オープンスペースの所有と管理
基町団地の場合コモンガーデンの獲得
翻りまして日本の都心オープンスペースはどうなのか(図12)。
自動車時代が生み出した近代都市が発達し、 川の上にも道路が走っています。
一方できるだけ効率的に土地を活用するということも求められています。
図13は先日火事がありました広島の基町の団地です。
できた当時華々しく喧伝されたのですが、 先ほど佐藤さんのお話しの中にもあった緑に沿って住宅が並ぶというパターンでつくられたものです。
まん中にインナーガーデンがあります。
これも管理された空間ですが現在ほとんど使われていません。
この中で、 住んでおられる方々が何とかして大地を手に入れたいということでやっておられるのが屋上ガーデンです(図14)。 これは元々設計上計算されていたことで、 屋上が「緑の尾根」のように続いています。 このように、 大地から閉め出されるという都心の状況の中でできるだけ積極的にそういうサブシステムをつくっていこうという努力が、 近代都市の中でも後期には発達していきました。 まあ計算通りいかないもので、 様々な水の設備とかは後で持ち寄ってきたものです。 コモンガーデンというものは、 このようにして徐々に形成されるものだということがよく分かります(図15、 16)。
トラブルから管理へ
ところがその後十年たちますと、 屋上に上がっていく人を管理しなくてはならないということで、 老人会が「自分たち以外の人は入ってもらったら困る」という制限をしないと管理できなくなりました(図17)。
オープンスペースが一般に開放されるという理論の実現が、 都市の中ではいかに難しいかということ。
もちろんこの十年間の間に、 作ったトマトを屋上から落としたり、 石を投げたり、 学生がマリファナを飲んだりといった事件が発生し、 結果としてこういうことになったと思いますが、 こういうオープンスペースまでが敷地内部で閉じられている、 所有と管理の具体的な表現体となっているというところに大きな問題点があるのではないでしょうか? このように、 都心居住を考える際の第3のテーゼは、 「利用形態が管理方法を生み出す」ということになります。