第7回都市環境デザイン会議関西
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大地の達人に聞く3

起伏と土地の商品価値

ゲストスピーカー 河本一行〈シェラプラン〉
コメンテーター  山崎譲二〈KΛn綜合計画〉

自然地形活用型住宅の試み―西脇市「緑風台」

河本一行

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※本報告にあたり、 当時の担当者の方々の貴重なご意見を頂きました。
 資料:日経アーキテクチャー1982.11.22号

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 土地の資質を読み取り、 それを具現化し、 商品化するプロセスでは、 計画地である土地の魅力に付加価値をつけることによって、 顧客にアピールすることが求められる。 また、 事業者は土地や建物を販売することによってその役割を終えることになるが、 その後は、 顧客が住宅地で生活していくことになる。 このため、 計画者や事業者には、 貴重な大地を快適な居住空間として顧客に提供すると同時に、 事業の完了後も新たに生み出したこの商品価値を顧客が永続的に維持し、 高めていける仕組みを残しておくことなどが求められる。

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図1 西脇市「緑風台」マスタープラン
改行マークここで取り上げる西脇市「緑風台」住宅では、 当時(1974年頃)、 戸建住宅団地の殆どがひな壇型造成であったのに対し、 袋小路状のクルドサック道路の採用により、 既存の小川や緑を生かした緑のネットワークを住宅地内にめぐらせるなど、 自然の地形、 水系、 樹木をそのまま生かした住宅地の開発計画により、 住環境の質の向上をねらった。

改行マーク事業が完了して約20年経過した現在、 計画から販売、 居住段階までの各プロセスを踏まえながら本事業の成果、 課題について考えてみたい。

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西脇市「緑風台」の概要
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1. 西脇市「緑風台」3つの特徴

宅地の区画をアカマツの樹林付きで販売

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図2 造成当時の全景

クラスター方式による開発

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図3 住宅配置の例

緑のネットワークを実現


2. 20年後の現在のまちの状況

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図4 野生味あふれる緑道
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図5 住宅地内をめぐる緑道

3. 販売面が危惧された

改行マーク大地や自然の一部を我々の住空間として計画・デザインする場合、 計画の意図をいかに伝えていくかがポイントである。 計画段階から事業実施段階、 そして居住者の手に渡ってからも生き残れる明確なコンセプトが理想である。 今回の事業を通じて、 事業性の点から周辺住宅地に競合しうる付加価値を生み出せたことで、 当初のコンセプトは、 販売面でもプラスになったと思う。


販売面での問題点


販売促進のために実施したこと

(計画面での対応)


(顧客への対応)


4. 実際の売れ行きは予想以上


5. 問題点・課題

クラスター方式


まちの景観


区画の広さ


まちのみどり


6. 今後の計画に向けて

計画コンセプトの永続性の確保


人の価値観に対する課題


商品価値から見た評価

山崎譲二

1. 商品価値の見直し、 再評価

−西脇「緑風台」の示唆―


2. 事例に見る商品価値の検証


別荘地に見るランドプランニング例


(1)SEIYO八ヶ岳高原海ノ口自然郷

改行マーク本別荘地は、 (株)西洋環境開発が30年に亘り長野県南牧村八ヶ岳東山麓標高1300m〜1850mのエリア(700ha)で開発を進めている。 現在、 1,100のオーナーが別荘ライフを楽しんでいる。

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図8 別荘地動物マップ
改行マークここでは、 自然の商品価値を高めるため、 鳥や小動物の紹介、 四季の草花や星座の紹介などのガイドブックが用意され、 ハード面では、 透水に配慮した舗装や大木や大石優先の道路設計、 小動物への配慮(助かり桝=側溝から這い上がる仕掛け)、 景観尊重のための別荘のデザインコードが街区ごとに定められている。

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図9 分譲パンフレット
改行マークまた、 それぞれの敷地に自生する樹木や巨石も積極的にその価値を認め販売パンフレットに記載しているなど「自然最重視の思想」で取り組んでいる。


