(株)スペースビジョン研究所 山本一馬ひとにやさしい駅へ
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『地下鉄は階段が多くてしんどいから、 少し待ってでもバスを利用している』─高齢のメンバーのこの一言からすべては始まった。
碁盤の目状に整備された大阪の地下鉄は、 多くの人の通勤・通学の足となり、 その“輸送能力”は日々向上している。 人を運ぶための道具としては非常に利便性が高い。 一方、 地域の視点から見れば、 駅はひとが最も多く集まる場であり、 地域の核として捉えられる。 しかし、 地下鉄の駅には通常“駅前”のような界隈性はなく、 単なる機能的な目的地、 結節点でしかないのが現状である。
高齢者や障害者にも障壁がない“バリアフリー”の駅を目指して活動を展開している市民グループ『おんなの目で大阪の街を創る会』(小山琴子代表)は、 その活動記録を冊子にまとめた。 駅を中心とした公共交通網の現状を伝えるとともに、 だれでも使いやすく便利な駅を実現するためにどうすればいいのか問いかけ、 市民とともに考えていくことがねらいである。
同会は平成8年から約2年かけて大阪市内の地下鉄の駅(全111駅)について、 バリアフリーの視点とサービスの視点から調査し、 大阪市交通局に改善案を提案してきた(既にいくつかの提案は実現している)。 冊子はこれらに加え、 実際に調査して感じたことなどを“21世紀の駅ビジョン”として主婦の目から見た駅の将来像をまとめ、 “ひとにやさしい駅になるための13の提案”として、 抽象的なことから具体的なことまでを主婦の目から見た“簡単なこと”から順にまとめた。 行政側にとっては困難なことであっても、 市民の目から見れば常識のことは多々ある。 そのことを少しでも明らかにしたかった。 また、 冊子を市民向けに作ったもう一つの目的は、 日頃考えている当たり前の視点を持っている人が集まればこんなことができるということを伝え、 提案型の市民活動の一形態として参考にしてもらえればという願いがある。
この活動を通じ、 彼女たちは多様な専門家、 市民グループと出会い、 時にはともに調査したり、 提案をまとめるワークショップに参加してもらったりした。 利用主体、 利用目的が多様な公共施設こそ“ともに”考える共有意識が大切である。 冊子をきっかけに様々な出会い、 議論が生じることだろう。
想いの詰まった冊子、 今後はプロセスの記述が課題・・・
21世紀の駅ビジョン
彼女たちはたくさんのカードを持っている。
◆参加のデザイン・コンセプト:
当たり前の視点を共有 生活感のある提案
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