手のひらに載る都 by 佐々木幹郎
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ローマンタン王宮

城郭の門からローマンタン王宮へ

 この城郭は都市に門が一つしかありません。

これが門です(図23)

画像sa23 画像sa24 画像sa25 

 門は夜閉められます。

誰も入ってこれないようにします。

昼の間だけ開いてる。

ここを通るときには馬から降りなくてはいけません(図24)。

ムスタンの女性たちがたくさんいますね。

中に入っていきますと、 王宮の前の広場です(図25)。

一週間に一度バザールが開かれます。

袋の中に入っているのはチベットの岩塩です。

岩塩と、 米との交換及び売買をしております。

画像sa26 画像sa27  これが王宮です(図26)。

3階建てです。

建物そのものが作られたのは15世紀の半ばです。

見えるでしょうか、 ちょっと暗い2階のところに変なものが顔を覗かせております。

これは王宮のシンボルです。

ちょっと拡大してみます。

犬です(図27)。

画像sa28  ものすごい獰猛な顔をした土佐犬みたいに大きな犬ですね。

彼が王宮を守っています。

見事な首輪をしていますが、 まあムスタン王国で出会った一番獰猛な犬でした。

この王宮の階段を犬に吠えられながら上がっていきますと、 これが2階ですね(図28)。

山岳地帯の階段の勾配

 私はヒマラヤ山岳部の村やチベットを十年くらい行ったり来たりしていますが、 いつも感じることは、 階段というものは一体何だろうかということです。

 つまり、 文明国へ行けば行くほど階段の勾配が緩やかになる。

後進国に行けば行くほど階段の勾配がどんどんきつくなるのです。

 チベット、 ネパール、 このローマンタンの王宮でもそうです。

ほとんど45度以上の角度で立ち上がっています。

階段は、 楽に人間が上り降りする場所だという発想を、 特にこんな山岳地帯だからこそ大事にしなくちゃいけないと思うのですが、 そういうことは一切考えられていない。

ただ立て掛けたらいいというだけの発想で木の階段があります。

 このような急な勾配であることの理由の一つは、 いつ敵や動物に襲われるかもしれないということがあるのでしょう。

いつでも階段を取り外すことができる。

そうするとなかなか上へ上がってこれない。

そういうこともあるんだろうと思います。

この王宮の階段も、 標高3800mですから、 息を切らせながらしか上がれませんでした。

代々の番犬の剥製

 王宮の2階に広場があります。

写真の左の所にちょっと何か妙なものが吊り下がっているのですが、 これは犬の剥製です。

代々の王宮を守ってきた犬をこうやって剥製にしているのです。

 何のために吊すかといいますと、 さっきの犬を鼓舞するために、 ちゃんと働かなかったらこうなるぞっていうふうに納得させるために、 いつも吊しているらしいんです。

ほんとにその気になるのかどうかわかりませんが、 ともかくそういうふうに説明されました。

画像sa29  この王宮の中にも寺院がありました(図29)。

王様専属の僧侶達が、 日々読経しています。

ムスタン国王夫妻

画像sa30  ムスタン国王です(図30)。

ジグメ・パルバル・ビスタ国王といいます。

現在64歳。

左側がお妃様です。

お妃はチベットのシガツェの貴族の家の出身です。

1997年の4月にはこのお2人を私が属しているネパールムスタン地域開発協力会(MDSA)というボランティアグループが日本にお招きします。

 MDSAはムスタン地方に病院と学校、 農場を建設する、 というボランティア活動をやり続けているグループです。

お二人は2週間滞在しまして、 東京と新潟と大阪を訪問します。

 これはムスタン国王の代々の居室ですけれども、 後ろの一番大事なところに飾ってあるのはダライラマの写真ですね。

ネパールの国王夫妻の写真も飾ってあります。

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