1.5次住宅地に見るランドプランニング例


(2)藤和グリーンヒル

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図10 藤和グリーンヒル南足柄マスタープラン
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図11 斜面地の中に建つ住宅
改行マーク民間デベロッパー藤和不動産による開発。 神奈川県足利市の丘陵地約90haに「自然を活かしたファーストハウス」というコンセプト。 区画面積は、 150坪以上の区画と300坪以上の区画にゾーン分けがされている。 自治会による建築協定によって建築基準を規定しているほか、 樹木の伐採禁止などにより環境保全を図っている。 居住者は、 定住221戸、 別荘23戸、 賃貸6戸という構成で、 住民の6割は地元、 2〜3割は小田原から新幹線利用で東京・横浜へ通勤、 残りの1〜2割はリタイア・自由業。

改行マークこの街には海外での生活経験者や芸術家などが多数くらしている。 車社会型ライフスタイル。


(3)コリーナ矢板、 フィオーレ喜連川

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図12 フィオーレ喜連川(航空写真)
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図13 コリーナ矢板の住宅
改行マーク栃木県宇都宮市郊外の住宅地。 開発コンセプトは「生活エンジョイ型温泉付林間住宅地」。 開発エリアは、 何の特徴もない里山。

改行マーク温泉を掘り当てコンター道路で省造成とした自然林付き宅地(矢板;80〜600坪・平均120坪、 喜連川;100〜300坪・平均140、150坪)。 省造成によって可能となった販売価格の安さも魅力(8〜14万/坪、 H7年12月)で、 バブル崩壊後にも拘わらず売出し度に即日完売。

改行マーク「喜連川」の宅地の購入者は地元、 東京通勤者(宇都宮から新幹線通勤)、 老後のための土地手当+別荘地として、 がそれぞれ1/3。


古くからの高級住宅地に見る
ランドプランニング例


(4)六麓荘

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図14 六麓荘の土地利用
改行マーク昭和4年頃、 株式会社六麓荘によって、 芦屋の丘陵地(標高100〜200m)に197区画を持つ高級住宅地として建設された。 香港の白人居住区に倣い南斜面の起伏に富む自然の地形を活かし、 1区画を300〜400坪以上にし、 小川を敷地内に取り込むなど、 そこに建てられた優れた住宅建築群と共にスケールの大きい住宅地が形成された。

改行マーク当時においても、 平野部は大規模な耕地整理や電鉄系の宅地開発が中間サラリーマン階層を対象とし碁盤目上の整然とした街路割りが主流であったことから見ると、 六麓荘の住宅地づくりは、 その時代においても、 それらから一線を画していたと思われる。


(5)ジェームス山

改行マークJR塩谷駅の北西に位置する標高100m程の丘陵で昭和初期にイギリスの貿易商アーネスト・W・ジェームスが外国人用住宅地として開発した。 自然地形を活かし残した松などの樹木が茂る山に50軒ほどの海を眺める洋館が建つ。 クローズド・コミュニティであるが、 神戸の北野とは又違う異国情緒の感じられる住宅地を形成している。 居住者の特性とともに、 自然(大地)を生かした住宅地の好例といえる。 周辺には、 「ジェームス山」を冠した住宅地が開発されている。


土地の有効活用や販売促進の材料として
活用したランドプランニング例

(6)桂坂・東CED

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図15 桂坂「東CED」模型写真
改行マーク桂坂は、 西洋環境開発によって京都市西京区に開発された住宅地である。

改行マークここで紹介する「東CED」は、 幹線道路の正面斜面地(約4,600m2)に当初計画では、 上部に平坦な片側1列の街区で下部の残りの部分は1:1.8の法面であった。

改行マークそこで、 ニュータウンの玄関部にふさわしい住宅地デザインを持たすため、 内井昭蔵氏の設計による斜面地を生かしたインパクトの強い住宅群(10戸)として計画された。

改行マークこの住宅群は、 街のイメージ形成に貢献すると共に、 販売面では、 海外居住経験者や市場に多くでている住宅に満足できなかった人達の支持を得て完売した。


3. 自然を生かすランドプランニング商品の
特性についての効果および課題

効 果


課 題

※一方で、 その商品特性が強いだけに事業化に際し固有の難しいマーケット特性や開発関連法規、 行政指導面の縛りをうけている。 共通する主なものを整理すると以下のことが言える。

結 語

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