環境共生型都市デザインの世界
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交通手段の成熟

 堀口さんがあげた「広域計画としての緑地(農地)計画や交通計画と土地利用計画が「環境共生」とどう整合するのか」という二つ目の課題に関連し、 交通計画と都市構造の話があります。 環境問題にとって交通が重要なのことは自明ですが、 ここでは堀口さんの議論にそって、 交通手段の成熟で新しい都市構造の在り方、 ネットワークが見えてきたか否かについて考えてみます。

 私は環境問題に関わる交通手段の成熟には三つの側面があると思います。

 一つはTDM(Traffic Demand Management)と呼ばれる交通需要の管理が注目されていることに象徴される、 交通に対する考え方の変化です。 車の使用量をコントロールしようという考え方に変わってきているのですが、 裏返して言えば、 交通手段が成熟すれば、 道路や街をいかに自動車にとって便利なものにするかという段階を脱し、 自転車を含む歩行交通がきわめて重要視されるようになってくるということです。 歩ける都市がたとえ大都市であろうと望まれています。 またそういった都市が実現できれば、 自動車利用は少なくなり、 公共交通が利用されるようになるはずでしょう。

 関連する重要な問題として、 交通事故が挙げられます。 交通事故が多くては生存環境としても満足な状態とは言えません。 現状ではまだ、 満足と言えるほど交通事故は減っていません。

 二番目の側面は多重ネットワークです。 阪神大震災の時でもそうでしたが、 高速道路のように一重のネットワークだと、 一カ所がやられると機能がマヒしてしまいます。 また、 いつかは都市交通施設の寿命が来て、 更新が必要になります。 アメリカでも一時大問題になっていました。 その更新の時にも、 多重ネットワークが必要になってくると思います。

 ただ多重化した場合、 そのネットワークに沿って分散型の開発が進んでしまうことが問題です。 スプロールが安易に進むのは、 環境にとって大変まずいということです。

 三番目は交通手段そのもの、 特に自動車に関わる道路そのものが環境共生を目指して変わっていくということです。

 例えば、 エコロードです。 トラックによる大気汚染が相変わらず深刻ですが、 土壌や光触媒で大気を浄化する実験も進められています。 私は少なくとも都市内の高速道路は、 ふたをかけて排ガスを処理したうえで吐き出すようになっていくだろうと思います。 そういうことがあった上で、 新しいネットワーク論があると思います。

 それから、 新しいネットワーク論に関連して一つ付け加えておきます。 これまでは交通手段が便利になると、 いわゆるストロー効果が生じ地方が空洞化してきました。 新幹線ができて東京への一極集中が進んだのがその典型です。 最近では、 瀬戸大橋ができて高松に置かれていた支店が全部岡山に引き上げられてしまうという現象が起きています。 しかし、 情報通信網などと複合化した新しいネットワークでは、 ストロー効果の反対の現象が生じる方向にいくだろうと思います。 どこにでも、 いつでも行けるようになれば、 企業が集積したところに立地するのか、 そうじゃなくていろんな条件が良い地方に行くのかの選択が変わるだろうと思います。 これは変わるという予想と、 変わることを祈るというのと、 両方というところです。

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