満員電車に揉まれながら、 こう考えた。智に働けば「都心の住い」、 情に桿させば「田舎の住い」。
兎角に人の世は住みにくい。
東京都心4区の居住人口密度は93.2人/ha。
ニューヨークやパリの半分以下しかない。
その一方、 郊外部も含めた都市圏の居住人口密度は東京23.6人/haで、 ニューヨークやパリの3〜4倍もある(平成8年版『建設白書』による)。
東京では住宅地が、 都心から郊外まで大差ない密度でのらりくらりと続いている様が、 数字からも読み取れる。
昨今我国でも、 ようやく本気で注目されようとしている「コンパクトシティ」「成長管理」の都市計画の、 完全に逆の方向に向かって我々は都市をつくってきた。
この方向に向かって走り続ける限り、 我々は永久に薄汚ない、 ごみのような市街地と田園の切れ端を放り散らし続けるだろう。
ということは十分に分かりながら、 これはとても個人の生き方で流れを変えられるようなやわな問題じゃない。
とりあえずは自分もやっぱり郊外の庭付一戸建に住んで、 それからゆっくり考えようか、 と思ってくれているのかどうか。
満員の長距離通勤電車、 文化不毛のコミュニティ。
そのハンディキャップをものともせずに、 やっぱり都心よりも郊外居住を選択するのは、 これはもう日本人の本能が見えているとしか思えない。
分かっちゃいるけど止められない。
日本人の性がつくる、 とりとめのない貧相な住宅市街地だけど、 人の好みにケチをつけるのは大人気ないので、 誰もこれには口を出せない。