行ってみたい大阪・船場
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II 現在の船場の姿

 

 

篠原

 船場エリアの磨くべき「原石」、 つまり「魅力のもと」を8つの視点で整理しました。 「こんなイメージである」ということをさらっと感じていただければと思います。


(1) 近代建築

 船場には近代建築がたくさんあります。 大阪に残っている近代建築のうちかなりの数が船場エリアにあります。

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図4 近代建築(北浜)
1.北浜
 建て替えの話がでている証券取引所、 西田三郎元商店、 金融再編の影響で本社が東京に移る住友銀行の住友ビル、 堺筋沿いにあり1階をレストランとして利用している新井ビルなど、 魅力的な近代建築があります。

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図5 近代建築(今橋〜高麗橋)
2.今橋〜高麗橋
 三和今橋ビルと八木通商ビルが三休橋筋という南北の通りに面して向かい合って建っています。 また御堂筋の西側に大阪倶楽部、 堺筋沿いには高麗橋野村ビルがあります。

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図6 近代建築(伏見町)
3.伏見町
 三休橋を少し南に下がると、 浪花教会と大中証券が並んでいます。

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図7 近代建築(伏見町〜道修町〜平野町)
4.伏見町〜道修町〜平野町
 伏見ビルはかなり老朽化していますが、 ブティック、ギャラリー、 アーティストの事務所などが入居しています。 芝川ビルは1階にブティックが入っています。 平野町には小川香料ビルもあります。

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図8 近代建築(淡路町〜瓦町〜備後町)
5.淡路町〜瓦町〜備後町
 堺筋沿いに、 時計台のある生駒ビルがあります。 船場ビルは元々住宅でしたが、 改装されて現在は主にオフィスとしてうまく活用されています。 個人の商店である清水猛商店、 三休橋筋沿いには船場を代表する近代建築といえる綿業会館があります。

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図9 近代建築(本町通り以南)
6.本町通り以南
 本町通を南に越えると近代建築が少なくなりますが、 明治屋ビル、 外壁保存されている御堂筋沿いの又一ビルがあり、 さらに南に行くと旧京都協栄銀行があります。 ここは経営破綻して、 このビル自体どうなるかに関心がもたれています。 大阪農林会館も南船場のあたりにあります。

 このようなビルをいかに活用するかが船場のまちづくりにおいて重要であると思います。


(2) 一般建築

 近代建築以外にも特徴的な建築がありますので、 次にそれらを紹介します。
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図10 一般建築
 道修町と堺筋の交差点に旧小西儀助商店があります。 明治36年にできた建物で、 小西ボンドの本社として数年前まで使われていました。 今も一部は事務所として使われています。 中に入ると堺筋とは思えないような静かな庭があり、 いろいろな用途に活用できそうです。

 三井アーバンホテルは船場の中にある数少ないホテルです。 前面にオープンスペース、 緑、 カフェがあり、 いい空間が創り出されています。 御堂筋では百尺制限が撤廃され、 前面はセットバックするという条件の下に高さ50mまでのビルが建てられるようになりました。 それに基づき新しくMMプラザができています。

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図11 一般建築
 船場を代表する建物として道路との一体構造物である船場センタービルがあります。 立体道路制度ができる前のもので、 よくその時代にこの建物ができたと思える大阪らしいビルです。


(3) 歴史資産

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図12 歴史遺産
 緒方洪庵の適塾は船場の歴史資産の代表と言えます。 また船場にはその地の歴史を伝える26の碑が残っています。 市立愛殊幼稚園の前には江戸時代に銅座と呼ばれ銅の取引が行われていた地であることを示す碑があります。

 船場商人の学校であった懐徳堂の碑が日生ビルのところにあります。 また松尾芭蕉が南御堂のところでなくなられたということで、 松尾芭蕉の句碑も残っています。


(4) 中低層のまちなみ

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図13 中低層のまちなみ
 ここから少し視点を変えます。

 大きな通りの一筋内側に中低層のまちなみが残っています。 特に南北の「筋」沿いに多く残っているようです。 このまま建物を残して活用することもできるし、 建て替えるにしてもこのスケールを維持することには意味があると思います。


(5) まちかど

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図14 まちかど
 今度は交差点に注目します。

 公開空地にモニュメントを設置したスペースや、 最近増えているビルの1階部分にカフェが入っているところなど、 いい空間が増えてきています。

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図15 まちかど
 次は再生の可能性のあるまちかどですが、 交差点付近に中小規模の古いビルが残っているところをよく見かけます。 こういったものも使い方次第でいいまちの要素になるのではないかと感じました。

 1街区あるいは1/2街区の総合設計で多くの公開空地ができています。 歩道の少ない船場の中で歩行空間としては意味があると思いますが、 例えばキオスクを設けるとか、 もっとまちのにぎわいのための空間として活用してもよいのではないかと思います。


(6) みち

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図16 みち(三休橋筋と浮世小路)
 道路に注目します。

 三休橋筋は船場の真ん中を走る南北の通りです。 ここは船場で数少ない歩道がある道路であり、 また街路樹も植えられています。 さらにこの道路沿いには近代建築が沢山残っていて、 北へ行くと中之島の公会堂を望むことができる非常にいい空間です。 ここは船場の魅力付けの大きな要素になるのではないかと感じました。

 浮世小路も何かできそうな通りです。 幅員が狭く船場後退線というセットバックもしていないのですが、 狭いが故に交通量が少なくなっています。 歩行者専用道にして外壁を使った歩行者のための道づくりができないかと思いました。

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図17 みち(心斎橋筋など)
 今までの写真にはほとんど人が写っていないことに気が付いた方もいらっしゃると思います。 写真を撮影したのが日曜日であり、 日曜日の船場は本当に人が少ないまちになっています。 ところが、 心斎橋筋の南端、 ソニービル前は日曜日になると写真のようにたくさんの人がいますし、 北端の南本町まで多くの人の流れがあります。 日曜日でも人がいることを周辺のまちに活用することは、 意味があると思います。

 その隣の丼池ストリートは、 日曜日は閑散としていますが、 魅力付けのためにゲートを設けるとかカラー舗装をするといった取り組みもされています。

 今南船場で一番活気があり、 まちの中心になっているのは横堀筋です。 ここは元々歩道があったところです。 歩行者空間整備の重要性を示していると言えるのではないでしょうか。


(7) ショップ

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図18 ショップ(GARBとダンヒル)
 南船場ですが、 昔は他の船場エリアと変わらないビジネスゾーンでしたが、 ここ数年でいろいろなショップが進出し、 休日もにぎわうまちに変貌しました。


(8) 再生のタネ地

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図19 再生のタネ地(大規模ビルの外壁とパーキング)
 最後に、 再生のタネ地として何かできるのではないかと感じたところを紹介します。

 御堂筋沿いの大規模ビルの裏側に回ると、 壁面ばっかりのおもしろくない空間があります。 この壁面は何かに活用できそうです。

 また船場では空きビル・空き家が最近目立ってきています。 これらはまさに再生のタネ地と言えるのではないでしょうか。 写真は廃業したガソリンスタンド跡地ですが、 最近オープンカフェとして再生されました。

 また駐車場が非常に沢山できています。 下の写真は昔から駐車場だったところですが、 最近よく見かけるTimesなどの暫定パーキングが、 船場の中にはたくさんあります。 こういったところも積極的に取り上げて次のアクションに結びつけたいと思います。

 以上が船場の現状です。

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