パネルディスカッション
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NEXT 21における居住空間

加茂みどり

 厳しいご質問です。

NEXT 21は都心にあるのですが、 どちらかというとそこに初めて住む方ばかりなので既存の都市基盤を利用するのみという、 おんぶに抱っこ型のことが多いというのは、 私もそうだと思います。

都心の利便性、 既存の都市基盤の機能を享受して自分が楽しむだけで、 そこに何も残していかないっというのは、 強奪型というか「申し訳ありません」といった感じでちょっとお答ができません。

 ただNEXT 21のハードといたしましては、 地域に少し貢献できるようなハードを何か残そうということで、 都心の居住空間の中に緑地を少し設けたり、 屋上庭園を設けたりしています。

立体街路も設けました。

立体街路と申しますと空中を通っているブリッジのようなものを意識される方が多いのですが、 従来の共用廊下なんです。

その共用廊下を街路空間として、 居住空間としていかに再生していくかということに心を砕いた事例でもあります。

 ここで、 スライドをご紹介させていただいてもよろしいでしょうか。

画像31  写真31がNEXT 21です。

地上6階建てでインフィルスケルトン住宅になっております。

スケルトンは建物躯体のことで100年間の耐久性を持たして、 インフィルの部分は自由に間取りが変更可能な内装となっております。

 下に見えているのがエコロジカルガーデンと我々が呼んでいる庭です。

屋上にも庭園がございます。

手前の方に2本のブリッジがありますが、 このブリッジだけではなくて全部の共用廊下部分を立体街路と呼んでいます。

画像32  写真32は奥様が立ち話をしているところです。

画像33  写真33は6階の部分です。

6階の住戸には藤棚があり、 立体街路はこういう緑地も配しながら構成されています。

画像34  写真34は5階部分です。

5階のリビングアクセスになっている住戸がありまして、 そこの住戸のリビングの西横の所です。

手前のプランターボックスは公開時に使っていたプランターボックスが放置されているのを見て、 「ほっとくんだったら私に下さい」とおっしゃっられた5階の奥さんに使っていただいているものです。

綺麗にお花を咲かして下さいました。

画像35  写真35は5階です。

最近の子供はカメラを向けるとポーズを取ってくれて、 「ちょっと写真を撮らしてね」と言ったら様になるようにポーズを取ってくれました。

 5階にはブリッジがありますから、 子供が5階をぐるぐる一輪車と自転車で回っております。

3階はちっさい子供が多いのでこれが三輪車に変わります。

画像36  写真36は3階の盆栽の家、 アクティヴ・シルバーの家の庭先です。

玄関の所なんですが玄関のところに盆栽を置かれいます。

画像37  写真37は立体街路側からある住戸のテラスを見たところです。

テラスで洗濯物も干されているのですが、 子供と遊ぶ空間になっています。

靴も置いたりされています。

エレベータを降りたらテラスからトントンと部屋に上がられる場合もあるようです。

画像38  写真38は同じ場所でちょっとイベントをされていた様子を撮らせていただきました。

結構集まりやすいということもあって、 近所の奥さんの溜まり場になっています。

 小浦先生から外との連続性はどうなのかという話がありました。

NEXT 21では従来の集合住宅が地域に密着しない形で建ってしまって、 一つ一つの住宅と地域のコミュニティとは距離が出てしまうということを解決するために、 立体街路という計画がされています。

 この立体街路は5つのことを設計のポイントに置いています。

公共性と開放性、 つまり誰でも入れるということです。

住宅、 各住戸との接続性。

そして回遊性。

そして経路が選択できることです。

 これを住棟内の共用廊下で実現しています。

これは都市での住宅がどうしても積層型の集住空間になってしまうという現実を踏まえた上で、 それであればできるだけ縦横に繋ぐ住棟内の道も街路として再生しようというものです。

