実は私、奈良に長く住んでおりました。奈良では京都ほど景観の話は出なかったのですが、私がいた頃は数寄屋が人気がありまして、積水ハウスも和風の数寄屋タイプがけっこう出ていました。京都でも同じように展開しようと思ったのですが、ほとんどそのニーズがないんです。私が意識していた京都らしさや京都の町並みを要求されるお客様がほとんどおられないことに、違和感を覚えびっくり致しました。それもありまして、今日のテーマに興味があり、参加した次第です。
みなさまがご存知のように積水ハウスは住宅メーカーですから、メーカーがこういう風に景観を語ることは本当は疑問視をしております。みなさまの中にもそういうご意見はあろうかと思います。どちらかというと、メーカーは専門家のみなさまから景観や環境をつぶす存在だとよく言われておりましたが、その中でも積水ハウスとしてはまちづくりをやっていきたいということで、景観に対する対策はいろいろとやっております。
もちろん我われは住宅メーカーですから、その目的は長きにわたって価値が持てる住宅を作ること、それをお客様に提案し、提供していくことです。そして、それらの家で出来た町を長く守っていくというのが本来の趣旨なのですが、なかなか理想通りにいかないのが現実です。ですから、今回の京都のプロトタイプを見て頂いて、私たちのまちづくりに対する思いを理解頂けたらと思います。 6。千年の京の歴史を継ぐために、
工業化住宅の枠を広げる〜京都景観条例モデル積水ハウス株式会社京都支店 小松洋一
●住宅メーカーの立場
今日は、積水ハウスとして京都らしさとは何かを追求したプロトタイプを作りましたので、それを中心にお話を進めていきたいと思います。
そして、ここで重視したのが景観を意識しての庇や軒のラインを合わすことでした。実を言うと、住宅メーカーはこの水平ラインはあまり綺麗に出すことができません。防水のことも考えないといけないため樋も大きくて、醜い箇所もございますが、それをいかに綺麗に見せるかをテーマにいたしました。
左:1号地、右:2号地 |
また、パーツを考えただけでなく、我われがもうひとつ取り組んだのは、京都在住のいろいろな建築関係の先生とのコラボレーションです。先生方と一緒に京都らしさを追求していきました。門のデザインは吉村篤一先生、庭は迎賓館を担当されました造園の井上剛宏先生にお願いしました。やはり、こうしたアプローチを作り上げたことで、我われ住宅メーカーのデザイン性の良くない部分がかなりカバーされたのではないかと考えています。ここらへんがこれからのテーマになっていきそうです。
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ただ、現実には門には防火上のいろんな問題もございます。これからは景観と防火の両方に対応できる部材を開発していくことも、我われの課題だと思っています。これは大切な問題だと思いますので、今後も行政の方と協議していきたいところです。
今は、洛北で50戸の分譲地を担当していますが、そこでも和風の展開もしています。しかし、正直言って、我われの取り組みはまだまだ役所のデザイン基準にしたがっているだけという状況でして、それが綺麗かどうかというテーマは課題として考えていかねばなりません。
よく住宅メーカーがやってしまうのは総二階の建物に庇をつける事で、これで見た目が悪くなって、景観をつぶしてしまうことが現状としてまだまだあります。ですから、できるだけ格子や軒先のデザインに工夫して、今後も見た目の綺麗さを追求していくことが我われの急務かなと思っています。
それと、外観だけでなく、ソフトの面でも四季を取り入れた家、京都らしい光と陰を感じられる中庭などといった点でも取り組んで、外観およびソフト面すべてを景観として考える方向性を今後も持っていきたいと考えています。
また、国、行政に対してもメーカーとして出来ることをやっていきたいとも考えています。これは、中小の工務店さんには難しいところもあるでしょうから、大手メーカーである我われの使命でもあると思っています。住民のみなさまへも我われメーカーの方からどんどん情報発信することも、我われの大事なこれからの仕事になっていくだろうと思っております。
●これからの課題
現在、京都で我われが建てている住宅は、年間約200戸です。ただ、京都の伝統的な街並みに調和するような外観はあまり売れず、洋風の外観の方がお客様に人気がある状況です。
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