「都心居住の環境デザイン」をめぐって様々な分野の方、 あるいはいろいろな関心をお持ちの方からご意見を聞けるかと思います。
課題の整理はこれまでの午前中の議論でかなり出来たと思います。
最初に、 佐々木幹郎さんからスライドを通してヒマラヤの風景と共にある都市の物語を聞かせていただきました。
その中で都市本来の「集まって守り合って住み合う」という都市の形と、 交流拠点としての都市のあり方が少し見えてきたのではないかと思います。
また、 鳴海先生から都心とは何かということを整理していただきました。
その中で、 歴史的な都心と、 住居混在地の中でつくられてきた「まちなか」。
その外周にある昔のサラリーマンが住んでいた地区。
インナーシティ。
大阪市で言えば、 大阪市のほぼ市域全体といったものを今回のパネルディスカッションの中では都心と考えていってはどうかという提案だったと思います。
その中で都心居住とはいったいどういうことなのか、 ということで三つ挙げられました。
一つは「住み続ける」ということです。
これまでも人は都心に住んできましたし、 今も住んでいるわけです。
大きな変化の中でも、 したたかに住み続けている。
そういった都心でなければ成り立たない「生業と共に暮らす」という暮らし方があります。
もう一つは、 そういった下町の暮らしの中、 あるいは生活の空間、 環境の中に、 これから都心居住を考えていく時の「新しい価値」を見出していけるのではないだろうか、 という指摘があったと思います。
三つ目に「都市ホテル論」ということを言われました。
都市は人口を呼吸するということです。
学生だけではなく、 3月、 4月になりますと転勤で日本中の人が動いています。
最近、 被災地の中ですら、 被災前と同様にこの春の人口の動きが認められることを発見して、 ちょっとびっくりしました。
3月、 4月には大きく人が動く。
「住み続ける」環境と共存して仮に住まう、 あるいは短期間住まうといったことに対応する様々な住み方が提案されるべきではないか、 という点であったと思います。
ここまでは都心居住の住み方の問題が語られたと思います。
住み方の形が環境デザインであり、 都市の形につながっていきます。
その方向は、 先ほどの3人の方の問題提起の中にありました。
佐藤さんからは、 「住居が都市をつくる」という居住空間の形のつくり方につながる問題が提起されたと思います。
都心に住む住み方は長い歴史を持っていますが、 歴史的な都心のまちなかの状況も変わってきています。
その一方でサラリーマンの町であった郊外、 あるいは郊外住宅地として開発が進められてきた阪神間にも、 ある意味でまちなか化してきている場所があるのが現在の状況です。
また都心は新しい機能を積み重ねながら変わりつつあります。
その中で「住む」という機能を追い出すパワーも強くなっています。
しかしやはりしたたかに住んできました。
そして都市の中に新しい街が新しい機能を持ちながら生まれてきているのではないかと思います。
例えばアメリカで言えばソーホーのように工場地帯だったところに若いアーティストが集まり、 彼らの暮らしが都心居住の一つのスタイルを生み、 まちなか化が進む。
いわゆる人が持つ知恵とか、 人の持つ創造力が新しいまちなかをつくってきていると思います。
そういう意味で言えば、 郊外の中にも都市性というかまちなか性といったものが見られるようになってきた現代において、 どのような視点から都心居住、 そしてその都心居住を包み込む環境デザインを考えていくのか、 パネラーの方にそれぞれのお考えをお聞かせいただきたいと思います。