UNBUILD UENODESIGN
ここまでは、 具体的なプロジェクトを通じて、 都市環境の再生に向けて街を構成するユニットをどう変えていくかを見ていただきました。 公的な骨格を整備するだけでは都市環境再生は難しい。 公的な土地利用と民地とがそれぞれ役割分担をして、都市環境再生をめ ざす必要があります。 そのために全ての土地利用で緑化が進むようなユニットのあり方、 都市を構成する全ての要素そのものを「緑」とすることを今考えております。 これからお見せするのは、 そうした私のアイデアです。
写真49左 HOUSE OF DOLL (1992) |
写真49右 GREEN WALL HOUSE (1999) |
写真49右は昨年から今年にかけて考えたアイデアです。 特殊な形態の家ではなくて、 ハウスメーカーが造るような家に何かくっつけると住宅が緑に覆われ、 それが街全体に波及していくようなシステムはないものかと考えて描いたものです。 例えば、 家の外側にメッシュを取り付けてそこに蔓をはわせてみるとか、 温室をくっつけるとか、 外部との接点に緑化されたバルコニーを考えてみたり、 壁に植木鉢を取り付けていくことで壁に緑陰を造るとかといったものです。
全体としては部屋のエネルギー負荷を減らし、 受熱量を下げることを考えています。 建物からの熱放射を減らすことで、 街全体のエネルギー負荷を減らすこともこれから考えていかねばならないでしょう。 ですから、 既存の家につけるこうした緑化装置の開発をハウスメーカー等に働きかけ、 次世代の住宅のあり方を変えていくことを考えていく必要があると思います。
この図ではそうした家々が並んで街筋を構成していくイメージを表わしています。
写真50左 UNDER TREE HOUSE (1999) |
写真50右 UNDER TREE HOUSEの模型 |
写真50右はUNDER TREE HOUSEの模型です。 木の下に屋根があると、 雨樋が落ち葉で詰まりメンテナンス上の問題が出てきます。 そこで、 屋根は継ぎ目なしのテフロン加工のテントの二重屋根を想定しました。 エアスペースをとることで、 断熱にもなるだろうと考えたのです。 軒の出を大きくとったりしてなんとか雨樋なしでもやっていけるだろうと思います。
木の下に住むわずらわしさをクリアしないと、 こういう発想の住宅は一般論として議論することはできません。 煩わしさをいとわない人も現実にはいますが、 技術的にもきちんとクリアしておく必要はあると思います。
写真51左 UNDER TREE/GREEN WALL模型 |
写真51右 DOBLE KIN/GREEN MONSER (2000) |
写真51右は建物全体を緑化された篭でおおった「DOUBLE SKIN HOUSE」です。 この絵はコンテナハウスを緑で覆ったという想定です。 景観的にも緑豊かな街並みになるだろうし、 エネルギー負荷を軽減することにもつながります。 また、 街中の生物や植生も豊かになるだろうと考えました。 こうして街のユニットを変えていくことを考えています。
写真52左 DOUBLE SKIN HOUSE (2000) |
写真52右 DOUBLE SKIN HOUSEの模型 |
写真52右はその一ユニットの模型です。 手前のガラス面は温室です。 温室の上にはソーラーシステムを載せています。 テーマは自然エネルギーの色々な使い方、 戸外との接点の可能性等です。 四角い2階建ての住宅をすっぽり覆うかなり大きな緑化篭となっています
。
写真53左 DOUBLE SKIN HOUSEの模型 |
写真53右 クラスターのイメージ図(2000) |
写真53右はこれはいくつかの住宅ユニットを使ったクラスターのイメージ図です。 多摩19住区の案のときのように、 田んぼが真ん中にあってそれを共有のスペースとしています。 この田んぼはシンボルです。 それを囲んで、 緑の壁を持ったユニットが並んでいます。 そのユニットはダブルスキン型であったりアンダーツリー型であったり様々です。 そんな住宅が緑の骨格の中に取り込まれながら、 街を作っていけたら面白いと思います。
共有スペースには東屋が飛び出すなど、 従来とは違う外部との接点のあり方を示していきたいと考えています。
現代の住宅は、宅地の狭小化、市街地環境の悪化、空調の普及等によって、ますます外部に対して閉鎖的になりつつあります。 そのことがさらに市街地環境の悪化につながるという悪循環におちいっています。 街を構成するすべての要素を緑化することによって、 かつて日本家屋がもっていた豊かな外部との接点を回復できるのではないかと考えています。
写真54左 MILLEMNIUMシリーズ “HILL HOUSE" (2000) |
写真54右 MILLEMNIUM“HILL HOUSE” 模型 |
斜面型の住戸は全てメゾネットタイプで、 大きなエアボリュームを持たせています。 これで斜面住宅にありがちな窮屈な感じを減らしています。 また、 大きなテラスを取り、 それを緑化していくことで建物全体を人工の丘として、 丘陵と一体になった緑のシステムを作り出しています。
