パネルディスカッション
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NEXT 21における都心居住

加茂みどり

 加茂と申します。

私は大阪ガスにおりまして、 実験集合住宅NEXT 21という6階建の谷町6丁目に建てた住宅で、 社員が実際に住む居住実験を担当しております。

2段階供給方式と言われますスケルトン・インフィル方式で建て、 屋上緑化など都市住宅として様々な工夫を入れた住宅です。

一部の住戸は安原先生に設計いただいております。

 人が実際に住み面白い結果が次々と出てきております。

今日は都心居住に関わる部分で入居者にどういう声が挙がってきたか最初に紹介させていただきたいと思います。

NEXT 21における生活

 ある郊外からいらした奥様は「タクシーにすぐ乗れる」ことが非常に便利だとすごく感動しておられました。

前の家だとタクシーに乗るまでに10分とは言わないけれどもかなり歩いたとおっしゃるのですが、 ここに来たらすぐにタクシーに乗れて、 これがものすごく便利だとおっしゃっています。

 もう一つは、 以前は百貨店に行くのはすごいイベントだったとおっしゃっているのです。

百貨店に行くとなったらお昼ご飯もそこそこに、 服を選んで出かけていく。

帰りは夕食の支度をするには疲れているし、 時間もないので、 地下でお総菜を買って帰って、 その日の夕食は簡単にということになったのですが、 今は京都の四条烏丸にある大丸の催し物に行くのにも2時に出て6時に帰れるというのですごく感動されていました。

 ようするに百貨店とかあらゆる所に行くことが、 イベントから日常に変わってきてるような感じだとおっしゃっています。

 具体的にそれがどういう所に現われてくるかというと、 まず服装が変わったそうです。

どういうことかというと、 前はイベントですから着る服を選んで着て行くっていう感じなのですが、 今はNEXT 21から近鉄百貨店までタクシーで5分ですから、 普段着のまま行って、 戻ってくる。

これはものすごく便利だっておっしゃっています。

 また、 時間がある。

外出時間が同じなのに家にいる時間がすごく長いように感じる。

結果として自分が好きなことに時間をまわせるようになった。

ご主人の意見としては、 帰宅時間を全く気にせずに遊ぶようになって、 帰宅が遅くなりましたっていうのが多くありました。

 あとやはり通勤が楽。

やっぱりどこにでも行けるという答えが男性の方でも非常に多いご意見でした。

 そして、 これが都心居住らしくて面白いと思ったのですが、 あるご夫婦は家に帰ってきてご飯を二人で家で食べてから、 「今から映画に行こうか」と二人で自転車に乗って行って、 24時間上映している映画館に行って、 また自転車で帰ってくるという生活をされている、 そういうことをおっしゃっています。

 以上が、 がNEXT 21での都心居住の事例です。

都心のやさしさについて

 私自身は京都に住んでおります。

とはいっても京都の真ん中の都心ではないので、 準都心ぐらいの位置付けなのかなと思います。

 私はずっと家の回りに日常の物を買える店が全部揃っているのが当たり前だと思って育ってきました。

ですからそうじゃない住宅地という所に始めていった時に、 ちょっと驚きました。

 私が小さいとき、 来客があってからお菓子を買いに行く。

来客が来たら母親が「おいでやす」と言うと父親を接客にあてといて、 それでお茶を入れながら娘の私を呼んで、 「はよ、 お饅買うてきぃ」。

背中押されて外に出て走って買いに行って、 入れ直したお茶と一緒に出しても間に合うという、 そういう生活をしておりました。

 やっぱり母も父が商売だったせいで、 手伝いで忙しく、 よく夕食をさぼる母親だったのですが、 寿司屋の出前というのが歩いて2、 3分の所にあったので、 しんどかったらすぐ電話するんです。