画像39  写真39は先ほどのリビングアクセスの庭の北側の庭です。

これは5階ですが、 集合住宅の庭とは思えないような庭になっています。

もちろん立体街路との接続性も非常に高いと思います。

画像40  写真40が逆側の庭です。

これもやはり5階です。

画像41  写真41は3階の立体街路です。

こういった生活のにじみ出しというのが立体街路側に出ております。

画像42  写真42は中から撮ったところなんですが、 住宅と立体街路との接続性が非常に高い住戸の一つです。

従って植物好きだということもあって生活がかなり立体街路側ににじみ出しています。

画像43  別の日にカメラを向けると子供がポーズをとってくれました(写真43)。

同じ場所で写真を撮っています。

3階なんですが、 3階はこういうちっさい子供が多いので三輪車もしくは手前の子供が乗っているようなゴーカートで結構街路をぐるぐる回っているみたいです。

画像44  写真44はビデオカメラで居住者の行動を撮影したものです。

居住者の了承を得て実験の一貫としてまわしたものです。

ちょっとはみ出てしまっているのですが、 男の人の隣にちっさい女の子がいます。

お父さんと娘の散歩です。

この二人はエレベーターで6階に上がって、 5階、 4階、 3階と降りていって、 もう一度4階の自分の家に戻るというような回遊性を利用した散歩をしておりました。

画像45  写真45は子供の遊びです。

妹を乳母車に乗せてお兄ちゃんが遊んでいるところです。

こういったように街路で子供が遊ぶということは、 普通のマンションでは起こらないことです。

画像46  写真46は屋上の庭園で行ったお月見会の昼間にみんなで遊んだときの写真です。

画像47  写真47は立体街路を3階から見た所です。

画像48  写真48はNEXT 21に来た鳥です。

NEXT 21で撮った写真です。

なんという名前なのか私は分からないのですが、 このように野鳥が来ております。

画像49  写真49は突然空から青鷺がNEXT 21に降りてきたところです。

ちょうどのタイミングで日本野鳥の会さんが写真を撮って下さいました。

画像50  写真50は蝶を鳥が食べているところです。

NEXT 21では都心部分に緑地を取り戻そうということで単に木を植えるとか鳥を呼んでくるとかいうことではなく、 そこで鳥が巣を作って繁殖する。

つまり生態系の復元を目指しています。

このように蝶を食べてくれることで都市空間であってもこのような生態系の復元に近い部分が少しできてきています。

画像51  写真51は待望の雉鳩の巣です。

6Fの藤棚の上のところに巣がつくられています。

画像52  写真52は上から見た所です。

ちょっと分からないと思いますが、 親鳥が巣を暖めているところを上から撮ったのですが本当にうまく巣を作っています。

画像53 ここからある日、 雛が落ちてきまして(写真53)、 その日のうちはうろうろとしていたのですが、 そのうち手摺にのって巣立っていきました(写真54)。

画像55  写真55はサーモビュアの写真です。

こういった緑地がヒートアイランド現象にも効いていることがわかります。

青いブルーの部分の塊がNEXT21です。

向かい側にあるビルが熱くコンクリートが焼けていることがわかると思います。

 緑地空間が都市部を涼しくするということで、 少しは地域のヒートアイランド現象の減少に寄与しているのではないかと思います。

 以上でスライドは終わりです。

 利便性が高くて非常に便利な住空間であれば、 人の暮らしそのもののコミュニケーションとか、 緑地の部分は諦めるというような考え方があるんだと思います。

しかしNEXT 21の生活を見ていて、 私たちは都心で何も諦めることはないのではないかと感じています。

かなり苦労しましたが、 緑が多くなりますし、 地域のコミュニケーションも出てくると思います。

 最近、 周辺住民の方400名の方にNEXT 21に対するアンケート調査を行いました。

いろいろ面白い意見があって、 みんながあの建物に興味を持ってくれています。

結構緑地に対する好意的な意見が多く、 ただ隣の住民と向かいの住民だけは枯れ葉が飛んでくるということで、 評価が低かったと、 そういう結果が出てきております。

ちょっとお答えにはなりませんでしたが以上です。

小浦さん

 ありがとうございました。

いかがですか高口さん。

そういうお話が出ておりますが。

今お聞きしてて思ったのはサラリーマンが住まうためには街はいらないかもしれないんです。

住宅があって緑があればいいかもしれない。

 でもやっぱりお寺が生きていくためには、 あるいは店が生きていくためには街がいるっていうか、 人が住む街がいる。

その辺で街に働きかけていく発想も違ってくるんではないかなと思ったのですがいかがですか。

高口さん

 今日はあんまりたくさんのスタンスでいうと話がややこしくなるので、 ひたすら同じことばかりいうのですが、 例えばマンションの売り出しのチラシを見ると「周りに一心寺があります。

四天王寺があります。

生國魂神社もあります」そういうのばっかりです。

それを条件として入居してくるわけですよ。

ところがそんな人は私どもはいらない。

ただただ散歩に来て、 遅くやってきて「もう閉まったのか」て文句言ってみたり、 なんかそういうことばっかりで。

そういう着目点の偏りということについてここにこれだけのプロの方が集まっておられるとしたら、 「もっと何かいろいろなこと考えないと、 うまいこといかへんよ」ということを地元住民として一言っとこうと、 それだけなんです。

小浦さん

 ありがとうございました。

そういう意味では住まい方も含めて20年間なさってきた安原さんの方から今のお二方のご意見をお聞きしてはいかがでしょうか。

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都市環境デザイン会議関西ブロック


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