京都の景観はよくなるか!?
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7。地域密着中小工務店との京都の家づくり提案

パナソニック電工株式会社 須浪恵寛

 

●工務店さんの家づくりをお手伝いする立場から

 私は18年間ずっと営業畑で仕事をしてきました。私たちの会社は、工務店さん、材木屋さん、建材屋さんがお仕事の相手です。ずっとそういう方々の家造りのお手伝いをしてきました。

 私が2年前に京都に来てお客さん回りをしていたときに、「来年から建築基準法が厳しくなるし、京都市では景観条例が新しく出来るから、私たちこれから大変なんです」という声を多数聞きました。地域それぞれに家の特徴があったり、工務店さんの気質もいろいろだったりしますが、国として法律の厳格化、京都市の新しい景観政策の話をいろんなところから聞いて、よく分からない言葉だらけで戸惑ったことがございます。

 私どもパナソニック電工は、主に新建材や設備関係を扱っている会社でして、どちらかというと家の中の商品が中心です。しかし、お客様である工務店さんをしっかりお手伝いしようと思ったら、家の外、つまり外観や景観についてしっかり準備しておかないとお客様の期待に応えられないだろうと考えたことから、これからの京都に合う家づくりの提案を考えるに至りました。まだ、やっている過程であり、まだまだ不十分なところはございますが、これから私どもの提案を聞いて頂きたいと思います。


●工務店さんを取り巻く状況

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パナソニック電工と住建設材事業
 
 私どもの仕事についてですが、先ほど主に新建材や設備関係と申し上げましたが、これはパナソニック電工の売り上げの約3割ぐらいを占めています。目立つ仕事ではございませんが、家の中の商品としては、主力の商品です。

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2007年京都市住宅着工戸数検証・京都新聞2008年2月21日朝刊より
 
 先ほどゼロ・コーポレーションさんから新景観政策以来、住宅着工件数が低迷しているとの話がございましたが、我われの仕事もまったく同じような状況になっています。1年間通してみると15%ほど減りました。私どもの主力である戸建ては4300戸になり、地元の工務店さんが大変だという記事は、つい最近の京都新聞でも報じられていました。

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持ち家の供給主体/住宅着工戸数1万3527戸、H19年
 
 京都市内の着工件数1万3000戸のうち、注文住宅・持ち家は2200戸、一戸建て全体では4100戸となっています。持ち家の一戸建てを誰が建てているかと言うと、全国大手のハウスメーカーさんがだいたい26%と全体の4分の1ぐらい、大手のビルダーさんが10%ほど、あとの65%は地域密着型の工務店さんです。

 こういう地元の工務店さんが年間で手がけるのは、だいたい10棟前後。ということは、法律が厳格になっていろんな書類が必要になったり、審査に時間がかかったりして仕事が今以上に煩雑になる、おまけにデザイン基準についていろんな知識を持たないとアカンと危機感を持っていらっしゃる方がかなりの多数を占めているということです。

 私どもは小回りのしにくいメーカーではございましたが、このあたりはしっかりと理解をして、我われが家を建てるわけじゃないけれど、家を建てる準備を住宅の部材を通してお伝えする必要があるなと改めて思った次第です。

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行政動向、法整備の動き
 
 法律の厳格化は作る側にとっては大変ですが、家を建てられるユーザー様にとってはいいお話です。従来と比べると建築確認が厳格化されて、来年は瑕疵保険の供託の義務化が始まり、請け負って家を建てる側はいろいろと準備が必要になってくるのです。


●新景観政策に積極的に対応するために

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パッケージ製品の三本の柱
 
 我われがまず考えたのは、基準法の厳格化や新景観政策のデザイン基準に配慮した部材はどういうものがあるかということです。私どもが持っている耐震住宅工法で「テクノストラクチャー」というのがございます。そこで、この工法を組み合わせることで3階住宅でも確認が取りやすくなるということと同時に、環境に配慮した住宅というものを、工務店さんのたたき台となるパッケージプランとして進めることにしました。

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外部デザインの検討
 
 こうした研究を一緒にやっております会社がクボタ松下電工でして、ここと一緒にいろんな打ち合わせを3ヶ月ほど繰り返しました。クボタ松下電工は、瓦、外装材、雨樋を担当している会社ですが、ここでいろんな住宅のパターンを考えました。つまり、工務店さんが「こういうパーツを組み合わせたら、こういう家になりますよ」というたたき台として使ってもらえるようにしようということから始めました。

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新景観政策に配慮した「建材の仕様」の組み合わせ
 
 どういう風にしたかというと、まず間取りプランを考えてからそれに合う外装や瓦の組合せというように、実際に伝えやすいように工夫しました。実際にはこういうことは、京都市さんにお伺いをたてるべきデザイン基準の分野の話になるのですが、その第一歩がスムーズに踏み出せるような準備をしてみました。

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新景観政策に配慮した「外観コーディネートプラン」
 
 住宅パターンは3パターン考えました。

 写真は3つのパターンを組み合わせた住宅のモデルのパーツ図です。もちろん3パターン以外にいくらでも出来るのですが、たたき台としては分かりやすいのが一番だろうと考えてこういう形にしました。

 このようなファサードのパターンとか、外装の組合せならこういうことが出来ますよというものを作ってみました。

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地元住建材商社とのタイアップ
 
 そしてこれをしっかり根付かせるためには、やはり地元で中心になっておられる問屋さん、材木屋さん、建材屋さんと組むことが大事ですから、それらの方々とタイアップいたしました。そして、我われの部材は京都の新景観政策に配慮しているということも京都市さんから評価していただき、「木造住宅の仕様開発」というタイトルで新聞にも取り上げていただきました。


●エアコン配管への提案

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 ところで、最後になりましたが、我われの社名についてご説明しておきます。今年の10月1日から、我われの社名はナショナルからパナソニックに変わりました。どうぞよろしくお願いいたします。今後とも、地域に合った住まいの技術と素材の提案を進めてまいりたいと思います。

 部材を作っている者として、最後にこんな話題を提供して終わります。これは、エアコンの配管です。普通、リフォームでしたら壁に穴を開けてそこから外にダクトを出さないといけないのですが、新築でしたら「隠蔽配管」といってダクトを中に埋め込んで外から見えないようにすることができるんです。

 しかし、私どもも営業不足で、しっかり工務店さんに伝えることができていませんでした。こういうことも、今後はエアコンを販売するときに代理店さんから話していただけるようにしたい。こういう小さな営業努力も、町並みや景観に配慮した営業スタイルになるんじゃないかと考えています。

 来年度からは、京都のエアコンはこういうスタイルで売っていきたいと考えておりますので、またよろしくお願いいたします。

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