例えば豆にダニがつきます。 葉の裏にたくさんついて、 葉の汁を吸います。 この葉ダニにあんまりたくさんつかれますと、 豆が萎れてきます。 そうなると花も咲かせられないし、 子孫も残せません。 豆にしてみると、 なんとか葉ダニを追っ払いたいのですが、 植物ですから追っ払うことはできません。 そこでどうするかというと、 葉が萎れてくるとある匂いの物質を作り始めます。 その匂いが周りにただよってくると、 その臭いに惹かれて食肉性のカブリダニというダニがやってきます。 そのカブリダニが葉ダニを食べるわけです。
豆が匂いを出してくれないと葉ダニのいる場所は分かりません。 匂いのおかげで葉ダニのいる場所がわかり、 カブリダニは葉ダニをどんどん食べて増え始めます。 その結果、 豆は救われるのです。 これはガードマンを呼ぶ植物として有名になった研究です。
しかし豆がカブリダニを呼び寄せる匂いを出すのは、 葉ダニにしては迷惑な話です。 だから葉ダニはガードマンを呼び寄せる物質を作らせないようにしているのではないかと、 京都大学の人たちが研究しています。 これはそう思えるところもあるのですが、 まだはっきりしていません。
もし仮にそうだとすると、 葉ダニは植物を食べて増える、 そうすると植物はSOS信号を出す、 ところが今度は葉ダニがSOS信号を出させないようにする、 などということになって三巴のややこしい関係になります。 このように自然界は複雑な関係でできています。
カタツムリは葉っぱの上を歩いていて、 葉っぱを食べるものですから、 卵も一緒に食べてしまいます。 卵はカタツムリの体の中で孵り、 幼虫はカタツムリの体の中を歩いて、 目の中に入ってしまいます。 そしてある物質を出すのですが、 その結果、 カタツムリの目がやたらに大きくなって、 木の芽のようになるのです。 しかもその中にジストマが入っていますから、 ジストマが中で動くと目も動いて、 目立つようになってしまいます。
おまけにカタツムリは普段は葉の陰にいるのですが、 ジストマに寄生されたカタツムリは明るい所に出てきて、 葉っぱの表を平気で歩くようになってしまいます。 そうすると木の芽を食べる鳥は、 木の芽のように見えるカタツムリの目を食べてるのです。 その時、 中にいるジストマの幼虫ごと食べますから、 ジストマは見事に鳥の体に入れるわけです。 そして鳥の体のなかで親になって、 卵を産む、 そしてそれがまた葉の上に落ちるということが繰り返されます。
ここでカタツムリの目がそんなになるのは、 誰のせいなのかという問題が出てきます。 ジストマがある種の物質を作って、 目玉が大きくなるのですが、 その物質を作らせているのは誰かというと、 ジストマの幼虫の遺伝子です。 カタツムリにとっては迷惑な話ですが、 ジストマの遺伝子はそれによって残っていくのです。
花粉は初めは風で媒介されていました。 ところがこれは頼りないわけです。 そこで昆虫が出来た時に、 一つ昆虫に運ばせようと思った花がいるのでしょう。 昆虫に来て貰うために、 蜜を作ったというわけです。 しかし、 これにはコストがかかります。 ですから少量の蜜を作って、 簡単に持って行かれないように、 なるべく奥に隠しておくんです。
そうすると蜜の味を覚えた虫が潜ってきますから、 そこに雄しべをうまく出しておくようになっています。 これも雄しべが少しでも虫の体に付きやすいようになっていた花の方が、 子孫をたくさん残せたからです。 そのうちにもっと付きやすい花粉を持った花がたまたま出来て、 それが子孫をたくさん残したから、 またそのようになったと言われています。
虫は蜜が欲しくて入ってくるのですが、 否応なしに花粉を付けられて、 自分では運んでやるつもりも全くないのに、 運ぶことになったというわけです。 先ほどの童話のような話ではないのです。
花の方は、 できるだけ奥のほうに蜜を作ろうと思っています。 そうすると蜂はごそごそ潜りこむよりも、 花の根元の辺に穴を開けて蜜を盗んでしまえと思うかもしれません。 実際そういう蜂もいるんです。 そこで簡単に盗まれないように、 花の根本の部分はしっかり厚くしています。 簡単にかじられてしまう根本が薄いものはいなくなり、 厚いものが残ったわけです。 このように、 両方とも自分の子孫をいかに残すかだけを考えて、 利己的にやっているにすぎません。 結果的に落ち着くところに落ち着いたのが、 僕らから見ると素晴らしい共生のように見えるだけなのです。
一日目は、 雄しべが成熟して花粉を出しています。 そこへ蜂が飛んできて蜜を取り、 花粉だらけになって飛んでいきます。 隣に睡蓮の花があるので、 飛び込みます。 たまたま隣の睡蓮が二日目の花だと、 そこにはもう雄しべはないのです。
花の真ん中に台のような部分があります。 一日目にはこの台のまわりに雄しべがあったのですが、 もう落ちてなくなっています。 そこへ蜂が飛び込んで、 台に乗ると、 台がつるつるでべたべたなものですから、 蜂はその上で滑ってしまいます。 滑っているうちにひっくりかえって、 羽がべたべたにくっついてしまって、 もう飛べなくなるんです。 もがいてばたばたしているうちに、 体についた花粉が落ちます。 それがトロトロッと流れていって、 まわりにある雌しべに付くのです。
これで睡蓮は種子を作りますが、 可哀相にその蜂は死んでしまいます。 共生なんていうものじゃなくて、 相手を殺して花粉をとるのです。 自然界はすさまじいものだということを、 その時つくづく思いました。 そういう例は今ではいくらでも知られています。 いろんな例を見れば見るほど、 その厳しさを感じずにはいられません。
自然界における共生
他種族との戦い―豆と葉ダニとカブリダニ
生物は他の種類とも激しく争っています。 今度はその例を少しご紹介したいと思います。寄生する遺伝子―鳥とカタツムリとジストマ
ジストマという寄生虫が人間にいますが、 その仲間で鳥につく寄生虫がいます。 そのジストマの卵は鳥の排泄によってばらばらとその辺に撒かれますが、 多くは植物の葉の上につきます。 それがどうして再び鳥に入るかというと、 カタツムリを中間宿主に使っているのです。見事な共生だと思っているもの―花と蜂
共生ということがよく言われます。 例えば花と蜂についても言われていました。 花が美しい花を咲かせ蜜をつくって蜂を呼びます。 蜂はその蜜を貰って自分の子どもを育て、 同時に蜜を貰うときに体についた花粉を媒介して歩くというわけです。 よく子どもの本などに「花さん蜜をありがとう。 わたしは花粉を運んであげますね」なんて書いてありますが、 そうなのでしょうか。相手を殺して花粉を取る―睡蓮
昔「花の結婚」という映画を見てびっくりしたのですが、 もっとすさまじい事をやる花もあります。 睡蓮ですが、 映画の水蓮は二日続けて咲いていました。
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