では最後に、 今日お話しいただいた4人の方々に一言ずつメッセージをお願いしたいと思います。
真田:
仕事をする上で心懸けてほしいことが二つあります。 一つはまず「人に聞くこと」で、 職場には様々なノウハウを持った人がたくさんいますし、 異動で仕事が替わります。 今日もたくさん若い人がいますが、 どんどんいろんな事をいろんな人に聞いたらいいと思います。 それから「現場へ行く」ということで、 現場の雰囲気を自分でつかむことが重要です。 この二つを心懸けていただいたら、 仕事は十分にやっていけますし、 キャリアも積んでいけると思います。
上杉:
最近、 一生懸命やってこられた私くらいの年代の人が、 リストラにあって辞められたということをよく聞きます。 ですから自分の人生をどう生きるかについて、 何が大事かということを基に据えて職を選ぶべきかなと思っています。 なかなか人生は思ったようにはうまくいかないですし、 できれば自分の存在・行為が社会の役に立てるようなものを探してほしいと思います。 こうした経済優先の社会になってしまっているからこそ、 せめて今の時代、 まともな事をやろうというスタンスを持っていただきたいなと思っています。
稲田:
日本に帰ってきまして、 バブルがはじけ、 特に関西が地盤沈下だという話をよく聞いたのですが、 確かに今日の学生の方々の雰囲気を見るにつけ、 地盤沈下なのかなと実感しております。 私がシンガポールで10年やってこられたのも、 やはり日本という国で蓄積してきたいろんなノウハウであり、 力なんです。 ですから学生の方々には、 情報過多のなかで自分というものを見失わないでほしいですし、 大事にしていってほしいと思います。
都市環境デザインというのは、 コンピューターがやってくれるものでも、 第三者がやってくれるものでもないんです。 やはり関わっている担当者・技術者が何を信じ、 何を好きかということなんです。 自分の好きでないものを他人に押しつける事はできないわけで、 もう一度自分というものを見つめ直して、 自分に自信を持ち、 本当に何をやりたいのかというところに還っていただいたら良いのではないかと思います。
堀口:
学生の時に彰国社の「都市空間の設計技法」という本を読み、 こういう仕事をやりたいと思ったんです。 それは今から思うと大したことのないマニュアル本なんですが、 当時日本では、 そういうことを職能にしたり仕事にする人や企業があまりなかった。 あったのかも知れなかったのですが、 私にはわからなかったわけです。
私は学生の時に、 先輩の紹介で大きい設計事務所も行きましたし、 コンサルタントで数ヶ月アルバイトもしました。 上杉さんのいらした浦辺鎮太郎建築事務所でも実は2・3週間アルバイトをしています。 そういうことをやって、 大型事務所も先生方の事務所にも、 そういう仕事をやっている人はいないということがわかった上で、 自分の仕事を選択しようと思ったんです。
私が卒業設計の絵をお見せしたのは、 あの当時やりたいと思っていたことを今もやりたいと思い続けているからです。 あの当時ああいう仕事をやろうと思ったものの、 やれる職場はなくて、 どうすればいいかなと思いつつ、 職業を選択したわけです。 そういう意味では、 職は自分でつくればいいと思っています。 企業に入るのではなくて、 職を選択するわけですから、 自分のやりたいことを大事にして、 そこにいくまでのアプローチであるという割り切りも大事なのではないかと思っています。
たまたま私の場合は、 二つ目に入った所が適当な大きさの事務所で、 勝手にやらせてくれましたので、 ほとんど自分で仕事を探してきて、 自分の思うような仕事をつくっていったという経緯があります。 ここにいらっしゃる皆さんもどこかに勤められるのでしょうが、 最後は自分のやりたいことは何かということに尽きるのだろうと私は思います。 勤めたからといって、 それで全てが決まるわけではないと僕は思っていますので、 息長く執念深く自分のやりたいことを求められたらと思います。