阪神・淡路大震災で、 大きな被害の原因として上げられる木賃地区は、 本当に都心の環境劣化地区であったのだろうか。
家主と店子の問題ですんなりと建替えられない中、 個別に小改善を繰り返し、 木賃住宅はますます建替え難くなっていくのだろう(豊中市庄内) | |
住み手の努力で緑豊かに管理も行き届く個人所有の路地。 だが社会資産としては組み込まれない(豊中市庄内) | |
緑道が整備されただけで、 ニュータウンとも見まがうばかりの便利で豊かな居住地となっている(豊中市庄内) |
この問題意識を頭の片隅に置いて、 あらためていわゆる木賃地区を歩いている。
木賃地区には地区ごとの個別の歴史と背景があり、 同じ基準で論じることはできない。
木賃地区の中には、 けっこう住み良く楽しいまちもある。
ただ、 建築基準法上の担保された空間はたしかにない。
緑豊かに形成された路地が、 居住者たちにより立派に管理されているところも多いが、 公共用地でない路地は未舗装の、 なつかしい砂利道であったりする。
この路地を観ていて、 震災後の応急仮設の居住者から「砂利道が歩きにくいから舗装をしてほしい」という要求が出されたのを思いだした。
もう一点、 建物が構造的に持つものかどうかは大いに議論があることだろう。
しかし、 古い木賃はあきらかに建替わりつつある。
プレファブや鉄骨の低層共同住宅にはエアコンもついて快適な生活がいとなまれているのであろう。
こういった建替えが、 迅速かつ円滑に進む手だてと、 建替えても地区の個性が継承され、 街の魅力が保全されることを考えながら手軽な都心居住を温存させたいものだ。