手のひらに載る都 by 佐々木幹郎
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第二の都、 ツァラン

中心をなすゴンパとその壁画

画像sa15  どんどん山の上へ登ってきました(図15)。

これで標高3500m。

馬に乗りだして三日目。

ムスタン王国の第二の都、 ツァランという町が崖の上に作られています。

われわれはこれからこの崖を登って、 あのツァランの町まで行きます。

画像sa16  近づいてみますと、 やっぱりこの町もゴンパを中心に作られています(図16)。

三色に着色されていますのでサキャ派です。

このゴンパの内部の壁画は見事なものでした。

チベット本国でもなかなか見当たらないすぐれた絵師が、 13世紀に描いたものと考えられます。

 チベットの壁画や曼陀羅絵は、 タンカ(仏画)も含め、 1966年から1977年までの文化大革命によって、 ほとんどが破壊されました。

壁画にはコールタールが塗られ、 今きれいな形で残っているのは全部新しく修復されたものです。

画像sa17  ですからチベットへ行きましてもわたしたちは昔のままの壁画にはなかなか出会うことはできません。

しかしこのムスタン王国は中国領土ではありませんでしたから、 古い優れた曼陀羅が残っているのです。

 この可愛らしい色彩で作られたゴンパを中心にツァランの町が作られています(図17)。

かつての土の王宮

 ツァランのゴンパの横に初代のムスタン王アメ・パルが作った王宮が残っておりました(図18)。

ビル様式の建築ですが、 これはコンクリートではなく土で作られています。

現在は廃虚同然になっています。

画像sa18 画像sa19  この王宮の中に入りました(図19)。

王宮の中にも寺院があり、 寺院の一角に昔の戦争の時に使った刀がつり下げられていました。

儀礼のときに使うラッパがあります。

刀の上のところには人間の右手首が斬られてミイラとなって吊り下げられています。

 昔この王宮に盗賊が入ってきまして、 そいつを捕まえても、 殺しはしないんですね。

盗みとかタブーを犯した人間は右手を斬るということです。

そしてそれはずっと永遠にさらしておくということです。

氷河からの水の溜め池

画像sa20  その王宮の上からこのツァランという第二の町をみました(図20)。

 まず池があります。

この水ですが、 ここでは井戸を掘っても水は出ません。

山の上の方の氷河からビニールパイプで自然に落下する水道を作っているのです。

それが村の真ん中の広場にあり、 そこからいつも水が出ております。

その排水が溜まる場所を池にしている、 ということです。

 池のほとりを子供が走っている姿が見えますでしょうか。

夕日に照らされて子供が駆けている風景を見てますと、 本当に、 何というか、 どこのどういう所でもこういう風景はいいですね。

非常に穏やかな気分になります。

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都市環境デザイン会議関西ブロック


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