング・ゾーンとして、また魅力的な地域として育成するまちづくり運動であり、地元のさまざまな活動組織をはじめ34団体(平成18年度)メンバーとして活動している。この地域では、既にそれぞれの関心にそってまちづくりが進められているということである。
坂道や眺望点など、上町台地は大阪市内では珍しく地形変化を楽しめる場所であるが、なかでも延長2キロ近くの樹林帯が南北方向に連なっている「夕陽丘」は貴重である。たとえば、千日前通りから南に向かう「下寺町」を歩きつつ台地側を見ると、急傾斜の西側斜面に立ち上がる緑地は、連続する社寺群の土塀や手ごろな大きさの本堂や山門などと一体となり、壮感ともいうべき歴史的緑地景観をつくり上げているのがわかる。
先記の協議会にはこの地域の社寺−銀山寺・一心寺・四天王寺・大蓮院(應天院)・生国魂神社など−が名を連ねている。また「なにわ人形芝居フェスティバル運営委員会」もメンバーである。人形芝居フェスティバルは、平成8年以来の毎春に開催されているが、たとえば平成18年の第10回フェスは、会場案内図にみるように下寺町一帯の寺院をあげて行われており、各地の人形劇団や学校の人形劇サークルなどプロ・アマチュアの15劇団が境内や本堂などを利用し、また「アニメーション会場」「催事会場」などとして多くの施設が活用された。
夕陽丘地域がこれから取り組むべき課題は、先述の斜面緑地を守り、また地域の歴史・文化資源を活用していくための具体のまちづくりを一層進展させるということであろう。標高差12〜18メートル内外に達する斜面緑地については、こんご地域景観としての連続的樹木群のまとまりを維持管理していく方策を定めねばならない。また、寺社境内地や一般市街地に点在する資源を活用し、地域全体として散策・町歩きを楽しめるゾーン形成−アーバン・ツーリズムの拠点化−を進めたい。豊かな歴史文化的ストックの利用性を高めることは、地域に課せられた責任であるともいえよう。
このような、ソフトからハードへとまちづくりの方向を広げる必要に対応するうえで、社寺群がまちづくり構想・イメージを共有化する中核となりうるのではないか。これまでの経験を振り返り、そんな期待を抱く。とりわけ社寺群の後背斜面緑地の維持という課題に応じるには、当事者たる社寺群の参画なしにはすまない。
わたしは、ここにいうまちづくり構想につながることを期待し、1997年の『茶臼山・夕陽丘プロムナード構想』の一メンバーとして、また2007年には『大阪夕陽丘・木の都提案展』(11月25日〜12月12日、一心寺南会所)などに、高口恭行さん(現在、一心寺長老)の誘いを受けて参加している。