環境共生型都市デザインの世界
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まとめ

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図17 発表のまとめ
 駆け足で報告してきましたが、 最後にまとめに入らせていただきます。

 まず最初に申し上げたのは、 (1)成長の許容と抑制を両極とする中で、 中庸な戦略と位置づけられる産業エコロジー戦略の視点に立ち、 効用水準をできるだけ維持しながら環境負荷を削減できる道筋を検討したという点です。 これは多くの人々の賛同を得られる実現可能な方策を考えるうえで重要な前提だと考えています。

 次に(2)ストックとフローの両者を見据えた枠組みとして、 製品連鎖(物の流れを見る)と空間代謝(境界を切った中でのやりとり)という二つのアプローチを用意したことです。 その枠組みの中で技術的および社会的な改善施策を設定し、 その結果を、 ライフサイクルCO2や廃棄物量で評価しました。

 そして、 (3)その結果、 現在の成長をただ許容するあり方に対して、 リサイクルや街区の一体更新、 都市の木質化などの戦略的代替案の優位性を明らかにしえたと思います。

 このような結果から、 与えられたテーマについては、 次の2点が結論付けられると思います。

 まず第一点の「都市のストックとは何か」という点についてですが、 これは環境効率の高い施設や建築構造物、 さらに街区から都市構造を含む階層的かつ複合的な要素と、 それを支えるシステムである」と定義付けられると思います。

 そして第二点の「ストック型都市は環境共生になるか」という点については、 第一点に関する定義からも「ストック型都市は環境共生である」と言えると思います。 ただ、 現在の日本の都市がそのような意味でのストックであるかについては、 むしろ現在は環境効率の低いものが多く、 ストック足り得ないと言わざるを得ません。 したがって、 やはり第一点であげたストック型都市へと更新していくことが必要です。 そうすることよって、 フローもコントロールされ、 結果的に環境負荷の少ない都市デザインが可能になっていくと思います。

 そのための課題として、 2020年には建設廃棄物のピークがくるという環境制約をふまえ、 戦略的な代替案を構築し、 その改善効果を適正に評価した上で、 実現に向けた社会システムの提案をしていけるかどうかが、 最初の課題になっていくと思います。

司会

 ありがとうございました。 たくさんの提案を短時間で示していただきました。 長寿命に値する建築物や都市構造は日本にはなく、 これから作っていかなくてはいけない段階だろうというご指摘でした。

 時間的には2020年頃に都市の更新のピークが来て、 次に2080年であろうという予測で、 できれば2020年時点で一応の課題を乗り越えておきたい。 そのために長寿命、 環境共生に対応できる都市づくりを今から準備しようというお話です。

 しかしそうすると、 我々が今まで作ってきた都市、 今ある都市は2020年で一度作り直されてしまうのでしょうか。 あるいは全体的に都市や建築物そのものを減らしてしまうのか。 そのあたりも後半の話題になると思います。

 また、 先ほどの小林先生や午前中の山崎先生のお話でも触れられましたが、 我々が今、 残しておくべき美しいストックをどのくらい持っているかは、 よく見極めなければならないことだと思います。

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