イタリアの景観デザインと商業政策
左三角
前に 上三角目次へ

2. 訪問各都市の印象

2-1 ローマ

改行マーク当地には何度も訪れているが、 観光地を見るのは久しぶりであった。 遺跡の保全再生と観光資源化にますます磨きがかけられているようだ。 それらと連動した高級ブランド街、 みやげ物街も相変わらずというか、 さらに賑わっている。 有名なコンドッティ通りは幅員がせいぜい6〜7mで両側歩道も1mをきる幅である。 舗装はアスファルト系だし、 車両も入ってくる。 街路環境からみれば二流、 三流の空間だが、 そこに世界のTOPブランドの本店が並ぶ。 肩がぶつかり車がノロノロと動く中に、 日本人観光客のオバサン連の殺気立った集団が突進してくる。 何の心配もなさそうな日本人ギャルがイタリア男に声をかけられて喜んでいる。 これが賑わいの原点なのだ。 と言ってしまうと身もフタもないので、 一つローマの商業計画の例を紹介しておく。 宗田好史氏(京都府大)に教えてもらったのだが、 1997年10月に市商業局が発表した都心部の商業に関するガイダンスが面白い。 スペイン広場やコンドッティ通りに集中しすぎたブティック街を大人向けの高級店街と若者向けのカジュアル街に分けるというものだ。 スペイン階段の東側のヴェネト通りを若者向けの街にしようとの意図でハードロックカフェやプラネットハリウッドの進出を認めたものだが、 これでスペイン広場周辺に過度に集中した客を分散し、 より純化された街が創られるというふれ込みだった。 今回、 実際に歩いた感じでいうと、 確かにそうした店がポツポツ見られたが、 風俗系の店もあったりして、 決して若者で賑わう通りとはなっていなかった。 まだ数年しか経てないので何とも言えないが、 単なる許可による誘導だけでなくインセンティブやプロモーションがないと難しいのではないかと思われた。

改行マーク私が最も楽しかった地区は、 テベレ川を渡ったトラステヴェレという地区であった。 トラステヴェレ教会やジャニコロの丘に向かうゲート地区であるが、 それよりも、 その裏の川沿いに広がる中世以来の職人町が良い。 ローマではほとんど少なくなった職住の息づく普段着の街に、 おしゃれな店やこだわりの店がぽつぽつとある。 路地と広場の迷路のような散歩空間は大都市ローマと思えない豊かな界隈となっている。 ここでは日本人をほとんど見かけなかったが、 一人で、 しっかりとした顔立ちの20代の女性が居た。 コンドッティでみた連中とは全く別人種だった。

左三角前に 上三角目次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