京都の景観はよくなるか!?
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新景観政策とJUDI関西の取り組み

 

●新景観政策の概要と市民の反応

 まず私からは、このフォーラムに向けて2月からいろいろと議論してきたフォーラム委員会の経緯を報告します。午前中にもお話が出ていたかと思いますが、景観法が施行された後、京都市は2006年12月1日付けの「都市計画ニュース」を全戸に配布して、新しい景観への取り組みを知らせました。普通の市民はその新聞を見て、初めて京都市の新しい景観計画のことを知りました。それで、これから建てようと思っている自分の家はどうなるんだろうと心配し始めたのです。

 そこには3つの施策があげられていました。

 一つは「高さの見直し」です。45m高度地区が廃止されて、中心部の高度規制が31mから20mになりました。

 二つ目は、従来も景観指導を行っていた美観地区ふくめ、景観地区を設けました。

 まず従来の美観地区が景観法でいう景観地区とされ、かつ拡大されました。そして新たに美観形成地区も設けられ、これも景観地区として位置づけられました。今まで制限が掛かってなかった所にも、形態意匠の制限がかかるようになったということです。この景観地区は従来の美観地区1956haを3431haと大幅に拡大されています。

 また従来から美観地区には形態意匠の制限があったのですが、戸建住宅などはチェックされていませんでした。それが今度は全ての対象が認定の対象となりました。

 さらに京都市は、それまでもしっかり指導してきた風致地区を少し拡大しました(1万7831→1万7938ha)。

 三つ目は、市民にも分かりやすい施策で、屋外広告物についての規制の強化です。今日はよその自治体からやってこられた方も大勢いらっしゃると思いますが、この規制の中の屋上看板の全面禁止なんてうらやましいと思われたことでしょう。京都だからできることかもしれません。また、高さと大きさ、色彩についても規制が強化されました。いろんなところで私は景観指導をさせていただいたことがありますが、業者さんはたいてい大きいのを持ってこられて「ここは京都じゃないから大丈夫だろう」なんておっしゃいます。京都はそれまでもかなり厳しくやっておられましたが、今回はさらに厳しくなったのです。

 以上の大きな三つの柱で景観計画をスタートさせると京都市は決心したのですが、都市計画ニュースを見た市民はどう思ったか。年末までの1ヶ月間で、576通1410件のパブリックコメントが京都市に寄せられました。その後、2007年2月から3月にかけて都市計画案の縦覧にかけられ、そこでは9424通1万8102名からの意見が寄せられました。これはすごい反響だったと思います。もちろん、反対意見だけでなく、これはこうした方がいいという意見もあったと思います。

 同時期、京都新聞が世論調査を行ない、2007年2月15日付の朝刊で「規制強化賛成8割強」と報じました。これがその後の動きに影響を及ぼしたと思います。高さ規制や屋外広告物への規制に賛成ということが大きかったようですが、とにかく今回出された景観政策は8割の市民が賛成してるということで、これを受けて市の政策はスタートしました。


●JUDIの取り組み

 私たちJUDIでも
意見書を出しました。並行して緊急討論会「京都新景観政策を考える」を行ないました。

 この討論の中で、高さ規制については「やはり京都はこういう規制があった方がいい」ということで大方の意見はまとまりました。ただデザイン基準については、こんな風にきちっとした数値を示すのはいかがなものかという意見や、ひとつの基準にあてはまらない所はいくらでもあると、いろんな意見が相次ぎました。

 そこで、今回の景観政策を市側が「進化する景観政策」と呼び、デザイン基準についても「進化するデザイン基準」と打ち出していることから、JUDI関西もその進化に期待することにしました。つまり、現時点では完璧ではないけれど、みんなで考えて進化させてくださいという市の意向を受け、我われJUDI関西も市の提案を受け入れたという次第です。

 それから約1年後の今年1月の総会で、毎年行っている秋のフォーラムで、このテーマを取り上げようということになりました。そこで今年の2月から、フォーラム委員会では、「昨年9月にスタートした景観政策について我われは専門家としてどう考えればいいか」という話し合いが持たれました。また、市の意見はもちろんですが、事業者やメーカーからもちゃんと意見を聞いていくことが大事だ、そして、できれば普通の市民の意見も聞きたいということで、いろいろ勉強会を重ねて参りました。

 5月の10、11日には、このまちづくりセンターで合宿も行いました。この合宿では資料(小冊子)にも報告しておりますように、5地区に分かれてフィールドワーク(実際の町歩き)を行いながら、高さ規制やデザイン基準を自分の感覚でとらえようとしました。7月6日には、そのフィールドワークの結果を持ち寄って、中間報告会を行なっています。

 (資料は資料前半資料後半よりダウンロードください)。

 その一方、それ以外の勉強会も行いました。JUDIメンバーでもある山崎正史さんによる「京都:景観形成の伝統」や、建築家の山本良介さんによる「京都−建築と町並みの遺伝子」などのセミナーを開催致しました。8月6日には、プレフォーラムとして「京都の景観政策・理念と運用システムを問う」と題して徹底討論をいたしました。

 この経過はお配りしている資料にまとめております。また、こういった経過をうけて、今日の午前中にはフィールドワークを担当したJUDIメンバーによる議論を行いました。

 これらを通しても結論は出なかったのですが、みなさんからいろんな意見が寄せられたことで問題点が浮かび上がってきました。そこで、ここで4つの論点にまとめることにします。

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