環境共生型都市デザインの世界
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自然環境や生物の生息環境で考える都市の適正規模

 エネルギー消費とか、 生活環境に関わる問題から都市規模を考える方向とは別に、 もう一つ、 自然環境や生物の生息環境に関連して考えることも必要です。 一般には、 都市規模が大きくなればなるほど、 市街地から自然環境が減少していくという傾向が顕著です。 その結果、 生物生息環境は厳しくなると言えます。 しかし、 だからといって大都市圏の都心部、 市街地の規模に制約が生じるかというと、 私はそうは思いません。

 というのも、 これも対応次第で大きく変わってくるからです。 公園をつくったりビオトープをつくることもできますし、 最近は生態回廊や屋上緑化なども導入されています。 「緑地量をこれだけ確保するには、 これ以下の規模でないと」といった形での議論はしにくいだろうと思います。

 ただし空間的広がりという意味での都市規模には制約があるのは当然です。 フィラデルフィア・インクワイアラーという新聞の記事に「32年後にニュージャージ州は、 建て終わる(“ built out”する)」と書いてありました。 ニュージャージー州はフィラデルフィアとニューヨークに挟まれているため、 両都市からの人口圧力が非常に強いところです。 しかし空間は有限ですから、 都市規模が無限に大きくなることはあり得ないわけです。

 ただ、 その空間的な制約は、 生物の生息環境の保全ということを前提にしています。 たとえばパインランドというガラガラヘビの生息地を保護しなければならないことが書いてあります。 放っておけばスプロール現象でどうしようもなくなるので、 樹林地を保護しようとしているのです。

 また、 水質汚染や資源危機に対して強い警戒心があり、 環境問題のために保護域を設定している、 とも書いています。 その結果、 都市の発展というか膨張はおしまいだ、 これ以上は建てられない、 という話になっているようです。

 そこで、 堀口さんの問題提起にある近郊緑地の有効性の話ですが、 要するに、 都市規模も含めて「都市の構造を規定する要素」として、 環境保全地域があるというのはアメリカでも同じであって、 アメリカ、 少なくともニュージャージーではそれが有効に働くようであるということ。 だから、 問題は、 関西圏での“近郊緑地”であれば、 実態がどうであって、 現行制度の運用状況がどうなのか、 そして運用の制度は有効なのかということをきっちり把握した上で、 いい方向にもっていくようにするしかないわけで、 そういうこと無しに制度それ自体の今後の有効性を論じることはできないと考えます。

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