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都住創を通して大阪を見る

都住創・ヘキサ

安原 秀

◇1. 都住創(都市住宅を自分たちの手で創る会)を提唱し、 活動を開始してから20年たった。 公的・民間を問わず画一的に供給されているマンションと違った都市型の集合住宅を、 住む人達の個人的欲求を直接の手がかりとして、 高密度な都心部につくろうというたくらみだった。

 結果的に、 大阪で17棟、 東京で2棟建てることができた。 当然だが、 その後転居、 転貸、 相続などの住人の移動があり、 子供達は成人し、 一部の大人達はそろそろ老境にさしかかりつつあるが、 居住情報のネットワークは現在も維持している。

◇2. 都住創センターという100m2程度の共同利用施設をつくって12年目になる。 棟が分かれて点在する住人達のクラブハウス的な使用と、 映画、 演劇、 音楽、 展覧会、 ガレージセール等で内外多くの人達が使い、 居住の場と一体になったハイブリッドな場づくりを目指したものであった。

 地域に定着した小ホールとして早くから認知され、 現在も都心部での私的な遊び表現のための空間として使い続けられているが、 運営、 経営面ではたいへん苦労をしている。

◇3. その間、 地下鉄の伸延工事、 スポーツ公園、 各種交流施設、 目に見えない下水道工事等々、 大阪市のインフラは整備されており、 全体としては住み易くなっているはずである。

 しかし、 都住創のホームエリアは特に目立って良くなったとは感じられない。 投資型のワンルームマンションが無作為に作られ、 バブル期には一見立派なオフィスビルが相次いで建ち、 駐車場として使われる空地が目立ち、 コンビニエンスストアが点在するようになった。

 相変わらず狭い歩道は電柱によって妨害され、 ウィークデイの道路は駐車した自動車に占拠されて、 醜い風景を展開している。 コンビニだけが、 ひとり都市型のサービスを背負って立っている風だ。

 僕たちがイメージしたはずの、 都市住宅と、 オフィスや色々な店舗が一体となった建築群によって息ずく市街地は、 まだその兆しを見せてはいない。

◇4. 大阪市は都市居住促進策を講じている。 「職・住・遊の一体化」は都住創の20年前のキーワードだった。 住宅のみに関して言えば、 新婚世帯向け家賃補助制度は好評のようだが、 住宅付置誘導制度は相変わらずのハコ政策で、 住むための空間としての魂が宿りそうにない。 制度とはそこまでのものだろうか。

 中心市街地、 戦前長屋地域、 工住混合地域、 湾岸地域等々、 それぞれの場所での合意が形成された複合型のビルディングタイプを開発し、 個性的で魅力ある居住環境をつくりたいものだ。

◇5. 21世紀を間近にして、 エネルギー問題の行方に関して、 地球規模での需要増大と技術革新の両面から各種の予測が行われており、 とりあえず2000年頃にはいずれにしてもひとつの現実的見通しがつくかに言われている。 事態は悪化しているはずだし、 破局が来るならば突然にやってくるのではなかろうか。 アジアの一員としての経済も、 根本的な方向決定を迫られているようである。

 都市文化が娯楽要素として見直され、 知的満足感は商業空間の主要要素として組み込まれている。 それと同じような感覚でよい、 誰もがよく知っていることを、 誇れる目標として一度決定してみてはどうだろう。

 資源・エネルギー問題に地域ぐるみで立ち向かいつつ、 生活空間も情報濃度も高密度で魅力的な都市生活を持続的(サステイナブル)に発展させている都市居住を格好良くやってみせるのだ。 一例をあげれば、 単なる公園ではなく、 地域発電、 塵芥リサイクル、 雨水・中水利用等のための施設の組み込まれた公園が需給を近接させて都市の拠点に計画されており、 それが盛り場と隣り合わせに存在しているイメージである。

 意識改革の誇りに満ちた都市環境のインフラと制度を提案し、 市民的合意形成に力を注ぐ時ではないか。

 郊外にある手つかずの自然を都市にいて意識できるように。

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