突きだして見えるのは、 それぞれのユニットから出ている東屋です。 階段室から出ている東屋は共用スペースとして考えています。 こういう風に外部との接点スペースを拡大して、 集合住宅でも豊かな空間が持てるように考えました。
写真55は別のアングルから見た光景です。 屋上も緑化していますが、 黒く見えるのはソーラーユニットです。
写真56はもう少し一般的な市街地に建つ集合住宅のイメージです。 先ほどのダブルスキン型の考え方で、 ペントハウス部分に覆いを被せて受熱量を下げる工夫をしています。 またテラス全体を緑化することで、 建物を緑化することを考えました。 樹木がなくても建物自体で街を緑化できるシステムが必要だと思います。
写真55左 MILLEMNIUM“HILL HOUSE” 模型
写真55右 MILLEMNIUM“HILL HOUSE” 模型
写真56左 MILLEMNIUMシリーズ “HIGH" (2000)
写真56右 MILLEMNIUM“HIGH” 模型
写真57左 MILLEMNIUMシリーズ “LOW” (2000) |
写真57右 MILLEMNIUM“LOW” 模型 |
駐車場の上も緑化して、 ここから屋根のついた通路を渡って中央のデッキに行けるようになっています。 この通路デッキは屋根付きで2箇所の階段と1箇所のエレベータでつながっています。
全体としては、 緑の中に住まうということを提案しています。 自分の家の緑だけでなく、 隣家の壁も緑の資産として豊かな戸外生活を楽しめるようにしていきたいというコンセプトです。
写真58左 VIO DECK (1996) |
写真58右 VIO DECK (1996)模型 |
橋自体はチューブ状の構造物で、 そこに視線より少し高めに設定した植込みを設けました。 屋根にもメッシュをかけて蔓物をはわせて日陰を造っています。 通路の真ん中に、 半分は固定したソーラーシステムで、 半分は可動式のキャンバスで屋根をかけることを考えています。 床版は木製のデッキです。
フィックスされた屋根部分と緑化された日陰棚部分、 それにオープンな部分を組み合わせた構造にして緑に囲まれた橋のあり方を考えました。 プラントボックスが層状になっているのは風を通すためで、 植物にとっても人間にとっても風を感じられる環境を考えました。
写真59左 多摩/南大沢駅前のセンターのオフィスビル案(1983) |
私の案は駅前を三つのエリアに分け、 それぞれをステーションユニット、コマー シャルユニット、オフィスユニットという三つのコンパクトな建物に収めるという案でした。 中でもステーションユニットはバス停のために駅前に膨大な空地が出来 てしまうことを避けるため、 鉄道でプラットホームを乗り換えるような形のリニアなバス停を造ろうとしたものです。 ステーションユニットと他の二つのユニットは屋根付きのデッキでつないでいます。 コマーシャルユニットとこのオフィスユニットは、アトリウムを持ったコの字型の建物です。>
斜めに見えているのはアトリュウムの屋根になっている部分で、 ガラス屋根の上ににメッシュを張って蔓植物をはわせた部分です。 夏は日陰を作り、 冬は落葉して日差しを通します。 また、 バルコニーに見えるのはルーバーで、 それがプラントボックスになっています。 アトリウムの南側はルーバーになっていて、 内側はプラントボックスを管理するためのキャットウォークになっています。
建物どうしをつなぐ通路も緑化されていて、 ユニット全体が緑に覆われるようにしました。 屋根がノコギリ型になっていますが、 黒く見えるのはソーラーユニットで、 見えない北向きの部分はアトリウムのガラス屋根になっています。 緑化されていない壁面がありますが、 この建物のすぐ横に別のビルが建つため緑化は不要という判断からです。
写真59右 MILLEMNIUMシリーズ“OFFICE”(2000) |
これも一種のデッキタウンになっています。 オープンス ペースの中には、 幹線道路、 サ
ービス道路が入っており、 それら全てが森の中という構想です。 こういう姿も、 これからの都市の可能性として考えていけるのではないでしょうか。
写真60左 ARKADIA DOWN TOWN (1996) |
写真60右 MILLEMNIUMシリーズ“DOWN TOWN”(2000) |
写真61左 DOWN TOWN“シナリオ2”(2000) |
ここでは、 まず既存の従来型の建物に緑化システムを取り付けます。 また仮設的な施設で一定期間商売をするというやり方も出現するでしょうから、 環境もストックではなくフローとして捉える必要があると思います。 フロー化した時の環境のあり方として、 ここでは木で覆われた中に床貸しが出来るようなスペースを設けたり、 仮設的な立体駐車場の屋上を全部ソーラーシステムにするなどの工夫をしています。 これからはこうした投資密度の少ないシステムで街が造られていくこともあり得ると考えています。
写真61右 駅前“シナリオ2”(2000) |