パネルディスカッション
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都心居住の魅力は作れるものでしょうか

岩本康男

 今日のパネリストの件は、 住都公団の千葉さんからメンバーになるようにと言われて引き受けたのですが、 職場の若い人にこの会のパネルディスカッション出ることになったというと、 みんな心配してくれました。

 「メンバーがかなりしたたかですよ」と、 そして「やられますよ」と言って、 たくさん資料を用意してくれました。

大阪市の住宅政策なら「ここを喋りなさい」とちゃんと印まで付けてくれているのです。

 しかし、 これは一切使わないでおこうと思います。

これで勝負しますときっと負けそうですから、 これはやめにします。

それからテーマとなっています「行き交う怪しさ」は大阪市のこういう資料には一切入っておりません。

おそらく今日の話題に合わないと思いますので、 そういうことは省かさせていただきます。

 都心居住についていろいろなメニューを最近10年ぐらいやっているわけです。

しかし効果が分からないまま地震が起き、 「次は密集市街地をやらないかん」ということになってきました。

大阪市の一番弱い所です。

今まであんまりやりなれていないことです。

これをやらなあかんとか、 いろいろなことが次から次へと出てくるわけですから、 私らも欲求不満になっております。

大阪は宴会部門担当でいいのか

 住宅をやっている人に、 「大阪に作るマンションなのに、 三田とか、 ああいうところに作るのと同じような間取りで同じようなマッチ箱を建てるのですか」と言ったことがあるのです。

あっちには自然があります。

地価も安いわけですから勝てるはずが無いのですから、 どうしてそんな同じような建物を建てるのかなと常々住宅サイドの人に申し上げています。

 私が今一番悩んでおりますのは港町O-CATでして、 ビルが建ったのですが、 まだ周りが建ちません。

それからユニバーサルスタジオもやっていますが、 これはMCAの一人勝ちです。

全部吸い上げられて、 地主とか大阪市はえらい目にあうんちゃうかという気もしております。

800万人も来る客を取り返さないといかんということです。

やはりホテルが欲しい。

もっと良い開発の拠点となるようなホテルが欲しいということで、 今ホテルの勉強もしているのです。

 ある人に、 「客室1室あたりの売上高から見たら日本のホテルベスト20」という資料をいただいたのです。

1位は佐世保、 これはハウステンボスにありますホテルヨーロッパです。

あとずっと20位まで書いてありますが、 大阪は一つも入っていないのです。

ハウステンボスとかディズニーランドとか東京オークラとか帝國とかいろいろ入っていますが、 一つも大阪のホテルが入っていないのです。

 これは大阪市内のホテルは宿泊客の単価が低いということです。

ですから宴会で一生懸命稼がなければならない。

大阪の客は泊まるだけか、 または宴会で騒ぐだけではないか。

これは特化してるのではないか。

それをつらつら考えますと都心居住を考える場合、 どうも大阪市内が宴会部門を受け持っておって、 郊外が宿泊機能を受け持っておるというような分化、 分離がなされてるというように思います。

 ホテルをやっている人に聞きますと、 ホテルの一番重要なコンセプトは快適な居住空間とリーズナブルな飲食と行き届いたサービスの3つに集約できると言っておりましたが、 この3つがあるリゾート型のホテルのような都心になる必要があると思います。

 その時に一番欠けている「ホッとしたような空間」と言いますか、 何度でも行きたくなるような空間です。

 1977年にサンフランシスコに行きゴールデンゲートウェイのハイアットリージェンシーで大吹き抜けを見たときは、 本当に度肝を抜かれました。

その後日本でもそういった類のホテルが随分できたわけでありますが、 ああいう度肝を抜くような空間も一回は良いのですが、 ホッとして何回も行くような空間かどうかというのは疑問に感じました。

 静かな空間とか刺激的な空間、 今日の一心寺シアターのような場は、 まさに静かな中での刺激的な空間と申しますか、 両方ミックスした私が求めている空間でございます。

都心に住むというより都心で死ぬというようなことを、 感じさせられるようなイメージを持ちました。

ありがたいと思っているのですが…。

専門家同士の交流の必要性

 私は専門が土木でございます。

土木は「国土を作る」明確な明るい仕事です。

一方建築の方は何かちょっと隠微と申しますか、 カオスの世界にどうしても浸りがちな人が多いようです。

学生時代から顔を見ただけで土木と建築の違いが分かるんですね。

 建築の中でも住宅をやっている方たちだけは独特の正義感を持っておられます。

ナショナルミニマム的なことばっかりを追求されていると思います。

それがこの都心居住に合うかどうかは大きな疑問を感じております。

 しかし答えは私も持っておりません。

それはともかくとして、 ホテルの例でも申しましたように、 住宅を設計されたり開発されたりする方と私ども街づくりをやっている者との交流というのは、 もっとなければならないといつも感じています。

 鳴海先生がいつも言われる怪しげなやつは、 都市計画と申しますか我々健康な都市計画を目指してる人間にとってはなかなか作れるものではございません。

したがって今日の資料の私のタイトルにあるように、 「都心居住の魅力は作れるものでしょうか」と問いかけたいのです。

私は否定的です。

行政の一番弱いとこであるという意味でもあります。

しかし都心の住宅を開発される方ともう少しいろいろ意見を交換させていただいて良い街を作ってゆけば、 大阪もそう捨てたもんではないと思っているところでございます。

小浦さん

 ありがとうございました。

それでは最後になりましたが、 岡さんの方から都心居住についてお願いいたします。

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