母親が家事さぼってくれると寿司が食べられるので子供にとっては大変なごちそうで大喜びしたもんなんですが、 そういう便利な生活をしてきました。

 都心の良さは、 NEXT 21の奥さんの話とか自分の経験から考えて二つぐらいあるのではないかと考えています。

 一つは日常の暮らしにとりあえず必要な物が5分か10分歩いたら全部揃うということ。

これはやはり都心としては必要最低限の、 絶対条件にも近いようなことかと思っています。

 もう一つはさっきの百貨店のイベント性の話なんですが、 そういうちょっとした楽しみのための施設がある。

交通手段を選んだ場合にはすぐ着くような場所に博物館ですとか美術館、 百貨店、 図書館とか、 そういうものがある。

 私は京都に住んでいて、 どこにでも20分ぐらいで車だったら着いてしまうので、 そういう所がとっても便利かなと思います。

だから、 京都では、 碁盤の目全部を都心といってもいいのかなと思います。

さっきの大阪の話と重なりますが、 そういう感想を持っています。

 そういう日常の物とかちょっとした楽しみのための施設が、 自分の体で認知できる空間にあるのが一つの条件としてあると思います。

というのは、 自分が認知して動き回るような空間の外の空間というのは、 私の生活を振り返っても、 無くても一緒のような所があって、 やっぱり自分の等身大の都市というか、 自分が感じる空間的な広がりの中に何があるかというのが、 その人にとっての大きな関心事ではないかと思います。

そういったところから「自分の近所を考える」という高口先生のお話を「良くわかるな」と思っておうかがいしていました。

 そういう都心の良さがあると、 時間的な、 もしくは空間的なゆとりが精神的に生まれてくると思います。

そこでNEXT 21の奥さんたちがどういうように変化したかをちょっとご紹介いたします。

 一人の方は「以前はしんどいと思っていたんだけど、 家に帰ったらくつろごうっという気持ちになった。

何かしようっという気持ちになった。

それがNEXT 21に移ってきて一番変わったことです」とおっしゃるんです。

 「私は放送大学に通い始めました」とおっしゃる方もおられました。

 もうお一方は元々手芸が趣味だった方なのですが、 「私はアートフラワーを始めました」という方がおられまして、 やっぱり都心居住によって与えられた時間的、 空間的なゆとりが、 その人の生活を変えていく場面を目の当たりに見ているような気がしています。

 最後に、 都心は人に優しいものだと思います。

誰に一番優しいのかという話をレジュメの最後に書いたのですが、 高齢者にとって一番優しい空間なのではないかなと思います。

 若い間は車に乗って20分の百貨店だったら行こうという気がしますが、 歳をとってくるとそうもいかない。

自分の親を見ていてそう思うわけです。

うちの父はとにかく「どこどこに行かなあかん」と言ってはヨタヨタと動き回る癖がありまして、 「郵便局に行かなあかん」とか、 「銀行に行かなあかん」とか、 「牛乳を買いに行かなあかん」とか、 「頼んだ本を取りに行かなあかん」とか、 大体のことは別にどっちでもいいことなんですが、 「あかん、 あかん」と言って自分で目的を作ってはヨタヨタと一人で動き回っているわけなんです。

 私は弟と二人で父親が車に乗るのを必死で止めたのですが、 自分で行くところを決めて自分の力でヨタヨタとそこに行ける、 そして帰ってくるという所が父の自立を支えているような気もします。

都心居住だからこそ、 そういう行動の選択ができる、 という意味では都心こそが高齢者に優しいのではないかと思っています。

 都心居住がいいと思ってるから京都がいいと思うのか、 京都が好きだから都心居住が良いと言っているのか、 自分でもちょっとよく分からない部分があるのですが、 やはり最後はその街が好きでいられる街であって欲しいと思います。

小浦さん

 ありがとうございました。

ご経験の中から都心居住の便利さについて具体的なお話があったかと思います。

それでは続きまして、 安原さんの方からお願いいたします。

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