都心居住をめぐって by 鳴海邦碩
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都心と居住

都市の成長と機能変化

 このように都心はいろんな捉え方ができるわけですが、 次に都心と居住とをどうやって考えていったらいいかということをお話しします。

 都心居住をなぜ話題にしなければいけないかというのは、 (都心を)サラリーマン都市に取り囲まれた、 仕事と住まうことが同じ場所にあることが当たり前だった時代に造られた部分というふうに考えると良く分かります。

そういう地域は都市がどんどん成長することによって、 つまり都市が拡大したり都市の機能が変化していくことによって機能的に合わなくなるということがあります。

 わかりやすく言いますと200年前に町の中心であった大阪の船場、 島之内などは、 大阪圏、 この1000万都市圏の都心でもあります。

そうすると200年前の状態では機能的に合わない、 というのは誰でも想像がつきますね。

新しい場所で新しい機能をという考え方

 ギリシャのドキシアデスはダイナポリスと呼ばれる概念を主張しました。

都市は50年、 100年と経つとどんどん機能が変わっていきますから、 都心的地域が少しずつ移っていくほうがいいのではないかということを今から30年ほど前に提案しました。

 確かに200年ほど前にできた都心は、 例えば100年経ったら機能が果たせないかもしれません。

少しずつ都心が動いていくのがいいのではないかという提案がされたわけですが、 実際にそういうふうになった都市は日本ではまだありません。

 ヨーロッパの都市ではそれが比較的うまくいったと思います。

さっき言ったチェントロチッタは歴史的な中心ですが、 新しい別の業務的な都心ができています。

ですからヨーロッパの都市は比較的ドキシアデス流に動いている。

例えば300年前の都心がずれて別の場所が現代の都市機能を補完するために活躍している、 という捉えかたができると思います。

古い場所での新しい機能との混在

 例えば何百年も前にできて、 明治まで、 あるいは戦前もそこに人がたくさん住んで働いていた、 そういう地域が1千万都市圏の都心となり、 他の機能がいろいろと入ってきたときにどうなるか。

居住なんか別の機能に変えてしまった方がいいという圧力が押し寄せてくるのは当然のことです。

そういう歴史的な過程としてその地区を捉えるのか、 あるいはそうではないのかという問題が非常に大きな課題として出てくると思います。

 これについてヨーロッパの大きな都市は、 古い歴史的な地区はできるだけそのまま残しながら新しい所で新しい機能を達成していくという方法をとったのですが、 日本の都市はどの都市もそのような方向を取っていないのです。

ですから古い地区に新しい機能が入ってくる、 そういうせめぎあいをどの都市もやっているわけです。

だから人口が減るのは当然というわけです。

居住空間をどう確保するか

 もう一つ逆の見方をすると、 そこにはたくさんの人が住んでいるわけです。

「都市が大きくなったからお前ら出て行け」と言われて、 「はいそうですか」と出ていく人はほとんどいないわけです。

そこにはいろいろな、 そこに住んできた空間の構造があるわけです。

オフィスビルが入ってきても住もうと思えば住める構造がそこにあります。

それを使ってそこに住んでいきたいと思う人がたくさんいる可能性もあるわけです。

簡単には出て行かないということがあると思います。

 ですから都心居住を考えていく時の非常に大きな観点の一つに、 歴史性に対して私たちはどういうふうに居住空間の移転なり、 確保なりを考えることができるかという課題が存在しています。

ニュータウンを造るのとは違って、 何百年もそこでその役割を果たしてきた土地が21世紀にどうなるのかということを考えなければならないし、 それには、 歴史の中での地区のあり方について答えを出すということだと思います。

 それが私の問題提起の一つでして、 そういった観点からも論じていただければと思います。

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都市環境デザイン会議関西ブロック


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