連鎖するデザイン―ハウジング・デザイン
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町家に住み続ける

金沢工業大学 水野 一郎

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町家を超える都心居住のシステムを、 現代の我々は創り得ていないので、 町家に住み続けることを薦めている。

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画像t146-1 道路に向かって家を開く。

屋根型式をおおまかに決めながら階高や壁面線やファサード処理に自由度を持たせる(金沢市)

画像t146-2 中庭は採光、 通風、 鑑賞、 雪降ろし場などさまざまに機能的でありながら町家の中心空間足り得る美しさがある(金沢市)
画像t146-3 町家型式は地域により差がある。

雪国では屋根型式や雁木、 コミセなどのルールを持った除雪コミュニティーを築く(上越市)

 日本の伝統的都心住居である町家は、 ハード・ソフト両面のルールと工夫を内包させることで長い間生き続けてきた。

高密化の要請に、 狭い間口、 深い奥行きという短冊状の敷地に一定型式の家屋を建てて対応、 そこから生ずる生活上の不利を通り庭、 中庭、 ミセノマ、 吹き抜け、 天頂光など、 平面や断面でのさまざまな知恵で克服してきた。

更に格子、 すだれ、 障子などによるプライバシーと採光・通風の両立、 うだつや袖壁による延焼防止、 防火の夜廻りや水打ち、 夕涼み床机コミュニティーへの営みなどを存在させ、 居心地良さを高めてきた。

   

 その町家も物理的に耐用年限に達した上に、 社会的にも家族内プライバシーや住宅設備、 クルマなどの新たな改変要求があって、 建て替え時期となるのだが、 これが難しい。

都心ゆえに防火或いは準防火の規制がかかって、 木造の町家の継続はもともと拒否されている。

RC造でいこうにも両隣とのルールが成立していないので工事や壁の扱いがうまくいかない。

マンションは全体の枠にはめこまれた秩序が強く、 地域コミュニティーとはつながりが弱く、 郊外と同一であり、 都心居住の型式としては現段階では成熟していない。

   

 自分の土地に自分に合わせながら、 しかも周囲と共通のルールとコミュニティーを続ける町家にはやはり魅力がある。

そこで、 町家を改装の範囲で少しずついじり、 だましだまししながらの住み続けを推奨することになる。

   

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