環境共生型都市デザインの世界
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Session 3
環境共生と快適性の両立性

ランドデザイン 中村伸之

環境技術と文化をつなぐ快適性

 そもそも「快適性」という問題が出てきた背景には、 環境共生が都市デザインの基本になることに対する躊躇や疑問がありました。 簡単にいえば、 ビオトープを街中につくってどうなるんだ、 建築の美学やまちなみの歴史をおろそかにして、 環境共生で都市デザインが全部解決するのか、 ということです。

 それに対して、 環境共生を技術面だけで見ても答えは出ないので、 文化的な文脈の中で環境共生の在り方を捉えなければならないだろうとなったわけです。

しかし、 いきなり環境共生の技術から文化へ、 というのでは飛躍があるので、 中間領域として「快適性(アメニティ)」というキーワードが出てきたと、 私は解釈しています。

 具体的に環境共生でできあがった都市の景観を見て、 人々はどう感じるんだろうということを出発点にして話をしようと思います。

 環境共生技術が、 人間の感性や歴史・文化と共生できるのか、 あるいは文化的な文脈と共生するようなデザインを目指さなければいけないのか、 という問題提起と、 ある程度の解決の方向性を示したいと考えています。

21世紀の都市とデザイン

 環境共生云々と言い始めてかなり年数が経っていますので、 例えば浸透性のある舗装をしようとか、 生物が脱出できるような側溝をつくろうといった、 技術的なメニューは出そろっているわけです。 それをどういうふうにレイアウトするか、 料理していくかという、 我々デザイナー側の用意がまだできていないし、 都市のイメージとしても、 19〜20世紀に目指してきた方向と果たしてどう変わっていくのかがまだ見えてこないのです。

 クリストファー・アレキザンダーは名古屋のデザイン博の講演会で「20世紀は物理学に支配された時代だったが、 21世紀は生物学に支配されるだろう」と発言しました。 要するに時代のパラダイムが変わってくると言っています。

 それを象徴する写真として、 大根が軒先に干してある田舎臭い写真と、 近代的なガラス張りのビル建築の二つの写真を見せています。 どうもスマートな近代建築の写真からは生命感を感じない。 軒先に干してある大根の方が生命感があるんじゃないかという話です。 「大根が干しているようなイメージを街中に」ということでしょうか。

 では、 デザインはどうやってそれに対応するんだろう、 という問題が出て来ます。 そういった疑問への答えをプレゼンテーターの方から聞けるのではないかと、 私も楽しみにしています。

プレゼンテーターの紹介

 まず佐々木葉二さんです。 ランドスケープアーキテクトで、 「ウッディータウン」などニュータウンのプロジェクト、 埼玉新都心の「ケヤキ広場」などに取り組んでこられました。 都市、 街区レベルのプランニングから具体的なデザインにいたるお話の中で、 環境共生について語っていただこうと考えています。

 次は江川直樹さんです。 現代計画研究所大阪事務所を主宰されている建築家で、 共同住宅や街区レベルの開発プロジェクトをいろいろ手がけられています。 今回は、 山の中の個人住宅の話から出発し、 自然と共に生きるテイストを語っていただきます。

 三番手は私、 中村です。 造園家として、 団地や広場、 個人庭園のリニューアルをした体験から、 素材レベルから発想する環境共生の問題をお話したいと思います。

 最後は清水泰博さんです。 環境デザイナーであり、 美術大学の講師をされています。 ワークショップでエコロジー型トイレを設計されたり、 島根県のコンペでまちづくりの提案をされています。 そういった中から、 水環境の再生、 湖岸における公園づくりなどのプロポーザルを見せていただく予定です。

プレゼンテーションの方針

 私は各プレゼンテーターに「環境技術やデザインの集積は、 市民の目にどのように映るか、 どのようなアメニティを提供できるかについて、 考えるところを教えていただきたい」という質問を致しました。

 あるいは「風土に密着した伝統的な建築物は独自の文化景観を生みだしていますが、 これから私たちがつくろうとする環境共生のデザインも、 そのように地域に根づいた、 地域のアイデンティティを反映した新たな都市文化をつくることができるのか。 あるいはそれは表立った技術ではなく、 隠れた技術でいいのか。 」と問い掛けました。

 さらに「それを受け取る市民側で、 生産・経済の時代から生活・環境の時代へと移っていく中で、 美意識はどう変わるだろうか」という問題があります。 言い換えれば「快適性に対する人々の考え方が変わるんじゃないか」ということも予感としてお話していただけたら、 とお願いしました。

 スライドでいくつかの事例を紹介しますが、 それらは「環境共生」から出発した事例とは限りません。 通常の都市開発、 あるいはリニューアルの事業の中で、 今までの方法では上手くいかないから、 環境共生の方向を取り入れてみようとしたものもあります。

 100%環境共生を考えたプロジェクトばかりというわけではありません。 むしろ、 今まで取り組んだ事業を環境共生という見方から再編集してお見せしようと思っています。

 そういった意味では、 山崎先生が問い掛けられた環境負荷の軽減に対する考え方は不十分かもしれませんが、 都市環境デザインの広がりを感じさせ、 私たちの生活の場への浸透が期待されるような事例だと考えています。

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